自由法曹団通信:1593号      

<<目次へ 団通信1593号(4月11日)


  二〇一七年 群馬・磯部 五月集会特集
〜 その二 〜
小野寺 義 象 自衛隊の国民監視差止訴訟:裁判終結集会
権力の闇に憲法の光をあてた九年の闘い
佐 藤   宙 生活保護法六三条返還処分取消裁判
勝利判決のご報告
漆 原 由 香 共謀罪より怖い!?家庭教育支援法案を阻止しなければならない理由(下)
中 島   哲 北海道労働委員会労働者委員獲得に向けたたたかいの軌跡(三)
鷲 見 賢一郎 いすゞの非正規切りとの八年間のたたかい(上)
吉 田 竜 一 限定正社員、非正規従業員一五名が賞与等の不支給措置の是正を求めて提訴
上 田 月 子 第三回安倍「働き方改革」批判検討会のご報告
岡 邑 祐 樹 倉敷民商弾圧事件・禰屋裁判不当判決の報告
大久保 賢 一 マーシャル諸島・マジュロでのビキニデー



二〇一七年 群馬・磯部 五月集会特集
〜 その二 〜

 今号では、プレ企画と全体会・各分科会の詳細・特別企画のご案内をいたします。
 四月一日号団通信同封の申込用紙に必要事項をご記入のうえ、富士国際旅行社までFAXにてお申し込み下さい。
 参加申込締切は、四月二八日(金)となっております。

プレ企画 五月二〇日(土)
いずれも午後二時〜六時

1 新人弁護士学習会
【講演】

(1)群馬支部企画
●講師 下山 順団員(群馬支部)
(一) 群馬の森追悼碑訴訟
県立公園「群馬の森」(高崎市)に建てられている朝鮮人追悼碑について、県が碑の設置更新を不許可決定し撤去を迫ったことに対し、碑を管理する市民団体が撤去処分取り消し等求めた行政訴訟です。弁護団事務局長の下山順団員に報告してもらいます。

(二) 街宣規制に関する問題
警察による街頭宣伝の規制妨害の状況とそれに対する市民団体の取組について、これについても、群馬支部の下山順団員に報告してもらいます。
若手団員からの報告は、新団員の皆さんの活動に役立つ情報がいっぱいあると思います。ぜひ、ご参加下さい。

(2)本部企画
●講師 今村核団員(東京支部)
 「冤罪事件はどうして起こるのか
    〜その仕組みと冤罪弁護士の活動〜」
●対談 今村核団員 × 泉澤章団員(東京支部)
「冤罪事件の最前線」
 冤罪事件がいま改めて注目を集めています。昨年、冤罪を生み出すと批判を浴びながら、無実の者の引っ張り込みの危険がある司法取引制度と、捜査機関による恣意的運用を許す取調の録音録画制度を導入する刑訴法等改正法が成立しました。折しも、昨年四月に有罪判決があった今市事件では、自白する場面の録画が公判廷で再生され、任意性が認められるとともに実質証拠としても機能して有罪判決を導かれました。そして現在、冤罪を生み出される傾向を助長するかのように、共謀罪法案が審議されようとしています。私たちはこの機会に冤罪事件について学び、冤罪事件がなくなるよう取り組んでいかなければなりません。
 そこで、五月集会では、数々の冤罪事件を担当し、これまでに一四件もの無罪判決を勝ち取ってこられ、昨年末にはNHKドキュメンタリー番組でも取り上げられました今村核団員(著作として、『冤罪と裁判』、『冤罪弁護士』など)に、日本の刑事裁判制度を踏まえて冤罪事件はなぜ起きるのか、無罪に向けてどのような弁護活動をするのかなどについてご自身の経験をお話しいただきます。また、今村団員は事件に取り組むだけではなく、日弁連においても全国冤罪弁護団協議会座長を務め、全国の弁護士・研究者などとの研究・経験交流を進め、冤罪をなくす運動にも取り組んでおられますので、その取り組みについてもお話しいただく予定です。
 企画後半は、今村団員とともに冤罪被害救済問題に積極的に取り組んでこられた泉澤章団員と今村団員との対談を行います。泉澤団員(著作として、今村団員との編共著『日本版「司法取引」を問う』など)は再審無罪を勝ち取った足利事件弁護団に参加し、日弁連でも人権擁護委員会再審部会に所属して、刑事再審問題や冤罪事件に積極的に取り組んでこられました。お二人の刑事・冤罪事件についてのこれまでの活動、苦労や醍醐味をお話しいただきます。
冤罪事件に取り組む最前線にいらっしゃる今村団員・泉澤団員のお話が聞ける貴重な機会ですので、奮ってご参加ください。

2 法律事務所事務局員交流会
[ 全体会 ]午後二時〜四時

 今年の五月集会事務局交流会は、五月二〇日土曜日の午後に行います。
事務局交流会は、全国の団事務所の事務局の方々と一同にお会いできる年一回の貴重な機会です。ぜひ多くの事務局の方にお集まり頂きたいと思います。各事務所、諸事情等で事務局の参加が難しくなっていると聞いておりますが、五月集会に参加する意義を議論していただき、事務局の参加の確保をお願いしたいと考えております。
 事務局交流会の全体会では、東京支部の久保木亮介先生(代々木総合法律事務所)に、「私たちのたたかいが、いかに団事務所事務局に支えられているか〜『生業を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟からのメッセージ」と題してご講演頂きます。また、事務局講演として、長尾忠昭さん(弁護士法人名古屋北法律事務所)に「団事務所での経験と活動、地域での活動について」と題してご講演頂きます。どちらのご講演もなかなか聞けない貴重なお話しとなりますので、ご参加をよろしくお願い致します。
事務局交流会世話人
深 澤  亮(東京東部法律事務所)

[ 分科会 ]午後四時一五分〜六時
●新人事務局交流会
 新人事務局員のみなさん、こんにちは。
 日々の業務には慣れましたか?一般事務・法律事務を中心とする仕事、自由法曹団員の在籍する事務所としての活動、それぞれ初めて携わる方がほとんどではないでしょうか。
新人事務局員同士で意見を交換し、疑問を解消し、不安を軽減する。仕事・活動の魅力ややりがいを感じる。そして今後の仕事・活動にいきいきと取り組んでもらえたなら。そんな交流会にできればと考えています。
 全国の団事務所の事務局員が顔をあわせる機会はなかなかありません。しかも「新人」として参加するのは最初だけです。
 ぜひ、新人事務局交流会でお会いしましょう。
事務局交流世話人
大 江 愛 子(武蔵野法律事務所)

●活動交流会
 共謀罪の閣議決定、教育勅語の教材使用など、安倍政権の暴走はとどまるところを知りません。
本分科会では、今日の情勢の中、全体会でのお話もふまえたうえ、団事務所の事務局として、また一人の国民=主権者としてどう行動していくのか、自らが参加する地域の労組・団体での運動経験も交流する中で、参加者全員でざっくばらんに話し合いたいと思います。
 また、各事務所で実践されている仕事の進め方や分担、日常業務と運動の両立についてなど、率直に交流したいと思います。経験のあるなしに関わらず、交流の中で明日からの業務や運動に向けての活力になるような分科会にできればと考えています。
 みなさまお気軽にご参加下さい。

●業務に関する交流会
「事務局の仕事と研修」
 これまで、この分科会では、各事務所で実践されている仕事の進め方や分担、事務所建設の悩みなどを経験交流しながら、弁護士と事務局、事務局間の組織的な連携、チームワークについて考えてきました。
 今回の交流会では、上記内容に加え、各事務所で日弁連が行っている事務職員能力認定制度に基づく研修会や各弁護士会など、さまざまなところで取り組まれている研修会にどのように参加しているのか、どのようにして事務職員として能力を伸ばし、日常業務を行っているかなどについて交流を深めたいと考えております。
 ぜひご参加ください。
事務局交流世話人
松 本 華 子(八王子合同法律事務所)

