自由法曹団通信:1514号      

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馬奈木 昭雄 「よみがえれ!有明」に対する国への間接強制金支払命令確定のご報告
萩尾 健太 郵政「六五歳定年」無効裁判 結審・判決へ
藤本 齊 第一次世界大戦と「集団的自衛権」
馬奈木 厳太郎 証人尋問始まる! 〜「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟第一〇期日の報告
石口 俊一 広島での街頭リレートーク ・・安倍政権にレッドカード
長谷川 一裕 「オール弁護士会」めざす愛知の取り組みについて 一・一七集団的自衛権行使反対県民大集会・パレードの報告
増田 悠作 「司法修習生に対する給費制の復活と司法修習生に対する給費制廃止違憲訴訟の公正な判決を求める署名」にご協力下さい!



「よみがえれ!有明」に対する国への間接強制金支払命令確定のご報告

福岡支部  馬 奈 木 昭 雄

 一月二二日、最高裁は国が諫早干拓地排水門を開放しないことに対し、福岡高裁が決定した間接強制金支払命令を不服として行った抗告を却下する決定を下しました。他方で最高裁は、排水門開門に反対する長崎地裁の開門禁止仮処分決定に基づく間接強制命令の決定についても、国が行った抗告を却下し、開門した場合にも間接強制金支払を命じる決定が確定しました。事情を知らない方には法律専門職であっても、すぐには理解しにくい状況ですが、まず現在開門しないことに対し、開門確定判決を持つ私たち漁民原告に対し、現在間接強制金が国から一日四五万円支払われています。受領額は約一億円になりました。それに対し、開門すれば被害が出ると心配する農民住民が、開門禁止を求める仮処分を長崎地裁に申請し、開門したくない国はその請求にあうんの呼吸を合わせ、漁業被害など開門を必要とする事情を、まったく主張立証しない方針をとったため、開門の必要性はまったく存しないことになりました。国はたんに自らが必要な主張立証をしないばかりでなく、その事態を回避するため、私たち漁民原告が国の補助参加人として行った必要な主張立証についても、国の立場に抵触するという理由で訴訟から排除を求めたため、判断対象とはされませんでした。もちろん何の対策工事もせずに開門すれば、一定の被害が出ることは自明です。長崎地裁はそこで被害が生じることを理由に開門を禁止したのです。一言で言えば国は自ら転ぶことによって(私たちは無気力相撲と言っています)開門禁止判決を得たのです。
 従って現在国は、開門しない限り私たちに間接強制金を支払続けなければならないし、逆に開門すれば開門反対の農民たちに間接強制金を支払わなければならないことに形式上なっています。もちろんこれは国(農水官僚)が、開門したくないというただそれだけのために、自ら積極的に作り出した仮装の状況なのです。
 最高裁は、民事訴訟において異なる当事間の訴訟で、結論が異なることはあり得るわけであり、それぞれの判決決定に基づき、その履行を求める間接強制が存することは当然だと判断しました。決定は国は自らの意思でその履行が可能だと断言しています。しかるに農水大臣は、この最高裁決定を受けてもなお、「開門と開門禁止の相反する義務に挟まれどちらも実行できない」と主張し、「最高裁が何らかの統一的見解を示すまで、現在進行している各種の訴訟を続ける」と宣言しています。しかし、今回の最高裁決定が明言したように、相異なる当事者の訴訟がいかに双方とも最高裁に継続したからといって、「統一的見解」なるものが示されることは法制度上あり得ないことは自明です。それを「最高裁は統一的見解を示してくれる」(それも国の立場の開門しないという見解を)、とごまかしの主張を言い張り、国民の税金を間接強制金として何の反省もなく支払続けて恥じない態度に、私は心の底から怒っています。この農水官僚たちは、国民の利益などまったく考えていません。ただ官僚の立場(ものごとを決定するのは官僚であり、被害者の要求などによってその決定を変更することは絶対にしない。官僚はこれを「国の根幹」と称しています。)ということを護り抜こうとしているのだと思えます。このことは諫早に限った話ではなく、水俣病の被害賠償や、福島原発の被害回復の問題についてもそうだと思います。国は相反する二つの立場のどちらにも立たないのではありません。明確に「絶対に開門しない」という立場にしがみついているにすぎません。
 私たち原告、弁護団、共にたたかう人たちの決意は明確です。私たちは憲法を安倍首相、官僚に厳守させるたたかいを行っているのです。ものごとを決めるのは主権者たる国民の意思である。決して官僚の意思ではない。もちろん地方自治の本旨という視点も併せて含まれています。
 私たちは官僚を国民の意思に従わせ、憲法を守らせるためには、「力を持った正義」が必要だと痛感しています。その「力」は国民世論の結集です。
 私たちは、これまで以上に創意工夫を凝らし、共にたたかう人々の知恵と力を結集して、国民世論の支持、共感を勝ち得ていくたたかいを強化展開していく決意です。
 そのために、まず裁判としては、確定判決強制執行に対し国が請求異義訴訟を提訴しましたが、昨年一二月一二日佐賀地裁は国の異義理由を一蹴し、漁民原告勝訴の判決を下しました。この訴訟を完全に勝ち抜くことにより、国は私たちの確定判決を争う法的手段がまったくないことになります。さらに法廷外のたたかいとして、国会における内閣、財務省、環境省などに対し、解決を迫ると共に、その要求実現を求める国民的署名運動を開始しました。同時に、開門に反対する地元住民に対しても、農業か漁業かの二者択一ではなく、両方が共に豊かに前進できる方策の実現を呼びかける、戸別訪問対話活動にも取組みを開始しています。その中で、両者が合意できる対策作りなども進めて行きます。


