自由法曹団通信:1598号      

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加藤 健次 ※共謀罪反対特集(5)
安倍政権に政権を担う資格はない
できることをやり尽くして参議院で
共謀罪を廃案に!
弓仲 忠昭 共謀罪阻止の闘いと弁護士会
小池 振一郎 共謀罪の毒性
土居 太郎 「千葉県と共謀罪」
西田 穣 *五月集会特集*
群馬・磯部五月集会のご報告
池田 賢太 現実主義の陥穽〜群馬・磯部五月集会の憲法・平和分科会に参加して〜
諸富 健 安倍改憲発言を受けて
〜国民投票も見据えた運動の構築を
齊藤 彰 分科会に参加して感じたこと
河合 成葉 活動交流会に参加して
後藤 富士子 自衛隊は「国旗」を掲げない
――「日の丸」と「旭日旗」
盛岡 暉道 横田で行動し、沖縄に行く(1)
鶴見 祐 策 松川資料のユネスコ世界遺産登録申請について



※共謀罪反対特集(5)
安倍政権に政権を担う資格はない
できることをやり尽くして参議院で
共謀罪を廃案に!

幹 事 長  加 藤 健 次

 団員の皆さん、五月集会の熱心な討論、お疲れ様でした。五月集会最終日の二二日夜には、国会議員会館前の共謀罪反対の行動に地方の団員の姿も見られ、大きな励ましとなりました。
 五月二三日、与党は衆院本会議で共謀罪法案の採決を強行しました。そして、五月二九日の参議院本会議で参議院での審議が始まりました。
 政府・与党は、限られた残りの会期の中で、何が何でも共謀罪を成立させようと躍起になっています。しかし、私たちの運動は情勢を変えています。
 全国の運動によって、共謀罪の危険な本質が国民の間に知られるようになりました。他方、政府の不誠実極まりない答弁と強権的な議事運営が国民の批判を生んでいます。共同通信の世論調査(五月二〇、二一日)では、共謀罪について「政府の説明が不十分」という意見が実に七七%に昇っています。
 五月一八日には、国連のプライバシー権に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏が、共謀罪法案に対する懸念を示す書簡を送付しました。これに対し、安倍政権は、この書簡に対して誠実に応答するどころか、「抗議」するという、国際的に恥ずべき対応をしました。
 さらに、加計学園疑惑では、安倍首相の関与を示す文書を暴露した前川前事務次官が記者会見を行い、「行政が歪められた」と告発し、証人喚問に応ずることを表明しました。ところが、安倍政権は、前川氏に対する個人攻撃に終始するばかりで、証人喚問にも応ぜず、安倍首相自身による説明も行おうとしていません。
 安倍首相は、何よりもまず自らの疑惑に対して事実の解明と説明を行う義務を果たすべきです。また、特別報告者の示した懸念に対して誠実に回答すべきです。当然やるべきことをやらないでおいて、共謀罪をごり押しすることは絶対に許されません。
 都合の悪い意見には全く耳を傾けず、力尽くで無理を通そうとする。政治と行政を私物しても恥じるところがない。こんな政権に共謀罪を与えるわけにはいきません。
 この間の運動によって、法案の衆議院通過は約一か月遅れ、会期末の六月一八日までわずかです。会期を延ばせば、安倍首相自らの疑惑を追及される。七月二日には東京都議会選挙が行われる。追い詰められているのは、安倍政権の側なのです。この点にぜひ確信を持ち、「安倍政権打倒!共謀罪反対!」の声を大きく広げていきましょう。
 やれることを全てやりきりって、参議院で共謀罪の廃案を勝ちるために奮闘することを心から呼びかけます。
■全国各地で以下のような行動に取り組もう!
(1)リーフレット『これが共謀罪です!あなたも逮捕されるかも』はすでに三五万部普及しました。どんどん普及しましょう。
(2)共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会(この度「あすわか」が加入して八団体になりました)が『今も行われている市民監視の実態 事例集』、『共謀罪法案 政府・自民党の説明 一〇の疑問とウソ』を作成しました(団のホームページに掲載)。
 地元議員とマスコミへの要請などに活用しよう
(3)各地で弁護士会、市民とともに宣伝、学習会、集会を行おう
(4)共謀罪に反対する統一署名を集めよう