第一日目 五月二一日(日)
午後一時一五分〜五時四五分

●全体会 (午後一時一五分〜三時三〇分)
【記念講演】
講師 君島東彦氏(立命館大学国際関係研究科教授)
講演テーマ
六面体としての憲法九条
〜パックス・アメリカーナの黄昏に我々はどのように平和をつく  るか〜

 君島東彦(きみじまあきひこ)教授は、立命館大学国際関係学部教授(現在、学部長)であり、二〇一六年一月からは日本平和学会の会長に就任されております。専門は、憲法学・平和学であり、日本国憲法の平和主義に関する研究、東アジア平和秩序に関する研究などをテーマとされております。今回、君島教授には、戦後日本全体を視野におき、憲法九条の意義等につき、多面的に(君島教授は「六面体(六つの視点)」と指摘されます)検討していただき、憲法平和主義のあり方についてご講演いただく予定です。以下、君島教授からの紹介文です。

【二〇一七年五月三日、我々は日本国憲法施行七〇年を迎える。同時に、パックス・アメリカーナ(覇権国米国がつくった戦後世界秩序)はいま黄昏を迎えている。東アジアの国際関係 〜米国、中国、北朝鮮、韓国の関係〜も激変が予想される。講演では、「日米防衛協力」、沖縄の米軍基地問題、ヘイトスピーチ、日本の「愛国主義」等の諸問題を総体的・構造的にとらえて、憲法平和主義を再創造していく道筋を模索したい。】
 多くの方のご参加をお待ちしております。
事務局長 西 田  穣

●分科会(午後三時四五分〜五時四五分)

(1)憲法・平和
分科会(一日目)
 国際的には、アメリカではトランプ大統領が誕生し、韓国では朴大統領が罷免されるなど、国際情勢は変化しています。また、北朝鮮の挑発的な外交や中国の覇権主義的な行動も継続しています。他方、国内に目を向けると、昨年夏の参議院選挙では、全国三二の一人区で野党共闘が成立し、一一の選挙区で勝利をおさめる一方、改憲派勢力が衆参で三分の二以上を占めるという事態も生じています。また、安倍政権は、戦争法の具体化として、昨年一一月に駆けつけ警護などの新任務を自衛隊に付与し、南スーダンPKOに派遣しました。戦争法に関しては、全国各地で違憲訴訟が提起され、南スーダンへの自衛隊派遣の差し止めを求める訴訟も提訴されています。このような情勢を踏まえ、憲法分科会では、日本をめぐる安全保障環境、明文改憲をめぐる攻防の現状などを確認し、戦争法制発動阻止・廃止の運動も踏まえつつ、明文改憲策動に対して、いかに立ち向かうか、どのように運動を構築すべきか、憲法の平和主義を活かして安全保障問題をどう解決していくのかについて討論する予定です。
 さらに、安倍政権は、新基地の建設に反対する沖縄県民の総意を踏みにじり、辺野古、高江などで新基地建設を強行しており、これに反対する住民らに対して、全国の機動隊を動員して異常な弾圧が繰り広げられています。憲法分科会では、沖縄の新基地建設問題についても、全国の力を結集すべく、現状報告とこれからの運動について討論します。
事務局次長 種 田 和 敏

(2)共謀罪分科会(一日目)
(一)講演
『「戦争をする国」づくり・治安強化の中での共謀罪の役割と位置づけ』
講師・纐纈(こうけつ)厚さん(山口大学名誉教授、二〇一六年参院選の山口県選挙区統一候補)

(二)共謀罪法案に関する問題提起
 政府は、今国会での共謀罪創設法案の成立をもくろみ、法案を提出し、審議をはじめようとしています。憲法違反であり、監視社会を招く共謀罪法案の成立はなんとしても阻止しなければなりません。仮に今国会での成立を阻止したとしても、政府はまた共謀罪を成立させようと動いてくるでしょう。今国会での成立を阻止し、今後も引き続き確固とした反対の取組みを続けていくには、共謀罪の位置づけを明確にし、そのおそろしさを国民の間の広い共通認識とすることが大切です。
 そこで、五月集会では、日本政治史の研究者であり、『逆走する安倍政治』『暴走する自衛隊』『監視社会の未来―共謀罪・国民保護法と戦時動員体』など多数の著書もあります纐纈厚さんにお越しいただき、『「戦争をする国」づくり・治安強化の中での共謀罪の役割と位置づけ』と題して、安倍首相が進める「戦争する国づくり」「国民に戦争させる国づくり」の中において共謀罪がどのような位置づけをもち、役割を果たすのかについてお話しいただきます。ぜひ多くの方にご参加いただき、現代社会のなかで共謀罪が持つ危険な機能を再認識したうえで、共謀罪反対の取組みにつなげていただきたいと思います。
 講演後、二日目討論に向けての共謀罪法案に関する問題提起をし、若干の議論をします。
事務局次長 久 保 田 明 人

(3)労働・格差・貧困分科会
 今年の五月集会では、(1)一日目は合同で後藤道夫・都留文科大学名誉教授にご講演いただき、(2)二日目は労働と貧困・社会保障に分かれて分科会を行います。
 「アベノミクス」のもと、貯蓄ゼロ世帯が大幅に増加する一方で、富裕層は拡大しています。年収二〇〇万円以下のワーキングプアは増え続け、非正規労働者は四割を超えました。生活保護利用者は過去最高を更新し続けています。このような「格差と貧困」の拡大のなかで、安倍政権は雇用と社会保障の解体をいっそう推し進めようとしています。いま、「格差と貧困」に私たちがどう対抗軸を打ち出すかが強く求められています。
 そこで、一日目は後藤先生に、広がり続ける「格差と貧困」の実態と、それがいかにして作られてきたのかを社会保障の側面と雇用の側面からお話しいただき、また質疑応答を通じて、私たちが「格差と貧困」を克服するためにどう取り組みをすすめるべきかを考える機会にしたいと思います。
事務局次長 酒 井 健 雄

(4)原発分科会(一日目)
 今年の五月集会では、両日、原発問題分科会を開催します。
 一日目は、三月二一日に結審し、一〇月一〇日に判決言渡しが予定されている「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発事故原状回復請求訴訟の原告団事務局長・服部浩幸さんを迎え、「今、福島で暮らすこと、これからも福島で生きること」と題したお話をして頂きます。これまで、皆さんも、各地に避難している被害者の話は聞かれていると思うのですが、今、福島で暮らしており、これからも福島で生きていく被害者の話を聞く機会は、それほど多くなかったのではないか、と考えての企画です。服部さんは、結審時の原告意見陳述をされました。「裁判を通じて得られたものは大きく、人生の宝になった。しかし、そんなものはなくても、平凡に普通に生きていたかった。」というくだりで、みんな涙し、大きな拍手をもって陳述を終えられました。当日は、服部さんの他にも、生業訴訟の原告の方に参加して頂く予定です。  事務局次長  岩 佐 賢 次

第二日目 五月二二日
午前九時〜一二時三〇分

●分科会(午前九時〜一一時)
(1)憲法・平和分科会(二日目)
*一日目をご参照下さい。

(2)共謀罪分科会(二日目)
 共謀罪法案に反対する取り組みについての報告、討議
 一日目のご講演・問題提起を踏まえて、共謀罪法案に反対する各団員の取組みについて経験交流をし、共謀罪法案の問題点、政治情勢、反対運動の取組方法などについてご意見をいただき、討議をする予定です。
事務局次長 久 保 田 明 人
(3)労働分科会
 前半では、安倍働き方改革を中心に、労働法制改悪についての議論・討論を行います。安倍政権は、二〇一七年三月、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現への法改正の方向性などを盛り込んだ働き方改革実行計画を決定しました。また、労働基準法等改正案(過労死促進・残業代ゼロ案)は、継続審議となったままです。さらに、金さえ払えばクビ切り自由にできる制度である解雇の金銭解決制度の導入に関して、厚労省内に検討会が設置され、議論が進んでいます。安倍働き方改革を含む労働法制改悪を阻止するたたかいにどう取り組むかについて、政治情勢を踏まえて、たたかいの経験交流、今後の運動をどう考えるかについての討論・議論を行い、行動提起等も予定しています。
 後半では、全国の労働裁判闘争の報告と討論を行います。この間も、労働契約法第二〇条に関するメトロコマース事件についての判決など注目の事件がいくつもありました。裁判における闘争の経緯・成果や、過労死・過労自殺裁判について報告・討論する予定です。また、労働委員会でのたたかいについても意見交換します。これらの取り組みと経験を多くの団員が自由法曹団全体の力にするために、各事件についての報告を受け、討論したいと思います。
 是非ご参加ください。
事務局次長 種 田 和 敏