郵政「六五歳定年」無効裁判 結審・判決へ

東京支部  萩 尾 健 太

一 年齢差別規制へ逆行
 欧米諸国では、差別禁止類型の一つとして、雇用における「年齢」差別の禁止が現実のものとなっている。日本でも、雇用対策法一〇条の制定など、徐々に年齢差別への規制が始まっており、働く意欲を持つ者について、高齢故に労働を規制することは問題視されるようになっている。
 ところが、それに逆行する六五歳定年制が、退職金も無く年金も乏しい弱い立場である郵政の期間雇用社員に適用され、二〇一一年九月、約一万四〇〇〇人が雇い止めとされ、生活の糧を奪われた。
二 原告の雇い止めに至る経緯
 原告らは、採用面接官より、身体が持つ限りずっと働けると言われて郵政公社の非常勤職員となり勤務してきた。
 郵政民営化移行時の二〇〇七年一〇月一日に定められた郵便事業会社の期間雇用社員就業規則一〇条二項では、期間雇用社員(非常勤職員が移行)について、「会社の都合による特別な場合のほかは、満六五歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後、雇用契約を更新しない」と定めていた。これが六五歳定年制である。ただし、同就業規則附則二条には「第一〇条二項の規定は、平成二二年一〇月一日から適用する」と記載されていた。
 しかし、この条項は期間雇用社員には周知されておらず、期間雇用社員であった原告らは、その定めの内容を知らなかった。そのため、二〇一〇年八月末頃、郵便事業会社は、「期間雇用社員の皆さんへ」において、「十分な事前周知を行う趣旨から、六ヶ月間延期し、平成二三年四月一日から適用することとする」とした。
 その結果、二〇一一年一〇月一日までに六五歳に達した者は、同年一〇月一日以降の更新はされず、期間雇用社員である原告らは、同年九月三〇日での雇い止めを通知された。
 その後も半年ごとに、六五歳に達した期間雇用社員の雇い止めがなされた(以下「本件雇い止め」という)。
 しかし、本件雇い止めは、以下の理由で違法・無効である。
(1) 定年制は、年功序列賃金と退職金の支給、厚生年金の給付があって初めて、生存権を害さず肯定される。給与が少なく退職金もなく年金も乏しい非正規労働者に定年を定める本件就業規則及びそれと類似した内容の労働協約は、原告らの勤労権を侵害するものであり、公序良俗違反により無効である。
(2) 本件就業規則は、郵政公社時代の「身体が持つ限り働ける」との従来の労働条件を不利益に変更するものであり、周知と合理性が認められないため原告らに効力は及ばない
(3) 人事に関する協約九一条は、原告らの固有の権利を処分するものだが、労働者の地位向上という労働組合の目的に反し、組合員投票などの特別の授権がなされていないことから、原告らに対して効力を有しない
(4) 仮に、本件就業規則と労働協約自体に効力があったとしても、原告らには雇用継続への合理的期待があり、その雇い止めには解雇権濫用法理が類推適用される。原告らは業務遂行能力が高く、原告らが雇い止めされると人手不足で業務が停滞したのであるから、解雇の合理性、社会的相当性が認められない。
三 原告らの請求
 原告らは、郵便事業会社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、および本訴訟確定までの未払賃金の支払いを求めている。
 また、前述の通り、原告らは、郵便事業会社による雇い止めにより、雇用継続への期待を打ち砕かれた。原告らは、郵便事業を支えてきた熟練労働者としての誇りを傷つけられたことを口々に証言した。こうした屈辱感、失望感を味わうという重大な精神的苦痛を金銭に評価すると、少なくとも各自金一〇〇万円を下らない。
 したがって、原告らは、郵便事業会社に対し、弁護士費用分と併せて金各一一〇万円の支払いを請求している。
四 訴訟の進行とお願い
 二〇一一年一二月の提訴から三年目の二〇一四年九月より、丸一日五期日に亘り、原告九人全員、対応する支店の管理者八人、本社管理者一名と原告らの所属する郵政ユニオン交渉部長一名、佐藤昭夫早稲田大学名誉教授の計二〇名の尋問を、各月二回のペースで行ってきた。本人尋問で明らかになったことの一つは、若い人であればすぐ音を上げるようなきつい仕事を、人生経験を積んだ原告らはこなしてきており、郵政をクビになった後は、生活のため、より労働条件の悪い仕事に従事するか、無職でギリギリの生活をせざるを得なくなっている、ということである。
 多数回の尋問は極めてハードであったが、これを乗り越え、現在、二月四日の弁論終結へ向け、最終準備書面を作成中である。
 原告団・支える会・弁護団は、高齢者・非正規労働者の使い捨て、二重の差別を許さず、生存権を確保するため、勝利判決を勝ち取る決意である。
 原告団は、上記の通り貧困であり、訴訟遂行費用にも困窮している。
 自由法曹団員の皆さんの、物心両面での御支援をお願いしたい。
 下記口座まで、カンパをよろしくお願いします。
☆ゆうちょ銀行振替 口座
口座記号番号
〇〇一九〇-七-七六六三五七
加入者名 65歳 解雇裁判支える会