共謀罪阻止の闘いと弁護士会

東京支部  弓 仲 忠 昭

はじめに
 与党は、共謀罪法案を衆議院で強行採決した後も、森友・加計疑惑の徹底究明を求める世論を無視して、参議院の本会議及び法務委員会での共謀罪法案の審議入りが決まった。会期末に向けての法案廃案を巡る攻防も山場を迎え、市民・労働者・法律家らの反対運動も大きく盛り上がり、立憲野党の共闘も進みつつある。尚、参議院での共謀罪法案の審議入りに議員運営委員会で民進党が賛成した経緯は不明ではあるものの民進党の参議院国対筋や民進党執行部内に共謀罪反対に徹しきれない部分の存在がほの見えるなど、共闘を誠実に追及しつつも民進党へ質すべき点は質すことも必要であろう。
一 日弁連の状況
 共謀罪法案をめぐっては、「盗聴拡大」や「司法取引」という警察の望む「捜査手法の拡大」を受け入れ日弁連も賛成・推進した刑訴法等改悪法とは異なり、日弁連に共謀罪法案対策本部があり繰り返し、学習・反対等の市民集会を開催した。また、日弁連は、二〇一六年八月二六日のマスコミ報道以降、共謀罪反対の会長声明を三度出したほか、国会上程反対の意見書も公表し、反対の意思を明確にしている。しかし、一部会員や理事者内に容認論もあり、日弁連執行部をあげて市民の反対運動との連帯に邁進する状況にはなってはいない。直近の日弁連主催の法案反対市民集会(四月一八日)は六〇〇人の参加で成功したものの会長出席は未だ実現していない。なお、日弁連としての市民らの開催する反対集会等への連帯・参加については、強制加入団体として「政治活動」と一線を画す必要があるなどとして、現状では、残念ながら消極姿勢に終始している。
 密告・監視社会への道を許さぬ市民との連帯の輪を広げつつ、各単位弁護士会での闘いを更に盛り上げ、日弁連執行部を市民の反対運動との連帯推進に本気にさせよう。
二 弁護士会の反対運動
(一) 単位弁護士会
 共謀罪法案反対の会長声明が、上記マスコミ報道以降二〇一七年五月一五日の高知弁護士会までに、五二単位弁護士会中五二弁護士会全部(内五会では二回。一会では三回。)で出された。問題点を指摘しつつも、残念ながら慎重検討・慎重審議を求めるにとどまる第一東京弁護士会の会長声明(最後から二番目の二〇一七年五月一一日)を除いては、すべての会の声明がいわゆる共謀罪の創設・国会上程に反対し若しくは法案の廃案を求めるものであった。
 衆議院での審議中に、とにもかくにも全弁護士会での会長声明が出されたのは、独自の反対運動の展開と合わせ、各地の団員の奮闘の結果といえよう。
(二) 第一東京弁護士会の現状
 私が所属する第一東京弁護士会は、会員にも執行部にも共謀罪賛成の立場の人がおり、最後まで会長声明の出ない会の一つであった。
 有志二二名で会長宛要請書を提出し、執行部と面談するなどし、反対の会長声明や反対する街頭宣伝への参加を求めた。ようやく会長声明は出たものの、「反対」とはいわなかったし、街頭宣伝などへの執行部の参加は否定的な回答しかなかった。
 会として、日弁連の共謀罪反対の方針に正面からは反対できず、東弁が共催を呼びかけた三月二八日と五月一二日の有楽町、池袋、北千住での駅頭宣伝には共催を決めたものの、執行部からは誰も参加はしなかった。上記二回の池袋での駅頭宣伝には、弓仲を含め一弁会員二名(自由法曹団員)が参加した。三月には一弁事務局から一弁のタスキを借りて参加できたが、五月には、幟も含めて借りようとしたところ、理事者判断として、執行部の参加しない宣伝には一弁の幟やタスキは貸せないとの不当な対応を受けた。対応した副会長は、「政治活動」に深く入りすぎないようにせねばならず、日弁連や二弁の方針では政権転覆活動となりかねず、一弁の立場とは違う等という。こんな一弁の会長が日弁連の副会長として会長を補佐する。共催を決めはするが、執行部は参加せず、参加会員への幟とタスキの貸与を「政治活動」への懸念で拒否する。こんな筋の通らない話はあり得ない。会内での是正に努力したい。
おわりに
 全単位会での会長声明や反対運動の発展は、日弁連執行部の共謀罪反対の姿勢をより強固にするのに役立とう。共謀罪反対の市民と立憲野党の運動への連帯・共同に日弁連・弁護士会も積極的に足を踏み出すことを求めよう。参議院で必ず共謀罪法案を葬り去ろう。