(4)貧困・社会保障分科会
 二日目の貧困・社会保障分科会では、引き続き後藤先生のご出席をあおぎながら、小田原「保護なめんな」ジャンパー問題や立川事件(就労指導違反による保護廃止の直後に利用者が自殺した事件)などの生活保護に関する運動・事件、各地に広がった生活保護基準引き下げ訴訟や年金訴訟などの社会保障切り下げとたたかう運動・事件など、各地の取り組みの報告を受け経験交流を図ります。
 また、地元行政と連携したユニークな取り組みや住宅セーフティネットや最低賃金等を取り上げて、「格差と貧困」を克服するために、私たちが今後どうやって取り組みを広げていくべきか、討議を行います。
 改憲、共謀罪等の阻止の取り組みと労働、貧困・社会保障の取り組みは車の両輪をなすものと思います。この五月集会が、深刻化する貧困と社会保障の解体とたたかう取り組みをいっそう強める機会になればと思いますので、幅広いご参加をお願いいたします。
事務局次長 酒 井 健 雄

(5)原発分科会(二日目)
 各地の弁護団・原告団の訴訟・運動等についての経験交流を行なう予定です。
 皆さま、是非ご参加下さい。
事務局次長 岩 佐 賢 次

●特別企画
五月二一日(日)
(夕食懇親会後〜 予定)

(1)給費制企画(午後九時〇〇分〜予定)
 給費制は、これまでの復活の取組みが実り、今国会で修習給付金を支給すること等を盛り込んだ裁判所法の一部改正案が提出されることとなりました。しかし、修習給付金額は給費制廃止以前の給費の額に及ばず、また、法改正前に貸与制のもとで修習を終えた新第六五期から第六九期の法曹及び第七〇期司法修習生に対する遡及適用はないとされるなど、課題も残され、引き続き取り組みを継続していく必要があります。
本企画では、(1)裁判所法改正をめぐる政治情勢と到達点を確認し、(2)給費制訴訟に取り組んできた団員からの訴訟経過報告、(3)貸与制下での現状についての各地の報告と討議を踏まえ、(4)今後のどのような取組みをしていくべきかについての討議を行います。
 ぜひ積極的なご参加をお願いいたします。
事務局次長 久 保 田 明 人

(2)女性部企画(午後九時〇〇分〜予定)
*女性弁護士の働き方について〜ゆるカフェ
 毎回恒例になりました女性部企画のゆるカフェです。女性弁護士の働き方、どうすればより良い環境が作れるのか、お酒など飲みながらゆるゆると話をしましょう。
 女性部は来年創立五〇周年を迎えます。せっかくの機会ですから、先輩弁護士にご参加いただいて、苦労話や困難をどう切り抜けたのかというお話も伺いたいと思います。先輩方、ぜひ参加ください。
 めったに聞けない話もあると思います。男性団員もぜひ遠慮なさらずご参加下さい。
 ソフトドリンクもご用意します。持ち込みは大歓迎です。お子さま連れでもどうぞ。(ただし、寝る時間は考えてくださいね。)
事務局次長 湯 山  薫

◆書籍販売について
 前号でご案内の通り、書籍販売をご希望の方は、下記の書店さんと連絡をお取り頂いた上で、五月集会の会場宛に『自由法曹団五月集会・販売委託書籍』と明記してお送り下さい。
 書籍を送る際の必着日等についても、左記書店さんに直接ご確認下さい。
 出版社から書籍の取り寄せをお願いする際は、取り寄せに一定の時間がかかるため、四月二一日申し込み締め切りとなるそうです。
*かもがわ出版(担当・営業・三井さん)
Tel  075-432-2868
FAX 075-432-2869
email takashi@kamogawa.co.jp

 尚、例年通り各自での書籍販売コーナーのスペースも設けます。ご希望の方は、ご自身で販売していただいて結構です。
※売上金の管理・釣り銭等の準備は各自でお願いします。
※個人での書籍販売を希望される場合は、左記会場宛に『自由法曹団五月集会・個人販売書籍』と必ず明記してお送りください。(各自販売コーナーに寄せておきます。確認のため、当日は受付に一声お掛け下さい。)

★会場・宿泊先
  磯部ガーデン
  〒379-0127
  群馬県安中市磯部一の一二の五
  電話 027-385-0085
  FAX 027-385-0055
配布資料については、現地での資料セットの都合上、五月一九日(金)必着でお願いします。

★宿泊・交通等 問い合わせ先
 富士国際旅行社(担当・小野寺さん・谷藤さん)
 電 話 03-3357-3377
  FAX 03-3357-3317

★五月集会の参加申込書・交通案内・旅行案内について、ホームページの団員専用頁にもアップしてありますので、ご活用下さい。


自衛隊の国民監視差止訴訟:裁判終結集会

権力の闇に憲法の光をあてた九年の闘い

宮城県支部  小野寺 義 象
(原告弁護団事務局長)