第一次世界大戦と「集団的自衛権」

東京支部  藤 本   齊

 久しぶりに出席した一月常幹で配付された資料中の大阪支部ニュース一一月号で、上山勤団員が、支部長就任挨拶の中で集団的自衛権問題についての歴史の教訓として第一次世界大戦を詳しく述べられているのを読み、同感しました。昨年夏が開始一〇〇周年だと言うこともあって確かに昨年から、欧州ほどには注目されなかった日本においてもいつになく第一次大戦ものが目立つようになり今年のお正月にも幾つか取り上げられていました。いずれも、集団的自衛権問題(当時はこの言葉も概念もなかった時代ですが、)と無関係ではないという意識が明確に、又はどこかにあったからに違いありません。第一次大戦の日本の行動をこの観点から見ることは、とても示唆的です。昨年六月二五日に私どもの東京合同法律事務所主催で行った市民集会配布用に、所員がそれぞれ寄せた一言集でそのことを取り上げましたので転載しておきます。ちょっと前のですが、ご参考になれば。

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「第一次大戦と集団的自衛権」【一四・六・二五市民集会一言集から】
 集団的自衛権は、先の大戦末期に国連憲章で初めて規定された言葉で、国連目線ですから、各国自身の直接の自己防衛行動のことではありませんで、要するに、直接自国のためではなく他国のために行使されるものです。安倍氏らは、重々分かっていながらわざとここを混同させてごまかそうとしているのです。例の安倍流「紙芝居」などその典型です。
 この言葉がまだなかった戦前の日本軍国主義の行動の中にも、その具体例の様なものは、ある種「模範的」なまでに見出されます。第一次世界大戦がそうです。先の大戦とは違って主戦場はあくまでヨーロッパであったあの時、しかし、日本は、この英仏露と独墺トルコ等との戦争の勃発に際し、「日英同盟」を名分としてイギリスと連合国の側にたって参戦し、当時ドイツが租界化していた中国山東半島「青島」(青島ビールが今も有名なのはドイツ租界だったからでしょう。)やドイツ領ミクロネシア=「南洋諸島」のドイツ軍を撃退占領しました(恐らく当該地等には既に日本人も沢山いたことでしょう。)。これ、今で言うと明らかに集団的自衛権の行使だもんねということになるでしょうね。「密接な関係」どころか「同盟国援助」のための敵国攻撃ですものね。集団的自衛権行使の典型ケースです。
 安倍氏らは言うでしょう、「大丈夫です、ごくごく『限定的』ですから。」と。実はこの点でも戦前日本は実に「模範的」です。ドイツ潜水艦によって、日本の民間の貨客船が地中海や大西洋等で三十数隻も撃沈されているというのに、しかも、イギリス等からは地中海作戦への日本海軍の艦隊派遣が繰り返し次々に要請されているというのに二年半以上も頑としてこの海軍遠征は拒否し続け、また、日本陸軍についても欧州大陸への派遣が何度も何度も要請されたのに「日本兵は国民皆兵の徴兵制で招集されているので、直接国益に関係しない外地、特に遠くヨーロッパにまでは遠征させられないのです。」等と言って断り続け、こっちは結局最後まで援軍は出しませんでした。その一方で、チャッカリと近場の日本近海ではセッセと働いて、中国や南洋諸島の占領地の既成事実化に邁進していたのです。まあ随分「抑制的」で「限定的」で「効率的」ですこと!「限定的」「集団的自衛権」行使のお手本みたい!もう一回そういう類いのいい目を見たいと思っている人もいるのでしょうね、きっと。そして、このときの「対中二一箇条の要求」や赤道以北太平洋の旧ドイツ領南洋諸島の委任統治領化から国際連盟脱退に伴う「併合」等を通じ、紆余曲折しつつこれが日中戦争と太平洋戦争という破滅の道へと繋がっていくことになってしまったのです。結局どこで「限定的」だったんでしょうかねえ、一体?
 彼らにとって今大事なことは、とにかく小さいのでいいから一回戦争に参加し、敵のでも味方のでも両方のでもいいから実際に「血を流す」ことです。そうなってしまえば、その事態と現行憲法との間の齟齬・矛盾・不整合・破綻は、それはもう耐えがたい程のものとして現象せざるをえません。解釈改憲状態なんかですむわけがありません。明文改憲への道はもはや一瀉千里でしょうし、「限定的」なんて言う必要もなくなりましょう。我々にとっても今が大事なのです。
 さて、自民党はついに集団安全保障での武力行使についてまで解釈変更でと言い出した様です。これは、自衛・他衛いずれにせよ大義としての「守り」ですらありません。「制裁」「膺懲(ようちょう)」「叩き潰し」としての武力攻撃のことです。国連のルール違反者に対する制裁の仕方は経済的その他色々ありえますが、その最も強力な一つとしての国連軍としての武力攻撃のことです。「限定的」も何も始めから集団的自衛権の域をも越えたものですから、現行憲法上許されるかもなんて考えた人はかつていません。安倍氏らは、少なくとも、ま、集団安全保障までは無理でも、じゃあまあ集団的自衛権の範囲ででも手打ちとするか等というのも狙いの一つにしてるのでしょう。一方で、「限定的・限定的」と言いつつ、一方で、無限定的に大きく出ておいて、「歯止め」を手前から次々乗り越えて行こうという、これを許してはふたたびの破局への道です。「歯止め」とは、そういう策略を、予め封じ込め得て初めて、また、予め自制させ得て初めて「歯止め」と呼ぶに値するのです。権力者に好き放題させてはなりません。憲法とは元来そういう「歯止め」です。みんなでこれを生かしましょう。