共謀罪の毒性

東京支部  小 池 振一郎

1 一般人も組織的犯罪集団とされる
 マンション建設現場前の歩道でのぼりを立てた反対運動の会会長が他の口実で逮捕されたという(本年五月二九日付朝日新聞朝刊)。この会は、組織的威力業務妨害を共同の目的とする「組織的犯罪集団」と見なされ得る。それを計画した二人以上の者は、組織的威力業務妨害共謀罪に問われる恐れがある。
 法人税法違反について会社の経理部門が組織的犯罪集団と見なされ、それを計画した会社役員と経理担当者が法人税法違反共謀罪に問われる恐れがある。
 座り込みをすれば組織的威力業務妨害罪に問われる恐れがあることは、高江の山城議長の威力業務妨害罪による逮捕・起訴が示している。座り込みに参加した人たちは組織的犯罪集団と見なされ、複数者がその座り込みを計画すれば、組織的威力業務妨害共謀罪に問われる。 
 スクープ報道の裏付けが弱ければ、組織的虚偽風説流布・偽計信用棄損・威力業務妨害罪に問われ、その記者・編集者たちが組織的犯罪集団と見なされる恐れがある。それを企画した編集会議は、それらの共謀罪に問われる。その企画が団体の「不正権益」(団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力)のために計画したものであれば、これらの共謀罪に問われる恐れがある(法案六条の二第二項)。
 この人たちが組織的犯罪集団とされるから、一般人が対象となる。
 ただ、このようなケースが現在それほど犯罪に問われているわけではない。実は、一見構成要件に該当するように見えても、実際は、どのような行為態様か、相手方の出方とそれに対する対抗手段、正当行為といえるかなど、「諸般の事情を考慮に入れて、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定し」(最高裁判決)、総合的判断がなされる。一義的に犯罪になるわけではない。
 ところが、共謀罪は、実行前の計画段階で犯罪が成立するから、その計画がどの程度発展するか、計画者すらわからない。実際に比較衡量して社会通念上許されるか総合的判断することができない。実行前の段階だから判断材料がない。ここに、捜査当局が違法と見なして組織的犯罪集団と決めつける余地が生まれる。不確定な将来のことについて、捜査側の決めつけに異議を唱えても水掛け論になる。
 つまり、今までは実行行為そのものが歯止めになっていたから犯罪に問われないが、共謀罪ではその歯止めがないから、捜査側が違法とする恣意的認定がまかり通る恐れがある。
 いま手元に、沖縄基地反対運動体の「新基地建設の強行を阻止しよう」「ブロック投下を止めよう」というビラがある。法案が成立すると、実力で阻止行動に出るのか、実行行為がないのでわからない段階で、このビラだけで組織的威力業務妨害共謀罪に問われ得る。
 組織的犯罪集団を定義づけている諸外国のように、日本でも、本当に文字通りの組織的犯罪集団対策に限定するつもりがあるなら、破防法適用団体や指定暴力団、特定秘密保護法上のテロリズム定義規定のように、法文上限定することが可能である。「集団の組織者が○○罪の前科前歴がある集団」などと限定することもできる。にもかかわらず法案には全く限定がない。もともと限定するつもりがなく、広く市民に網をかぶせる狙いである。