 梅香る穏やかな日和の三月四日。
 二〇〇七年一〇月五日の第一陣提訴から一六年一〇月二六日の最高裁決定まで九年間にわたって闘ってきた「自衛隊の国民監視差止め訴訟」の終結集会が、仙台弁護士会館で、一〇〇人を超す参加のもとで行われました。
 オープニングは、「イラク派遣反対のライブ」が監視され、実名や職業まで調べられた行為がプライバシー侵害として、国家賠償を勝ち取った苫米地サトロさんのギター演奏です。
第一部では、原告団長の後藤東陽さんが「今年九三歳。訴訟を始めた時はたった四人だったが、その後沢山の原告が続き、支援する会が温かく包んでくれ勝利することができた。弁護団はじめ全ての方々に感謝申し上げたい」と開会の言葉を述べました。弁護団を代表して、私が訴訟全体の流れと成果、そして、今も監視を続けている自衛隊や警察を私たち国民が監視する闘いを続けようと訴えました。支援する会代表の伊藤博義さんが、「これまでいつも閉会挨拶を述べてきたが、今日は本当に最後の閉会挨拶です」として、支援する会が取り組んだ裁判傍聴、署名活動、学習集会、財政活動などの大きな役割に触れ、この運動を活かしていこうと締めくくりました。
 第二部は、三人の弁護士による講演「憲法九条と自衛隊訴訟―課題と展望を語る―」ですが、その冒頭で、この訴訟ならではのサプライズがありました。
 なんと元情報保全隊員から連帯のメッセージ(録音テープ)が届いたのです。発言のなかで、元隊員は、情報保全隊の国民監視が憲法に違反する行為であり国民監視体制が整っていることに強い危惧を抱いていると語り、「(監視という)憲法に違反する行為をしていたことについて皆様にお詫びします」と述べました。自衛官の憲法九条への思いを感じるメッセージでした。
 講演では、「先行し違憲判決を勝ち取った自衛隊イラク派兵差止名古屋訴訟の立場から」中谷雄二弁護士が、日本国憲法が九条二項に軍備放棄を明記していることの先駆的意味を指摘し、戦後の平和的生存権をめぐるたたかいの歴史を第一期から第四期に分けて話されました。自衛隊派兵違憲訴訟では、平和的生存権について、被害を受けない権利から加害への加担を強制されない権利へと拡張され、具体的権利性が認められたことの歴史的意義を語ってくれました。そして、自衛隊の国民監視差止訴訟は、自衛隊が海外派兵される下での国内の人権侵害を争った事件であり、戦争する国の国内治安体制、すなわち秘密保護法や共謀罪などとの闘いの先頭を走り、全国の運動に大きく貢献できたと評価し、激励して頂きました。
 続いて、「これから本格的な闘いが始まる自衛隊南スーダンPKO違憲訴訟の立場から」佐藤博文弁護士が、南スーダンへ派遣された現職自衛官の母親の平和子さん(仮名)が、一六年一一月三〇日に、派遣の差止めと国家賠償を求めて札幌地裁に提訴したことを紹介し、自衛隊員の家族の平和的生存権を求める全国初の訴訟であると強調。戦闘の絶えない地域に、「貫通銃創」にも対応できないほぼ丸腰で派遣されている自衛隊員は、人権保障見地からも許し難く、権利侵害は明らかである。政府は「日報破棄」などと国民に事実を隠蔽しているが、訴訟を通して資料を出させ南スーダンのPKO活動の実態を明らかにさせ、勝利判決と自衛隊の一刻も早い撤退を勝ち取りたい。札幌の闘いを全国に広げ、追加提訴も実現したいと訴えられました。
 最後に、「戦後の自衛隊訴訟全体の立場から」内藤功弁護士が、砂川事件、恵庭事件、長沼訴訟、百里訴訟など戦後の自衛隊訴訟の豊富な経験と教訓から、自衛隊の国民監視差し止め訴訟の意義を語って頂きました。長沼訴訟で初めて平和的生存権を根拠にたたかい、認めさせることができたこと、本訴訟ではそれをさらに発展させ、自衛隊幹部を法廷に立たせ、判決で自衛隊の監視活動に一定の制限を加えさせた意義は大きい。訴訟の途上で明るみになった自衛隊の内部文書や教範によれば、国民監視の目的は「自衛隊阻害勢力」を「無力化させる」ことだという。戦前の憲兵が国民を監視し、捜査し、せん滅したことを想起させる。アメリカの情報部隊と日本の部隊は日常的に情報を共有しており監視網は大掛かりである。このたたかいを語り継ぎ、国民に広く知らせ、成果は活用し、さらに南スーダン派兵差し止め訴訟へと繋いでいこうと、今後の課題を提起され、講演を結ばれました。
 自衛隊訴訟の闘いによって平和的生存権が発展していることの分かる講演会になりました。
 裁判報告集の書き出しに、この九年の闘いに参加された多くの人々への敬意を込めて、与謝野晶子のうた、「劫初よりつくりいとなむ殿堂にわれも黄金の釘一つ打つ」を使わせて頂きました。松川事件の大衆的裁判闘争のなかで、岡林辰雄弁護士が引用されていたうたです。

(二〇一七年三月二〇日)


生活保護法六三条返還処分取消裁判

勝利判決のご報告

東京支部  佐 藤   宙

はじめに
 昨今、福祉事務所が誤って基準を超える生活保護費を支給し、後になって、生活保護法(以下「法」という)六三条を根拠として、過誤支給分の保護費の返還処分を行うケースが多発している。本件も、その中で起こった事件の一つであり、約六〇万円もの過誤払い保護費の返還を求められたものである。この度、東京地方裁判所に法六三条返還処分の取消訴訟を提起したところ、画期的な勝利判決を得ることができたので、ここに報告させていただく。なお、弁護団は、田所良平団員と佐藤の二名である。
一 事案の概要
 本件は、児童扶養手当の支給について、福祉事務所に申告していたにも関わらず、福祉事務所が約一年三か月にわたって収入認定を怠り、その間、児童扶養手当の相当額分の生活保護費の過誤支給が発生したことに加え、本来三月までしか支給されないはずの冬期加算が四月以降も支給された結果、約六〇万円もの生活保護費の過誤払いが生じたため、法六三条を理由にその全額の返還を求められた事案である。
 原告は、過誤支給保護費を日々の生活費や長女の養育費等に使ってしまったことを告げ、福祉事務所に返還を免除してくれるよう申し出たが、福祉事務所は全く聞く耳を持たなかった。審査請求、再審査請求の申立をするもいずれも棄却されたため、裁判所に対し処分の取消しを求めたのが本件裁判である。
二 原告の主張の骨子
 厚労相や東京都は、法六三条について、原則として過誤支給分全額の返還を求めるものであり、自立更生費などに費消した場合に限り、例外的に返還額から控除しうるというにとどまるという解釈を採っている。この裁判では、このような行政解釈を打ち破るかが重要なポイントとなった。
 そのためにこの裁判では、法六三条の趣旨にさかのぼり、次のような主張を展開した。すなわち、生活保護法六三条は、返還を求める額について「実施機関の定める額」として、返還額の決定について福祉事務所に裁量を認めており、全額返還を原則とはしていない。また、法六三条は、過誤支給の場合にも、遡って処分を無効とするのではなく、有効として維持したまま、時後調整的に返還を求めうる規定に過ぎない。かかる条文の性質・構造からすれば、法六三条は、過誤支給額全額の返還を原則とするものでは決してなく、対象者に返還しうる資力が残っている場合に限り、その資力の範囲内で返還を求めうる規定にとどまる。したがって、返還資力がなく、生活保護費の中から返還を余儀なくされる場合には、返還額を〇円とすべきである。
 以上に加え、本件過誤支給は、福祉事務所全体に関わる余りにずさんなケースワークの結果生じたものであるところ、その責任を、経済的に過酷なほどの困窮状態にある原告に転嫁することは到底許されるものではないという点も、主張の中心に添えた。
 生活保護法問題に専門的に取り組んでおられる吉永純花園大学教授には、上記主張を裏付ける論文を作成していただき、証拠として提出した。
三 画期的な判決内容
 東京地方裁判所は、このような原告の訴えを正面から受け入れる画期的判断を下した。
(1) 画期的判断その一 〜最低限度の生活の保障の優先〜
 判決は、生活保護法六三条の返還よりも、最低生活の保障が優先するとして、資力がないにもかかわらず過誤払い保護費の返還を求めた本件処分を違法とした。すなわち、判決は、生活保護法六三条に基づいて返還を求めるにあたっては、最低限度の生活の保障や自立の助長という生活保護法の趣旨に反しないようにしなければならず、返還資力がない場合には、返還を求めないことも可能であると判示した。その上で判決は、本件処分について、原告には返還のための資力がないにもかかわらず、漫然と過誤支給保護費全額の返還を求めたものであるとして、違法と断じた。
 本判決は、全額返還を原則とする行政解釈を否定し、最低生活の保障という生活保護法の目的に立ち返り、生存権の保障を優先する判断をしたものであり、画期的な判断といえる。
(2) 画期的判断その二 〜受給者への責任転嫁という視点の導入〜
 判決は、福祉事務所のミスによる過誤払い保護費の返還を求めることは、福祉事務所の責任を生活保護利用者に転嫁する側面があるとし、過誤払い保護費の返還を求めるにあたっては、過誤払いをした担当職員に責任を負わせるべきか否かについても要考慮事項であるとした。
 以上を前提に、判決は、本件処分が、担当職員への責任追及の可否を検討することなく、負担全てを原告に押しつけたものであるとして、本件処分を違法とした。これまでの法六三条返還処分の適法性が問題となった裁判で、このような判断を行った先例はなく、この点も極めて画期的な判断といえる。
 判決後、二度に亘り東京都に対し控訴断念要請行動を行い、本判決は無事確定した。
四 過誤支給保護費問題の根絶のために
 冒頭でも触れたとおり、過誤支給保護費やその返還の問題は、全国的な問題となっている。この要因としては、ケースワーカー一人あたりの抱えるケース数が多く保護費の誤計算を防止しきれないことや、厚労省の通達が過誤支給保護費全額の返還が原則であると定めていることが挙がる。これらの問題は可及的速やかに改善されなければならないが、厚労相は、本判決を一事例判決であるとして問題を矮小化し、問題解消に向けた動きを一切見せていない。
 過誤支給保護費問題の根絶のため、ケースワーカー増員の要請や、本判決を各地の福祉事務所に周知し、本判決に則った運用を確立させることは、急務といえよう。