証人尋問始まる! 〜「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟第一〇期日の報告

東京支部  馬奈木 厳太郎

一 たくさんの応援団が集まって
 一月二〇日、「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の第一〇回期日が、福島地方裁判所において開かれました。この日も、国と東電から書面が提出されました。
 国の書面は、予見可能性について、現実に生じた事実経過を前提として結果発生の原因となった事象について判断されるべきであるとして、今回の地震・津波と同規模の地震・津波の発生を予見できなかったことから過失はないと主張し、“吉田調書”で述べられている平成三年の福島第一原発での事故(配管から水が漏れ非常用ディーゼル発電機が浸水した)が、被水対策を促す教訓となったのではないかという点についても、全く無関係の事故だと主張しています(準備書面一〇)。
 東電の書面は、平成三年の事故により非常用ディーゼル発電機などに対する被水対策の必要性が認識させられたとする原告の主張に対して、必要な対策はとってきており怠りはないと述べ、平成三年の事故からは内部溢水対策の必要性という十分な教訓を導いていると主張するもの(準備書面一三)、原告らに対して既に支払済みの賠償があるとして、その費目と一覧をまとめたものです(準備書面一四)。
 期日当日は、前夜に氷点下三度まで冷え込みましたが、冬晴れの一日となって、あぶくま法律事務所前には三〇〇名の原告団が集まりました。また、映画『あいときぼうのまち』の脚本を担当した井上淳一さん、ラジオ福島アナウンサーの大和田新さん、元NHKキャスターの堀潤さんが前回に引き続き駆けつけたほか、福島原発告訴団から代表の武藤類子さんほか二名、東京演劇アンサンブルの劇団員が東京から三〇名、「原発なくそう!九州玄海訴訟」弁護団から東島浩幸団員、原発事故被害救済千葉県弁護団から藤岡拓郎団員にも参加していただきました。さらには、山本太郎参議院議員も、沖縄の辺野古から戻ってきてばかりですが、急遽参加されました。多彩なゲストによるリレースピーチが行われ、寒さを吹き飛ばす裁判所前集会となりました。
二 三名の専門家の証人尋問
 この日の期日では、三名の専門家証人に対する主尋問が実施されました。
 中京大学教授で社会学が専門の成元哲証人は、高線量地域以外でも様々な被害が出ていることを、アンケート調査など各種の調査結果から明らかにしました。日常生活の変化、子どもの生活や行動の変化、精神健康状況の変化などの分析を通じて、放射線量だけで直ちに被害が決まるわけではなく、放射線量と心理社会的要因・社会経済的要因が相互に関連し複雑に絡み合って、具体的な被害が規定されることを丁寧に証言されました。
 元中央大学教授で核燃料化学が専門の舘野淳証人は、安全の要としての冷却システムの脆弱性や、わが国における安全を軽視した原子力発電推進の歴史をふまえ、今回の事故の発生とその原因、事故の回避可能性などについて詳細に述べられました。また、スリーマイル島原発事故やチェルノブイリ原発事故を契機とした国際的な原子力発電所の安全基準の進展の歴史と到達をふまえ、わが国でのシビアアクシデント対策の著しい怠りについても、原子力技術・規制の専門家の立場から明らかにされました。
 金沢星陵大学女子短大教授で安全システムが専門の沢野伸浩証人は、航空機モニタリングの測定結果をもとに、地図情報システムを活用して、市町村ごとや原告の居住地ごとの放射性物質の汚染状況を明らかにしました。原告らの居住地が、今回の事故によって広域的かつ継続的に広く放射性物質によって汚染され、それが原告らの平穏生活権の侵害の基盤をなしていることなどについて、パワーポイントも用いながらの証言となりました。
 それぞれの証言は大変わかりやすく、原告団が予定している今後の専門家証人の方々の証言内容にもつながる非常に有益な内容となりました。裁判所の関心も高く、とくに舘野淳証人に対しては、補充尋問に向けて、予め裁判所の問題意識が伝えられたほどでした。
三 反対尋問に向けて
 今回の証人尋問は、原発事故の被害者が救済を求めた訴訟において、全国に先駆けて初めて実施されたものということもあり、多くのメディアが複数の記者を派遣するなど、注目を集めました。
 翌二一日付の各紙は、「生業訴訟で初の証人尋問」、「過酷事故対策で証人が不備指摘」、「過酷事故対策 怠る」といった見出しとともに、尋問の詳細を一斉に報じました。
 次回期日では、国と東電による反対尋問が行われます。弁護団では、早くも反対尋問対策に向けて準備を開始しています。
 立証段階に入った生業訴訟に、引き続きご注目ください。