 ドイツ刑法は、犯罪を目的として団体を結成した者や参加者を処罰するが、その犯罪目的は第1次的目的である必要があり、二次的目的に過ぎない場合には適用されない。ところが法案にはこのような限定もない。
 イギリスには市民警察の伝統がある。ニュージーランドには、警察の不祥事を取扱う別の警察組織がある。ところが日本には、警察を監督する行政機関がない。捜査機関の恣意的運用を防ぐシステムがない。
 そもそも条文の中に、「組織的犯罪集団」と銘打つ必然性は何もない。これまで三度廃案となった共謀罪法案は、単なる「団体」とされていた。そもそも「組織的犯罪集団」は枕詞に過ぎないから、そこに「テロリズム集団その他の」という枕詞を追加しても、条文の内容に何の変更もない。
二 共謀罪立証の特異性
 共謀罪は合意だけで成立するから、客観的証拠がない場合が通常である。準備行為という要件も、それが計画に基づくかどうか、その目的を評価しなければ意味がない。結局、合意の事実そのものを立証しなければならない。
 その合意自体があいまい、かつ、しばしば変遷するものであるから、いつの時点のどのような合意を捉えるか、きわめてファジーであるだけに、恣意的立証がまかり通る恐れがある。誰かが過激な発言をすればその部分を捉えられるところが、共謀罪の怖さである。
 言った、言わないを立証する方法は、盗聴しない限り、その場で聞いたという者の自白しかない。従って、共犯者の自白が不可欠で、これまで以上に強圧的な取調べが行われる。
 取調べに弁護人の立会いを認め、司法が独立している諸外国と比べて、「中世」とも揶揄される日本の刑事司法であるが、刑訴法改正により、盗聴対象が一般犯罪に拡大され、司法取引が導入された。証人に不利益な証拠としない約束で証言を強制する刑事免責制度が共謀罪にも適用され、共犯者の自白が強制される。共犯者(証人)の名前が弁護人にさえ匿名にされる証人秘匿制度もでき、警察のスパイかどうかの見極めもできなくなった。
 自白調書の任意性、信用性を争う場合、通常、客観証拠と自白の矛盾を突く方法がとられるが、共謀罪の場合は客観証拠に乏しく、争うことが困難になるだろう。
 共謀罪が成立したら、自白偏重に拍車をかける。どれほどえん罪が拡がるか、想像するだけで慄然とする。
 共謀の間接的な立証方法としては、これまでの団体の活動の積重ねで目的を立証し準備行為と合わせて推認するしかなく、団体員の内心ないし思想傾向、団体の性格などを日頃の活動から調査蓄積し、情報収集しておかなければならない。日常的な監視が不可欠である。
 ところで準備行為は、犯罪行為自体とは異なり、合意に基づく外部的行為(顕示行為=オーバーアクト)であって、「それ自体で法益侵害性(違法性)を基礎づけるような危険な行為であることを必要としないから」、単なる処罰条件に過ぎないとされる(曽根威彦・同月一八日日弁連集会資料)。いくら、政府が構成要件だと言っても、裁判所では処罰条件とされるであろう。従って、計画だけで、準備行為がなくても、捜索・差押、逮捕ができる。その脅しだけで十分に効果を発揮する。
 政府が共謀罪にこだわる真の理由は、法案が市民を監視、抑圧する格好の武器になるからとしか思えない。
 刑訴法・盗聴法改正が共謀罪をはるかに機能させる。共謀罪を廃案にしたこれまでとは異なる情勢であるが、共謀罪の毒性が知られ、今の内閣は平気で嘘をつくということが暴露され反対運動が大きく拡がれば、内閣の死命を制することにもなろう。