共謀罪より怖い!?家庭教育支援法案を阻止しなければならない理由(下)

岐阜支部  漆 原 由 香

四 「戦時家庭教育指導要綱」との類似点(続き)
 戦時、政府は、学校教育の効果があがるよう家庭教育でも同じことを実践させなければならない、家庭でも「国の子」を厳しく育てなければならないという政策のもと、文部省から「戦時家庭教育指導要綱」を出すなどして、家庭での躾にまで微に入り細を穿って介入していた。むしろ、家庭の団らんを敵視し*6、せっかく学校や社会で教え込んでも家庭が児童の避難場所になって教育効果があがらないようではいけないとされていた*7。
 また、家庭教育を学校教育に従属・一致させるため、日常的には子どもに学校の出来事を漏らさず報告させ、両親がこれを傾聴してやることで学校と家庭の連絡も容易に行われるとされた*8。前述の岐阜県の「家の人と学校での出来事について話をする児童生徒の割合一〇〇%」を目指す施策などは、目的が同じではないのかと言いたくなる。
 文科省の学制百年史*9によれば、「戦時中の家庭教育は、特に学童の母を対象として、母の会の結成ならびに指導に重点を置くようになった。昭和一七年五月七日には「戦時家庭教育指導要綱」が文部省から発表されたが、さらに一八年度からは、女子中等学校・国民学校などに母親学級の開設が奨励され、母親たちが相携えて「学び」かつ「行ずる」機会たらしめようとした。」とある。
 この「戦時家庭教育指導要綱」は、「我ガ国に於ケル家ノ特質ノ闡明竝ニ其ノ使命ノ自覚」「健全ナル家風ノ樹立」「母ノ教養訓練」「子女ノ薫陶養護」「家生活ノ刷新充実」の五項目二五条からなり、天皇制家族国家観における家の維持がより強く打ち出されたものであった。つまり、母を中心とする家庭生活が国家戦時活動の源泉で、子女も皇国の後継者として育成することが求められた。それに伴い、大日本連合婦人会、「母ノ会」などの婦人団体や、「母ノ講座」や家庭教育指導講習会などを通して、戦争末期まで母親(将来母親になる女性も含めて)の教育が重視された*10。
 さきほど、岐阜県では、家庭教育学級の設置や家庭教育支援員、家庭教育リーダーの養成などを通じて、基本的な生活習慣、自立心、自制心、善悪の判断、挨拶及び礼儀、思いやり、命の大切さ、家族の大切さ、社会のルールについて、県が統一的な価値観を浸透させようとしていると書いた。戦時中も同様に、全国各地に家庭教育指導の場がもうけられ、皇国の後継者の育成が進められていたとすれば、ここに類似点を見いだすことは可能だろう。
五 さいごに
 共謀罪は平成の治安維持法といわれている。ならば、家庭教育支援法案は、平成の戦時家庭教育指導要綱ではないのだろうか。
 共謀罪が、国民がモノを言えなくする法律であるならば、家庭教育支援法案は、国民に言いたいモノすら考えさせない、疑う気すら起こさせなくするという法律である。両法案は従順な国民づくりのための両輪で、仮に両法案が成立すれば、戦時体制で政府が持っていた治安維持のための法的ツールをすべて安倍政権に与えてしまうと指摘する政治評論家もいる*11。ぜったいに阻止しなければならない。

*6 総力戦体制と教育―皇国民「錬成」の理念と実践(寺崎 昌男、戦時下教育研究会(編)1987年)
*7 真橋美智子教授「戦時下の家庭教育論―一九三〇年代後半以降を中心に―」(日本女子大学紀要人間社会学部第19号、Japan Women's University Journal Vol.19(2008))
*8 同
*9 文部科学省・学制百年史「第4章 戦時下の教育(昭和12年〜20年)、第8節 社会教育、1 社会教化活動の強化」
*10 前掲・「戦時下の家庭教育論」
*11 2017年1月18日「まるで戦時体制 自民が提出「家庭教育支援法」本当の狙い」(日刊ゲンダイデジタル)


北海道労働委員会労働者委員獲得に向けたたたかいの軌跡(三)

北海道支部  中 島   哲

六 第四一期任命訴訟(続き)
 1 第四一期訴訟の提起
   第四一期訴訟は、二〇一四年一二月一日付けの労働者委員七名の任命(任期二年)について、道労連、その傘下の道北勤医労、道東勤医労、札幌地区労連・ローカルユニオン結の三単組、及びこれらから推薦を受けた組合役員三名を原告として、二〇一五年三月一六日付けで札幌地裁に提訴しました。この訴訟は、札幌地裁民事第二部(谷有恒裁判長)に係属し、第七回期日まで開催しました。
   第四一期労働者委員の任命においても、第四〇期と同様、北海道の決定書には、産業分野別の人数比と地域別の人数比を組み合わせた表を作成し、その人数比との兼ね合いで委員を選任したような選任過程らしきものが記載されておりました。
   原告らと弁護団は、このような決定書になることを予想しておりました。第四〇期でひとたび選考過程を実質的に書き込んだ決定書を作成してしまった以上、今さら第三九期以前の「総合的に勘案」というマジックワードで済ませるブラックボックス型の決定書には戻れないでしょうし、選考過程を書き込む以上、第四〇期と違う選考形態を取るわけにもいかない(それで道労連系候補を排除したら、それだけで恣意的のそしりを免れないでしょう。)ですから、当然のことです。
 2 原告・弁護団が打った布石と北海道の自滅
   ここで、原告らと弁護団は事前に布石を打ちました。候補者の推薦段階で、これまで札幌の組合役員を中心に推薦していたものを、札幌、旭川、釧路から各一名ずつ推薦する形をとりました。また、産業分野別も、連合系が弱い医療・福祉分野別から二名推薦したのです。
   この戦略は見事に的中しました。組合員数について、産業分野別の人数比と地域別の人数比を組み合わせると、五人まで選任した段階で、残り二名について、少なくとも一名は札幌近郊(石狩地域)以外から選任せねばならず、また、少なくとも一名は医療・福祉分野から選任しなければならない状況になっていました。
   第四一期の労働者委員の推薦にあたって、札幌近郊(石狩地域)以外の組合から推薦された候補者は、道労連系から、旭川近郊(上川地域)の医療・福祉分野組合の候補者と、釧路近郊(釧路地域)の医療・福祉分野組合の候補者の計二名、連合系から旭川近郊(上川地域)の電気分野の候補者一名のみでした。
   また、全地域を通じて、医療福祉分野の組合から推薦された候補者は、道労連系の上記二名のみでした。
   すなわち、常識的に考えれば、誰がどう見ても道労連系から少なくとも一名が選任されるべき場面でした。
   ここで北海道はとんでもないことをしました。まず、残り二名のうち一名は、連合系から前記旭川近郊(上川地域)の電気分野の候補者を選任しました。そして、残り一名は、連合系の札幌近郊(石狩地域)の公務分野の候補者について、ケースワーカーとしての勤務歴が履歴書に記載されていた一事をもって、医療福祉分野の候補としての地位を兼ねているとして、この候補者を選任し、道労連系の候補者を排除したのです。
   さらに、第四〇期であれほど問題にして、ほぼ六七歳と高齢であるという理由だけで道労連系候補を排除した年齢について、第四一期の決定書はまったく問題にせずに、連合系で六六歳の候補者を任命していました。
   このように、第四一期の決定書は、常識的にどう考えてもおかしい内容に仕上がっておりました。
 3 第四一期判決  
   ここで、弁護団は勝負に出ました。通常、処分権者に広範な裁量権が認められる行政処分の取消を争う訴訟は、原告側が圧倒的に不利なのですが、弁護団は、本件においては北海道知事の裁量権の濫用・逸脱が認められることを前提に、早期に審理を進め、第四一期労働者委員の二年の任期が満了し、第四二期の任命がなされる二〇一六年一二月より前に判決を取りに行くことを決断しました。
   この方針を受けて、第四一期訴訟は、北海道の雇用労政課長と原告の尋問を行ったうえで、二〇一六年四月一一日に結審し、同年七月一一日に判決が言い渡されました。
   内容的には第三九期、第四〇期と同様に棄却判決でしたが、この判決は、「原告らの選任に消極に働く事情や、連合北海道系の候補の選任に積極に働く事情については、具体的といえないものについても考慮する一方で、原告らの選任に積極に働く事情については考慮していないのであって、極めて恣意的であり、連合北海道系と原告道労連系が七対〇となる選任をすることについての合理的説明があるとはいえない。」とし、裁量権の逸脱濫用があると判示しました。
   弁護団としては、慰謝料請求を認めるべき段階まで来ていると考えており、本気で損害賠償請求について、たとえ一万円であっても認容する判決を得ることを狙って訴訟を遂行していたので、その意味では残念でしたが、北海道知事の任命処分について、「極めて恣意的」とまで踏み込んで言及した点で、第四一期判決はいわば北海道にとどめを刺した判決であると言えると思います(なお、この判決は、地裁判決ながら裁判所の裁判例情報ウェブサイトに収録されています。)。この判決について原告らは控訴せず、確定しました。(続く)