広島での街頭リレートーク ・・安倍政権にレッドカード

広島支部  石 口 俊 一

 全国各地で、団員や弁護士が市民運動に関わり様々な役割を担っていますが、私は「広島県九条の会ネットワーク」(九条NW)の結成以来、事務局長をしています。二〇〇四年の「九条の会」結成から、広島県各地にもジワジワと会が生まれ、従前から憲法問題に取り組んできた広島憲法会議や護憲の市民団体も合流し、交流と連携を図るネットワークへと発展しました。広島市で月一回の定例会、随時の県内各地での交流会(福山、呉、廿日市、三次など)、中国地方の九条の会交流会、他県の九条ネットワークとの時折の情報交換(長崎、山口、島根、兵庫、宮城など)を続けて来ました。また、県内の九条の会や組合、市民運動などの集会チラシ、機関誌等の情報をセットして、月一回、定例会の案内と一緒に約九〇箇所への郵送と、MLでの連絡をしているので、思いの外大変です。
 第二次安倍政権が登場してからは、九条NWの活動も格段に忙しくなりましたが、一昨年秋からは秘密法市民NW(当時は法案反対、その後廃止を求めるNWへ)が日本ジャーナリスト会議広島支部の中心に結成され、その世話人としての活動も加わりました。さらに昨年七月の集団的自衛権行使を容認する閣議決定がされる中で、この二つのNWが共同の定例世話人会を持って、共同での集会の開催、アピール発表、デモの実施などを行うようになりました。
 また、戦争をさせない一〇〇〇人広島委員会(私も呼びかけ人の一人ですが)の開催する大江健三郎さんの講演会や街頭宣伝への参加や支援、さらには、広島弁護士会が主催する秘密法反対のシンポや集会、集団的自衛権問題の集会等への参加の呼びかけにも積極的に関わり、独自の集会応援チラシを作って配っています。そして、弁護士会の集会後には、手続きに慣れているNWの主催によるデモを行い、その先頭を赤い弁護士会の幟と赤いジャンバー姿の弁護士が進んでいくという姿が生まれています。
 さて、昨年一二月の総選挙の結果は、私たちが実感している民意、多くの市民が抱いている懸念や不安、課題を解決するものにはなりませんでした。投票前の学習会などでは「解散をチャンスに変えて、主権者として、今こそノーと言おう」等と話したのですが、力及ばずに低い投票率と安倍政権の続投を許してしまい事になりました。が、その元凶が小選挙区制にあるぞと、今まで以上にみんなが口々に話しているのが印象的でした。
 その昨年一二月の二つのNWの会議で、来年の通常国会では、民意を無視した政治が強行されるおそれがある、黙っている訳にはいかない、国会の外には、「安倍政権に白紙委任してはいないぞ」「国民の意見を無視し、戦争をする国を目指す安倍政権は退陣を」という市民がいるぞという活動をやろうという提案が出ました。裾野の広い真の“草の根”の憲法を活かす運動を進めていくために、学習の集い、小さい集会から大きい集会を積み上げていくとともに、集会に来ない人達の目や耳に届き、胸に響く活動をということから、二つのNW以外の市民運動に声を掛けて一緒にということが決まりました。
 そして、一月一七日(土)の午後、広島の様々な市民NWが集まり、今、「安倍政権ノー」の声を挙げ、その活動を持続しないと、私たちに続く世代に対して責任を果たすことができないという思いから、リレートークをしました。
 九条NWの私を皮切りに、労働法の改悪問題を山田延廣弁護士、原発の再稼動問題は上関原発反対のNWの木原さん、福島は今と核の問題は世界核被害者フォーラムの中谷さん、途中でオリジナル『戦(いくさ)へ行くな』の歌声、子どもと女性の貧困問題を第九条の会ヒロシマの栗原さん、辺野古に基地はいらないとピースリンク広島・呉・岩国の新田さん、マスコミとNHK問題を川本さん、最後に秘密法NWの難波さんが集団的自衛権と秘密法について訴えました。
 このような各運動の市民NWの連携は、今、徐々に強まっていますが、さらに広げていくことが、街を歩く人達にも伝わり、国会を包囲する市民の声を大きくすることになると思いました。次は、通常国会の開会当日一月二六日の夜、原爆ドーム前の集会とデモが第二弾です。広島県内の市民に向けて、【年の初めの安倍政権と対峙する(安倍政権を退治する)集会ですので、ご参加を!】と呼びかけているところです。