「千葉県と共謀罪 」

千葉支部  土 居 太 郎

一 連絡会の発足
 救援会千葉支部、秘密保護法廃止の会千葉支部(略称)及び自由法曹団千葉支部等で千葉県共謀罪連絡会を作りました。県内の共謀罪反対運動に意欲的に取り組む団体間の相互連絡や共同行動を図ることを目的としました。
 連絡会では、学習会の講師派遣を行うこと、各団体に共謀罪反対運動への参加について呼び掛けること、宣伝活動等を行っています。
 なお、同会の発足にあたり、三澤先生に講演を行っていただきました。
二 学習会
 学習会については、団員の弁護士も団員以外の弁護士も担当し、大いに盛り上がっています。共謀罪の問題は、刑法や刑事訴訟法の問題も絡み理解が困難です。いわゆる老舗の市民団体の方々でも、共謀罪の問題点を理解するのは簡単なことではありません。共謀罪の活動に取り組もうとは思うが、内容がよく分からないので教えて欲しいというご要望は多々ありました。
 学習会を一つのきっかけとして、共謀罪反対運動に取り組んだ団体もありました。学習会は、単に学習により広く市民が共謀罪の理解を深めるというだけではなく、運動の起点になるという効果も有するようです。
 私もそれなりの数の講義を担当しました。私の講義内容の流れをいうと、私は事例を出し、参加者に弁護士、検察官、裁判官のグループに分かれてもらい、本件事例の被疑者に逮捕状を請求できるかどうかを議論してもらいます。議論する中で、共謀罪のここが危険であるだとかここが理解できていないということ等が分かるとの感想をいただきました。
三 反対活動
 連絡会は、独自に街頭宣伝活動を行い、道行く人に訴えかけました。また、他団体の街頭宣伝に混ぜていただき、アピールウォークも行いました。さらに、六月一〇日に、連絡会が他団体と共同して、大規模なデモを行うことを計画しています。
 他にも、千葉県弁護士会の憲法委員会に所属している団員は、千葉県弁護士会としての街宣活動、共謀罪反対声明の作成及び議員要請等に関わりました。守川団員は、先日の投稿で同団員が発表していたとおり、歴代の千葉県弁護士会会長と連帯し共謀罪の廃案を求めるアピールを発表しました。
 団員は、場所を選ばず各所で連帯して、共謀罪反対のための運動を行っています。
 メーデーには団員一三人が参加し、団作成の共謀罪リーフレットを一五〇〇枚配りました。配りすぎて、別のイベントで用いるリーフレットが無くなり、若干トラブルになりましたが、それぐらい大好評のリーフレットでした。なお、トラブルについてはその日のうちに解決しました。
四 共謀罪の危険性
 共謀罪の最も恐ろしい点は、捜査の範囲が無限に広がっていくことです。共謀罪の捜査のため必要であるとさえいえば、あらゆる捜査が正当化されます。また、日常的行為を処罰することが可能であるため、あらゆる団体に対し、言いがかりをつけ処罰することが可能となります。
 我が県には木更津に陸上自衛隊駐屯地があります。同所はオスプレイの整備拠点とされており、住民の反対運動が今なお続いています。共謀罪が成立すれば、かかる運動に支障が出る可能性があります。
 我が県内及び国内の正当な民主運動が委縮することのないよう、共謀罪法案は絶対に阻止しなければなりません。
短いですが、以上が、千葉県での共謀罪反対の運動の概要です。