いすゞの非正規切りとの八年間のたたかい(上)

東京支部  鷲 見 賢一郎

一 非正規労働者約一四〇〇人の全員首切りと労働組合の結成
 いすゞ自動車株式会社(以下「いすゞ」といいます)は、リーマンショックの中で、二〇〇八年一一月一四日、各派遣会社との労働者派遣契約を中途解約し、栃木工場の二六九人の派遣労働者、藤沢工場の五四三人の派遣労働者、合計八一二人の派遣労働者全員を解雇等に追い込みました。次いで、いすゞは、一一月一七日、栃木工場の一五五人の期間労働者、藤沢工場の三九八人の期間労働者、合計五五三人の期間労働者全員に対して、解雇年月日を二〇〇八年一二月二六日とする中途解雇の予告を通知しました。以上を合計すると、栃木工場で四二四人、藤沢工場で九四一人、合計一三六五人の非正規労働者の全員首切りです。
 いすゞの非正規労働者らは、一二月三日、全日本金属情報機器労働組合(JMIU)いすゞ自動車支部を結成し、非正規切り反対のたたかいに立ち上がりました。
二 期間労働者のいすゞの中途解雇に対する仮処分のたたかい
 栃木工場の二名の組合員は、二〇〇八年一二月四日、宇都宮地方裁判所栃木支部に、解雇予告効力停止及び賃金仮払い仮処分を申し立てました。藤沢工場の六名の組合員は、一二月九日から同月二四日までの間に、横浜地方裁判所に、解雇予告効力停止及び賃金仮払い仮処分を申し立てました。このような中で、いすゞは、一二月二四日、期間労働者五五三人全員に対して、解雇予告を撤回し、労働契約の合意解約を申し入れ、これに応じない労働者に対して、契約期間満了日まで四〇%の賃金カットを伴う休業命令を発令しました。
 栃木工場の二名の組合員、藤沢工場の一名の組合員は、賃金カットされた四〇%の賃金の仮払いを求めて、解雇予告効力停止及び賃金仮払い仮処分の申立手続を続行しました。栃木工場の一名の組合員は、二〇〇九年一月一九日、宇都宮地方裁判所栃木支部に、賃金仮払い仮処分を申し立てました。
 宇都宮地方裁判所栃木支部は、二〇〇九年五月一二日、賃金カットを違法とし、カット賃金の仮払いを命ずる、三名の組合員の申立を全面的に認容する仮処分決定(労働判例九八四号五頁以下)を出しました。リーマンショックによる減産を理由とする非正規切りに対する初の司法判断であり、非正規切りとたたかう全国の労働者を励ます勝利決定です。横浜地方裁判所は、七月二二日、カット賃金の仮払いを請求する権利は認めましたが、保全の必要性を認めず、一名の組合員の申立を却下する不当決定を出しました。
三 派遣労働者の各派遣会社の解雇に対する仮処分等のたたかい
 栃木工場、藤沢工場あわせて九名の組合員が、賃金仮払い等を求めて、九件の仮処分と二件の労働審判をたたかい、仮処分認容決定を得たり、和解解決をしたりしました。
 そのうちの一名の組合員は、二〇〇八年一二月二六日、横浜地方裁判所に、株式会社ニューレイバーに対して、地位保全及び賃金仮払い仮処分を申し立て、二〇〇九年三月三〇日、仮処分認容決定(労働判例九八五号九一頁以下)を得ました。また、別の一名の組合員は、二〇〇九年一月六日、宇都宮地方裁判所栃木支部に、株式会社プレミアラインに対して、地位保全及び賃金仮払い仮処分を申し立て、四月二八日、仮処分認容決定(労働判例九八二号五頁以下)を得ました。
 これらの決定は、リーマンショックによる不況を理由とする派遣会社の解雇に対する初の司法判断であり、非正規切りとたたかう全国の労働者を励ます勝利決定です。(続く)