「オール弁護士会」めざす愛知の取り組みについて 一・一七集団的自衛権行使反対県民大集会・パレードの報告

愛知支部  長 谷 川 一 裕

 一月一七日は木枯らしがビルの谷間を吹きすさぶ寒い日だった。設営、受付要員等として配置され大半が「デモで車道を歩くのは初めて」という約八〇名の弁護士たちは、正午に久屋広場に集合し、打ち合わせ後、配置された部署について、幟やたすき、プラカードの配布物等を準備していたが、一二時半になっても出足は鈍く、八〇〇〇平方メートルの広場は閑散としていた。準備中、舞台の看板が突風で吹き飛ばされるというアクシデントが発生したことも不安を増幅したようだ。大集会を企画、主催するという体験自体がない弁護士たちは、「本当に市民は来てくれるのか」と不安を感じていることが伝わってくる。しかし、一時から舞台で和太鼓の演奏が始まった頃を前後して、参加者が会場四カ所の出入り口から押し寄せてくるのを見て弁護士たちの表情は見違えるように明るくなっていた。
 集会では、まず八〇歳を越えなお意気軒昂な冨島照男実行委員長が、拳を振り上げながら、一九四〇年に反軍演説を行って帝国議会から除名された斉藤隆雄を持ち出し「すばらしい演説だったが、時、既に遅し。一人で反対してもだめだ」「戦争への道を阻止するためには国民の数の声が必要だ。今なら間に合う」と「演説」調の開会挨拶を行ったのに続き、伊藤真日弁連憲法問題対策本部副本部長、俳優の「アマチン」こと天野鎮雄さん、キリスト者、大学生、保育士らがスピーチを行った。開会後も参加者は増え続けた。集会では集合の目印のため団体旗の使用が認められていたが、いつもの愛労連参加の労組や民主団体の旗に混じって、連合系労組のノボリも見える。顧問弁護士のルートを辿り、最終版には直接、会長等が連合愛知に出向いて協力を求めた。その効果が現れている。現地本部は、集会の成功を確信した。集会は、閣議決定の撤回等を求める集会宣言を拍手で確認した。花井増實会長がパレード出発宣言を行い、参加者が約三〇〇〇名、愛知県弁護士会所属の約一七五〇名の弁護士のうち六分の一に相当する三二五名が参加したことを報告すると会場はどよめきに包まれた。集会の司会を務めていた加藤良登弁護士は「憲法改正に賛成。しかし解釈改憲は許せない」が持論の若手だが、集会が終わりサザンの「ピースとハイライト」の音楽に乗ってデモ行進が始まると、舞台から降りながら「すごい!こんなことができるなんて!」等と叫んでいた。
 参加者は、栄繁華街コース、大須商店街コースの二コースに別れ、パレード(デモ行進)を行った。前日のアナウンサー講習会で特訓を受けた若手女性弁護士たちが一六台の街宣車に乗り込んだ。弁護士は、「弁護士」と書かれたたすきを肩から掛け、手にひまわりを持って行進した。急遽用意された「愛知県弁護士会」と書かれた幟二〇本、「集団的自衛権行使反対!」と書かれ企画のキャラクターとなった「のりちゃん」の絵柄をあしらった幟二〇本も沿道の市民の目を引くのに一役買ったようだ。一般市民は、白地に青地の「集団的自衛権行使容認 閣議決定撤回」と書かれたプラカードを持って歩いた。事前に「団体旗は遠慮していただきたい」「集団的自衛権反対の一点での共同行動という趣旨に沿わないスローガンが書かれたプラカード等は遠慮していただきたい」とお願いしていたためか目立った混乱はなく、集団的自衛権行使容認に反対する弁護士会を中心とする街頭行動であることを鮮明にアピールできたと思う。
 シュプレヒコールは、「『何々ハンターイ!』という従来型を何としても避けたい」とこだわり(私には余り違和感がないが)、弁護士が主役の法廷ドラマで頻繁に登場し市民にももお馴染みの「異議あり!」という台詞を使用した(アナウンサーが「集団的自衛権」「解釈改憲」と叫び、行進者が「ダメダメ」と応じるコールは、「沿道の市民から笑われ恥ずかしかった」という声もあり、評価が分かれた)。集会とパレードの様子は、各紙が報道し、各テレビ局も報じた。愛知県弁護士会の会員が、政治信条の違いを超え、一丸となって集団的自衛行使容認の閣議決定の撤回を求めているというアピールは広く県民に届いたと思う。