以上


*五月集会特集*

群馬・磯部五月集会のご報告

事務局長  西 田   穣

一 はじめに
 本年五月二〇日から二二日にかけ、群馬・磯部において、二〇一七年五月研究討論集会が開催されました。共謀罪法案が同月一九日に衆議院法務委員会にて採決された直後の五月集会ということで(なお、共謀罪法案は、同月二三日衆議院本会議にて強行採決されました)、極めて緊迫した情勢のもと、憲法、平和、人権を守るべく、全国から三八六名の参加者が集まり、経験交流と熱心な討論が繰り広げられました。
 詳細はおって団報にて報告しますが、取り急ぎ概略につき、ご報告します。

二 全体会(一日目)
 全体会の冒頭、群馬支部の野上真彦団員と大阪支部の辰巳創史団員が議長団に選出されました。荒井新二団長の開会挨拶に続き、群馬支部の小林勝団員(支部長)から歓迎の挨拶がありました。
 来賓として、地元群馬弁護士会会長釘島伸博氏、安中市市長の茂木英子氏(当日は、同市副市長の茂木一義氏が手紙を代読)、仁比聡平参議院議員(日本共産党)にご挨拶をいただきました。
 その後、加藤健次幹事長から、共謀罪法案を絶対に廃案にすべく団の全力をもって取り組むことが訴えられました。また、安倍首相の自衛隊明記発言を受けた改憲策動を打ち砕くべく、これまで以上の取り組みが必要であることが訴えられました。また、アベノミクスがもたらした経済的格差と貧困の問題、安倍「働き方改革」の問題、原発再稼働反対と原発被害者救済訴訟の現状と課題など、現在団が取り組んでいる重要課題についての基調報告と、分科会討論へ向けた問題提起がなされました。
 その後、立命館大学国際関係学部教授の君島東彦教授の記念講演がありました。

三 記念講演
 全体会では、立命館大学国際関係学部教授の君島東彦教授を講師に迎え、「六面体としての憲法九条―パックス・アメリカーナの黄昏に我々はどのように平和をつくるか―」と題した講演を行いました。君島教授は、冒頭、五月三日に安倍首相自身が語った改憲案が、与党内だけでなく、おおさか維新の会や民進党の一部にも受け入れられやすく、さらに、いわゆるリベラル派側の分断をも招きかねないという危機感を語られました。また、自らの学生との交流経験をもとに、特に若年層を中心に、自衛隊擁護論をベースとした、自衛隊明記論に対する支持が強いことも指摘されました。その上で、憲法九条は、アメリカ(ワシントン)、沖縄、大日本帝国、東アジア、日本の民衆、世界の民衆という六つの視点から見ることによって理解ができると指摘し、その多面的な意義に言及した上で、憲法九条が、武力と戦争の廃絶という長期的目標を視野に入れて、漸進的に平和を実現していく役割を担っている点を指摘し、九条含め憲法を守るとの立場を明確に語っていただきました。情勢と世論、特に若手の意見などを踏まえた君島教授の講演は、憲法改悪絶対反対を掲げ日々たたかう団員にとって、理論・現実両面において刺激的なものであったと思われます。君島教授には、憲法・平和分科会にも参加いただき、最初の一時間を質疑応答の時間としましたが、一時間ひっきりなしに質問が飛び交っていたのも、その講演に刺激を受けた団員が多かったからだと思われます。