限定正社員、非正規従業員一五名が賞与等の不支給措置の是正を求めて提訴

兵庫県支部  吉 田 竜 一

一 三月一五日、全国農業協同組合連合会が七五・六%を出資する科学飼料研究所の龍野工場で働く年俸社員(限定正社員)と非正規の嘱託契約社員一五名が、一般職コースの正社員には支給されるが年俸社員、嘱託契約社員には支給されない賞与、家族手当、住宅手当、昼食手当について、平成二五年一二月以降の差額相当額と弁護士費用約八三〇〇万円の支払を求める訴訟を神戸地裁姫路支部に提起した。
二 科学飼料研究所龍野工場では主にプレミックスと呼ばれる家畜飼料が製造されている。
 龍野工場の生産ラインではかつては専ら派遣社員が業務に従事していたのであるが、平成二二年四月、科学飼料研究所は、当時の労働者派遣法のもとでの直接雇用義務を果たすために、希望する派遣社員を正社員として直接雇用した。
  努力義務に過ぎないとされていた当時の労働者派遣法の定める直接雇用義務のもとで、派遣社員を正社員として直接雇用した対応自体は評価されてよい。
  しかし、社員を総合職コース、専門職コース、一般職コースに区分し、一般職コースを、「限定された一定の職務で、一般的な職務知識・技術・技能・経験等にもとづいて、経営組織上の定型的・補助的業務を担当するとともに、転居を伴う転勤がないコース」と定義している科学飼料研究所のもとでは、派遣社員を正社員として直接雇用するのであれば、これらの者を一般職コースの社員として直接雇用するのが当然のことであった。
  ところが科学飼料研究所は、直接雇用した派遣社員を、業務内容も人材活用の仕組みも一般職コースの正社員と同一であるのに、年俸社員という別枠の正社員として雇用し(過去、現在を通じて年俸制の社員は元派遣社員以外には誰もいない)、年俸社員には総合職コース、専門職コースだけでなく、一般職コースの正社員にも支給される賞与、家族手当、昼食手当、住宅手当を不支給としてきた。
その結果、直接雇用されてから勤続七年が経過した年俸社員である原告七名の年収は、高卒で勤続二年目、三年目の一般職コースの社員よりも低く、同じ勤続年数の一般職コースの社員よりも基本的に年収で約一〇〇万円、率にして三割程度低いものとなっている。
三 また、派遣社員で働いていた一人の原告は、派遣社員時代に交通事故で長期欠勤したことを理由に正社員としてではなく嘱託契約社員として直接雇用され、年俸社員として直接雇用された原告二名はその後に定年を迎えて嘱託契約社員として再雇用された他、原告五名は最初から嘱託契約社員として科学飼料研究所に採用され、契約を更新し続けているが、嘱託契約社員として働く原告らの業務の内容、人材活用の仕組みは年俸社員、さらには一般職コースの正社員と同一であるが、嘱託契約社員にも賞与、家族手当、昼食手当、住宅手当は支給されておらず、その結果、嘱託契約社員の年収も一般職コースの正社員と比較して、年間で一〇〇万円以上、率にして三割以上低いものになっている。
四 非正規社員については、労働契約法二〇条が期間の定めを理由とする不合理な差別を禁止しているところ、嘱託契約社員と一般職コースの正社員との間の業務内容、人材活用の仕組みが同一である以上、嘱託契約社員に対する賞与等の不支給は労働契約法二〇条に違反するものとして違法である。
  限定正社員については労働契約法二〇条のような規定はないが、正社員に対する法的保護が非正規社員よりも薄くなるというのは背理であり、一般職コースの正社員と業務内容、人材活用の仕組みを同じくする年俸社員に対する賞与等の不支給は、憲法一四条、労働契約法三条二項、さらには公序に違反するものとして、やはり違法の評価を免れるものではない。
五 周知のとおりハマキョウレックス事件において大阪高裁は、非正規労働者に対する昼食手当(給食手当)等の不支給は労働契約法二〇条の禁ずる不合理な差別であると判断した。
  もっとも同判決は住居手当の不支給については、正社員には転勤があることを理由に不合理な差別ではないと判断しているのであるが、本件では一般職コースの正社員にも転勤はないのであって、住宅手当、家族手当の不支給も当然に不合理な差別であると考えられる。
六 一方、本訴における賞与の請求額は、弁護士費用を除く請求額の約八六%を占めており、賞与の請求が本訴の中核をなしているといってもよいところ、賞与について、平成二八年二月二〇日に「働き方実現改革会議」が発表した「同一労働同一賃金ガイドライン案」は、会社の業績等への貢献に応じて支給される賞与について、有期労働者に同一の支給をしないことは問題があると述べているのであるが、厚生労働省のホームページには、「ガイドライン案は、現時点では『案』であり、今後、関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて、最終的に確定され、これから検討される改正法案の施行時期に合わせて施行される予定です。このため、今回のガイドライン案を守っていないことを理由に、行政指導等の対象になることはありません」ということが、わざわざ書かれている。
また、前述したハマキョウレックス事件の大阪高裁判決は賞与については何も述べていない。
しかし、「働き方実現改革会議」のメンバーの一人である水町勇一郎教授が、平成二三年四月に発表した論文「『同一労働同一賃金』は幻想か?―正規・非正規労働者間の格差是正のための法原則のあり方―」の中で、「会社への貢献に対して支給される給付(賞与など)については、会社への貢献度の違いが『合理的な理由』となりうる。逆に原則からみると、この給付の支給や算定にあたって考慮されている会社への貢献の点で違いがなければ、正規・非正規の形式を問わず、当該給付を同様に支給しなければならない」と述べているとおり、業務内容も同一で、人材活用の仕組みも同じであるならば、限定正社員、非正規労働者に対する賞与の不支給は、現行法の解釈としても明らかに不合理な差別で違法であると言わなければならない。
七 団の「安倍『働き方改革』を批判し、働くルールの確立を要求する意見書」は、安倍「働き方改革」の謳う「同一労働同一賃金の実現」が、「労働者全体の賃金の低位平準化」「正規労働者と非正規労働者の格差の固定化」をもたらすものではないかということを正しく指摘しているが、それだけでなく、ガイドライン案では正規・非正規間の同一労働同一賃金を言うだけで、正社員間の差別については何ら言及されていない。 
 しかし、同一労働同一賃金原則が、正規・非正規間だけでなく、正社員間でも実現されなければならない原則であることはいうまでもなく、コース区分を利用した正社員間の差別は放置されるというのであれば、企業は、非正規労働者は減らして、低賃金が許容される限定正社員を活用することになることは必至である。
 そのような事態が生じることのないよう、非正規社員に対してだけではなく、正社員間においても不合理な差別は許されないのだということを明らかにし、雇用形態や正社員内部のコース別管理による差別(限定正社員制度を悪用した差別)を許さない、真の同一労働同一賃金を実現するための一助となる訴訟となるよう、原告とともに奮闘する決意である。


第三回安倍「働き方改革」批判検討会のご報告

埼玉支部  上 田 月 子

一.日時
 二〇一七年三月二二日、一八時三〇分から二〇時四五分まで、全労連会館三階会議室において、全労連・自由法曹団・労働法制中央連絡会の主催で、第三回安倍「働き方改革」批判検討会が開かれた。参加者は労働組合関係者、弁護士等三七名で、うち団関係者は一四名であった(団員一二名、修習生一名、専従事務局一名)。
二.報告
 今村幸次郎前幹事長が開会あいさつし、引き続き司会も務めた。報告は六件あった。
(1)報告一 最初の報告は、伊藤圭一全労連雇用・労働法制局長から、「安倍『働き方改革』をめぐる情勢と課題」についてなされた。休日労働が時間外労働に含まれていない点について、批判が強まっているとのことであった。
(2)報告二 次の報告は、鷲見賢一郎労働法制改悪阻止対策本部長から、「雇用の請負・委託化など安倍政権の労働政策と私たちの対案・要求」についてなされた。多様な非正規労働者が生み出されるため、非正規をスタンダード化し、非正規という言葉を死語にすることがもくろまれていることなどについて語られた。
(3)報告三 続いて、菊池和彦自交総連書記長から、「ライドシェアによるタクシー産業における雇用破壊」について報告を受けた。「雇用によらない働き方」を広げる先兵としようという意図が感じられるとのことだった。
(4)報告四 北口明代生協労連委員長からは、「同一(価値)労働同一賃金の産別政策と実践」について報告を受けた。生協の職場では、非正規化・委託化がすすんだ結果、職場の非正規率は非常に高くなっているとのことだった。
(5)報告五 青池香子全労連・全国一般書記次長からは、「限定正社員制度による労働条件引き下げ攻撃とのたたかい」について報告を受けた。丸八真綿の子会社の話(完全歩合制で、布団が売れないと給料マイナス)が印象的だった。
(6)報告六 プログラムにはなかったが、一般社団法人ホワイト認証推進機構広報担当であり、ホワイト弁護団代表の大川原団員から、「『ホワイト認証推進機構』設立記者会見について」の報告もなされた。「ホワイト認証」とは、労働法制等を遵守している「ホワイト企業」であることを証明する制度である。
三.質疑と意見交換
(1)質疑も意見交換も、概ね活発であった。特に印象に残っているものは以下のとおりである。
(2)今野団員(東京支部)からなされた、日弁連オランダ視察の話。タクシー配車業者から、儲かってる儲かってると自慢話を聞かされた話(報告三と関連)、報告四に関連するオフレコ話(ここに書けないのが残念)など、おもしろかった。
(3)報告六の報告者から、報告五の報告者に対してなされた、「なぜ、彼らは転職しないんですか?」という質問。ブラック企業など見限って転職すればいいのに、というホワイト弁護団員らしい質問であったが、組合員というものは、ブラック企業の中でもホワイト化しようと努力するものなのだというのが回答であった。
(4)共謀罪の危険性についてもアピールするのが当検討会の恒例だが、大好評のあすわかのカワイイチラシ「『テロ等準備罪』とか言っちゃって!共謀罪で、あなた(イッパンジン)も私も狙い撃ち!?」も配布された。
(5) 参議院議員である山添拓団員も日本共産党から参加しており、一言挨拶を求められたが、遠慮していた。今月は、元ビギナーズ・ネット共同代表として裁判所法改正案を成立させてから、「安倍政権の労働法制大改悪に反対し、働くルールの確立を求める四・二六学習決起集会」@全労連会館二階ホール(一八時三〇分開始)にまた参加していただきたい。