 今回の取り組みは、当初目指していた数千人という規模には届かず、連合系労組の協力が限られたものに留まった等の問題点はあったが、愛知の弁護士たちが一丸となって取り組み、「オール弁護士会」への重要なステップとなった。この点に今回の取り組みの特徴の一つがある。以下の記述は、この点にフォースする。
 参加者の構成を報告しておくと、前日までに弁護士会事務局にFAXで参加登録した弁護士は三二五名(未登録の弁護士や他会の弁護士もいたため弁護士参加は三五〇名と発表した)、そのうち団員は五三名である。登録一〇年以下一七〇名、登録三年以内の若手新人弁護士が五二名である。多くの市民から、「希望を感じた」「元気が出た」と言う感想の声が多く出されたのは、若手弁護士が多く参加し、溌剌とした創意ある行動となったことが影響したろう。にわか仕立ての女性弁護士アナウンサーが、前日と直前の特訓で疲れ果てたのか、息絶え絶えで街宣車からシュプレヒコールを行っても、参加者からはブーインクではなく「頑張れ!」の激励が目立った。デモ行進になれた参加者の目にも今回のパレードは新鮮に映ったようだ。
 集会には延べ八五名、パレードには延べ八五名の要員を配置したが、街宣車の運転に愛労連等の援助を受けた外は、弁護士と法律事務員で賄った。団員や団事務所で働く事務員がパレード誘導、交通整理等で活躍したことは言うまでもないが(法律事務員労組の関係社の支援は大きな力となった)、一〇〇名近い弁護士が「お客」ではなく、要員を務め、主体的に企画を担ったことは重要だった(要員を配置する方は大変だった)。弁護士たちが一様に達成感を口にしているのは、手作り的に企画を自ら準備して成功させた、という確信があるからだろう。打ち上げの懇親会では、「久しぶりに文化祭のようなことをやって楽しかった」「またやろう」といった声が上がった。「日頃交流がなかった弁護士たちと親しくなれた」「弁護士会がまとまったことは、他の課題のためにもプラスになる」等の声も聞かれた。
 県民大集会の企画は、昨年一一月に急遽、開催が決まり、その後まさかの衆議院解散、総選挙という事態に加え、年末年始、一五日告示の愛知県知事選挙等とも重なり、実行委員会の中心メンバーを中心にバタバタの準備となった。そうした中で上記のような成果を収めることができた要因はどこにあるか。
 実行委員会では、「弁護士会が呼びかけはするが参加者は労組、市民団体ばかり、というのは、絶対やめよう」「弁護士会の『名義貸し』はだめだ。弁護士の参加こそ重要」と意思統一した。花井会長と五名の副会長が憲法委員会と一体となって取り組む構えを作り、会員への呼びかけは、各会派(いわゆる派閥。愛知には五つの主要な会派がある)の幹部を実行委員会に参画していただき、連名で呼びかけを行った。参加組織も、会派のラインでの参加組織も重視した(「会派」の中で一番、動員が緩かったのが団支部ではないかと思う)。会派(派閥)の活用については、いろんな意見もあったが、目をつぶった。
 花井会長が「これを許せば、憲法の番人である司法の一翼を担う弁護士会がなめられる」と腹をくくり、冨島実行委員長が五日の新年会の閉会挨拶で「厳冬期の屋外集会だが、高血圧でそのままぶっ倒れても悔いは無い」と演説をぶち「五本締め」ならぬ「護憲締め」で締め、これで一気に会内の雰囲気が高まった。矢崎団員が作成した斬新なデザインのチラシが評判を呼び「のりちゃん」が広まったこと等の広報活動上の工夫も重要だった。
 しかし、根本的には、安倍政権の卑劣な解釈改憲に対して、政治信条の違いを超え、広範な弁護士たちが心底、怒っている、という事実が改めて実証されたという点が重要であろう。人権擁護と社会正義の実現を使命とする日本の弁護士集団を信頼し、大胆に行動を提起すれば、解釈改憲反対の「オール弁護士会」を名実ともに作り上げることは可能であることを、愛知の取り組みは示したと言えるのではないか。
 沖縄では、自民党から共産党まで結集した「オール沖縄」が知事選挙、衆議院選挙で勝利し、辺野古基地建設反対の牙城となっている。安倍政権の改憲路線に対決する「オール弁護士会」が確立すれば、安倍政権が安保法制の大改悪と憲法破壊に反対する国民的闘争にとって大きな力となるだろう。日弁連とすべての単位会は、既に決議や会長声明を上げ、その総意は示されている。それを土台にしながら、弁護士たちがこぞって改憲反対の行動に立ち上がるという真の「オール弁護士会」を作り出すために全国で奮闘しよう。