倉敷民商弾圧事件・禰屋裁判不当判決の報告

岡山支部  岡 邑 祐 樹

一.倉敷民商弾圧事件とは
 倉敷民商弾圧事件は、全国商工連合会(全商連)加盟の倉敷民主商工会(倉敷民商)の元会員の法人税法違反の税務調査をきっかけとして、倉敷民商の事務局長と事務局次長が税理士法違反で逮捕勾留の後に起訴され、元会員の担当であった事務局員(禰屋町子さん)が税理士法違反と法人税法違反で逮捕勾留の後税理士法違反と法人税法違反幇助で起訴された事件である。事務局長と事務局次長の事件は併合され、現在最高裁に係属している。禰屋さん事件は、二〇一四年二月から岡山地方裁判所で審理されてきたが、二〇一七年三月三日、弁護団一〇名が出席し満席の傍聴者が見守る中、禰屋さんに懲役二年執行猶予四年の不当判決が言い渡された。
二.法人税法違反幇助
 弁護団は法人税法違反幇助について、えん罪であって(1)そもそも正犯である倉敷民商会員に脱税の故意がなく法人税法違反は成立しない。(2)禰屋さんに脱税の故意も幇助の事実もないと主張し立証してきた。
 これに対して、判決は基本的に検察官の主張をなぞるだけの事実認定に終始し、検察官の主張の計算間違いや誤記についてわざわざ判決で訂正するなど不公平きわまりないものであった。加えて、本犯である元会員を告発した査察官の報告書を鑑定書として証拠能力を認め、さらに信用性も認めた上で、脱税の事実を認定した。これは前代未聞の判断であり、必ずや控訴審もしくは上告審でその違法性が認められると信じる。
三.税理士法違反
 弁護団は税理士法違反について、(1)本件起訴は倉敷民商に対する弾圧であり公訴権の濫用にあたる。(2)禰屋さんの行為は税理士法違反の構成要件に該当しない。(3)禰屋さんの行為には可罰的違法性がない。(4)本件を有罪とすることは倉敷民商の結社の自由を侵害する、と主張し立証した。ところが、判決は、弁護側の主張をまともに検討しない一方で、申告納税権が憲法上認められないのは明らかであると断定した。これは、倉敷民商事務局長と事務局次長の税理士法違反が問われた事件の高裁判決が申告納税制度は「国民主権原理を謳う我が国の憲法上の要請からも十分に尊重されるべきである」としたのと比較して、著しく後退した判断である。また、この事件の岡山地裁判決では、倉敷民商は中小商工業者の営業や生活の保護を目的とする団体であるとしていたのに、本判決では税理士法違反の組織性は顕著などとして、民商敵視の姿勢をあらわにし、その不当性は明らかである。
四.法廷への県警の導入
判決の言い渡し後、傍聴者は口々に判決を批判しながら順次法廷外に移動したが、数名の傍聴者は、退出する順番を待ちつつ、「不当判決!」などと江見裁判長の言い渡した判決に抗議する声を上げていた。これに対し、江見裁判長は抗議の声を上げる数名の傍聴者に対して「○○の人、退廷を命じます」と何回か繰り返した。そのあげく、あろうことか、別室に待機させていた四〇名近くの岡山県警の制服警察官を法廷内に入れ、傍聴者は追い出されるように裁判所を後にした。
裁判所の民商敵視の姿勢は、判決言い渡し後にも浮き彫りとなった。
五.最後に
弁護団は、当然ながら即日控訴を申し立てた。今後は広島高裁岡山支部での闘いとなる。民商の事務局長と事務局次長の裁判は最高裁に係属中である。全国の支援の皆様に、これまでのご支援に感謝するとともに、引き続き、さらなるご支援をお願いします。

(倉敷民商事件弁護団 事務局長)


マーシャル諸島・マジュロでのビキニデー

埼玉支部  大久保 賢 一

 二月二六日から三月三日の日程で、マーシャル諸島共和国の首都マジュロに行ってきた。行きも帰りもグゥアムで乗り継ぎ、ミクロネシア連邦のいくつかの島を経由するので、マジュロに滞在したのは、二七日の夜から三月二日の朝までの短い時間だった。マーシャルはグゥアムとハワイの中間の北太平洋にあるいくつかの環礁と島々からなる、人口五万数千人の共和国である。私たちが知っているアメリカが水爆実験を行ったビキニ環礁は、マーシャルの一地域である。
 マーシャルの三月一日はNuclear Victims Remembrance Dayとして国民の休日である。もちろん、アメリカの核実験による被害を忘れないための日である。当日、子どもたちを先頭にパレードが行われ、大統領(ヒルダさんいう教育学の学位を持つ女性)はじめマーシャルの要人や、アメリカや日本の外交官が出席する式典が開催された。私たち日本からの参加者一八名(井上啓・相曽真知子・上柳敏郎各団員を含む)も、パレードと式典に参加した。大統領の演説は、「核の遺産」を「核の正義」へと呼び掛けるものであった。八月六日・九日の主催者は市であるが、マーシャルの取組みは国家挙げてのものなのである。
 日本でも、三月一日はビキニデーとされ、静岡県焼津市で、市民集会やビキニの核実験の被害者であった久保山愛吉さんの墓前祭などが開かれている。この行事は、焼津市の主催ではないし、もちろん政府も関与していない。今年は、マーシャルの元上院議員も参加し「私たちは、被ばく者として平和と正義の闘士として活動してきました。将来の世代に核のない世界の実現という希望を与えるためです。」と発言している。ちなみに、私が初めて参加した反核平和にかかわるイベントは、ビキニデーだった。かれこれ五〇年前の記憶である。
 私が、マーシャルに行きたいと思ったのは、そんな個人的な思い出もあるけれど、アメリカに依存して国家運営を行っているにもかかわらず、アメリカも含む核兵器国九か国を被告として、国際司法裁判所に、核兵器廃絶交渉を開始しないことの違法性の確認と、交渉の早期開始の義務付けを求めて提訴した国のことを知りたいと思ったからであつた。
 マーシャル政府が、二〇一四年四月に、このような訴えを起こしたことはあまり知られていない。日本反核法律家協会は、同年七月、在日マーシャル大使館を訪ねて、この提訴を歓迎し、支援する旨のステートメントを届けた。二〇一六年三月には、焼津のビキニデーに参加していたデブルーム外務大臣(当時)に、激励の手紙を手渡すことなどをしていたのである。
 この裁判は、昨年一〇月、原告と被告(管轄権の問題で、最終的な被告は、英国、インド、パキスタンの三カ国)の間に「紛争が存在しない」として却下されてしまった。
 日本反核法律家協会は、この判決は国際司法裁判所規定の解釈を誤ったものとの批判声明を発している。私は、この提訴は、「核兵器のない世界」を求めるうえで、貴重な役割を果たそうとしたものと評価している(このあたりの経緯は、反核法律家協会のHPを参照してほしい)。
 私は、マーシャルに行ったらこの提訴の主導者だったデブルーム元外相に会いたいと思っていたけれど、それは彼の健康状態が悪くて実現しなかった。けれども、核実験被害者の七人の女性たちの話を聞く機会はあった。彼女たちは、ビキニ環礁の東側にあるロンゲラップ環礁の出身者で「死の灰」を浴びた人たちである。彼女たちに政府が国際司法裁判所にこのような裁判を起こしているかどうかを聞いたら、二人は知っていた。そして一〇〇パーセント賛成だと言っていた。マーシャルでは政権交代があり、前政権の提訴をスタンドプレーとみるような人もいると聞いていたので、この二人の答えはうれしかった。
 合わせて、今、国連で「核兵器禁止条約」の交渉が始まろうとしているけれど、そのことを知っているかを訊ねたところ、一人が「ラジオで聞いたことがある」と言っていた。私より何歳か年上の校長先生の経験もある人だった。
 「死の灰」を浴び、いまだ故郷の島に帰れない生活をしている人たちでも、核兵器をめぐる政府の行動や国際社会の動向について、十分な情報を提供されているわけではないようである。かくいう日本でも、広島・長崎の記憶は、過去の出来事になりつつあるし、政府は核兵器に依存し続けている。国連での「核兵器禁止条約」の交渉開始を、核兵器廃絶の歴史的チャンスにするためには、まだまだ愚直な努力が求められているようである。

(二〇一七年三月一五日記)