「司法修習生に対する給費制の復活と司法修習生に対する給費制廃止違憲訴訟の公正な判決を求める署名」にご協力下さい!

埼玉支部  増 田 悠 作

 給費制が二〇一一年一一月に廃止されて貸与制に移行して以来、新六五期以降の司法修習生は、給与の支払いのない状態で司法修習を行うことを余儀なくされています。
 給費制廃止下で、司法修習生は重い経済的負担を強いられ、基本書や実務書を購入できない、シンポジウムに参加するための交通費がない、などの生活実態が明らかとなっており、また、そもそも修習自体を控える者の増加や法曹志願者の減少など、給費制廃止下で起こる問題は悪化の一途を辿っています。
 このような状況が続くことになれば、今後益々、社会的意義のある活動を担う弁護士が育たなくなることは明らかであり、団の将来にも大きく関わってくる問題です。
 現在、給費制廃止の違憲性を明らかにすべく、貸与制下で修習を行った新六五期及び六六期の弁護士らによって、国を相手に訴訟が行われており、新六五期訴訟は東京、名古屋、広島及び福岡の四地裁に、新六六期訴訟は札幌、東京及び熊本の三地裁にそれぞれ係属しています。
 国は、同訴訟の中で、司法修習生は自ら選択して修習を受けているに過ぎず、給費を受ける権利を有しているわけではない、給費制は国の配慮に過ぎなかった、などと主張しています。このような国の姿勢を根本から改めさせ、給費制廃止下で司法修習を修了した全ての者を救済するためには、現在行われている全ての訴訟で勝利を収めることが必要です。
 全国の団員の皆さまには、このような給費制訴訟の意義にご賛同頂き、「司法修習生に対する給費制の復活と司法修習生に対する給費制廃止違憲訴訟の公正な判決を求める署名」に、ぜひご協力下さい!
※署名用紙は、弁護団のホームページでもダウンロードできますのでご活用下さい。
 弁護団ホームページ http://kyuhi-sosyou.com/index.html