四 分科会
(一)憲法・平和分科会(一日目・二日目)
 一日目は、君島教授に対する質疑応答が約一時間にわたって繰り広げられ、後半は団員の討議となりました。質疑応答は、特に五・三安倍発言を巡る議論が多かったように思われます。ただ、質疑応答がなされるだけでなく、君島教授の回答を受け、ベテラン・若手がそれぞれ意見を述べて、理解を深めるなど充実した議論がなされたと思います。また、家庭教育支援法など教育問題に関する議論も行われました。
 二日目も、一日目に引き続き討議が行われました。内容は、沖縄基地問題に始まり、全国の自衛隊・米軍基地問題、憲法二一条の表現の自由・集会の自由を巡る各地の問題、憲法二四条の問題、東京オリンピック用地に関する問題、そして共謀罪法案についてなど、改憲問題にとどまらない安倍政権下での多岐にわたる問題の多くに言及・討論がなされました。
(二)共謀罪分科会(一日目・二日目)
 共謀罪分科会は、二日間にわたり開催し、一日目は、日本政治史を専門とされている山口大学名誉教授の纐纈厚さんにご講演いただき、二日目は、共謀罪法案反対の全国の取り組みについて討議を行いました。
 一日目は、二〇一六年参院選の野党統一候補としても立候補された纐纈厚さんに、「安倍政権の本質と「戦争国家」化の現段階〜拍車かかる精神・思想動員と監視社会への道〜」と題して、ご講演いただきました。安倍政権が進める「戦争をする国」づくり・治安強化の流れの中での共謀罪の役割と位置づけを戦前・戦中の軍国化の歴史を踏まえてお話いただきました。現代社会のなかで共謀罪が持つ危険な機能を再認識し、監視社会が一層進み、軍国化のプロセスの一環であるという認識を共有することができました。ご講演終了後、二日目の共謀罪法案に関する討議のため、三澤麻衣子共謀罪対策本部事務局長から問題提起の発言を行いました。
 二日目は、一日目のご講演・問題提起を踏まえて、共謀罪法案に反対する各団員の取組みについて経験交流をしました。全国の団員から各地の取り組みをご報告いただき、また、取り組みの視点・方法について討議をしました。法案成立阻止に向けた取り組みの機運を高める機会となりました。
(三)労働格差貧困分科会(一日目)
 一日目は、労働問題、貧困・社会保障問題合同で、首都圏青年ユニオンを支える会の呼びかけ人であり、立川事件調査団の団長等もつとめる後藤道夫・都留文科大学名誉教授から「日本型生活安定装置の本格的解体とどうたたかうか〜労働・国家・自治体の福祉国家型大改革へ〜」というテーマのご講演をいただきました。豊富な統計分析やSNSの若者等の投稿を引いたレジュメに基づき、もともと不十分な社会保障のもとで雇用と社会保障の解体が進み、深刻な貧困が各世代、各階層に拡大して、国民の大半が生活苦に喘いでいる実態が鮮明に示されました。貧困を克服するためには、労働者が普通に働けば普通の暮らしができる雇用・賃金と、普遍的・重層的な社会保障制度の構築が必要であり、社会保障給付は賃金の影響を強く受けるとして、賃金の底上げに向けた取り組み、特に最低賃金の取り組みが重要であると提言されました。そして、「貧困・困窮者は国会前に行けない」と、安倍政権の憲法改悪、戦争法制(共謀罪も含む)や労働法制改悪等とたたかうためにも、貧困問題への取り組みが重要である旨述べられました。
 壮大なテーマのため時間が押し迫りましたが、その中でも活発に質疑も出て、今後の労働問題、貧困・社会保障問題への取り組みに向けて重要な示唆をいただけたと思います。
(四)貧困問題分科会(二日目)
 二日目は、貧困・社会保障問題単独の分科会となりました。一日目にご講演いただいた後藤先生にも参加いただき、(1)労働事件等に取り組む中で感じた貧困問題への取り組みの必要性、(2)立川事件、小田原ジャンパー問題等をはじめとする生活保護問題、(3)年金訴訟等の取り組みといった柱建てで、経験交流を行いました。様々な取り組みの報告を通じて、国民、労働者の貧困化の実態や生活保護利用者に対する人権無視の扱いと、弁護士として事件をやり抜くためにも、団員として憲法改悪をはじめとする社会問題に取り組むためにも、貧困問題の克服に取り組まなければならないという共通認識を得られたと思います。幅広い取り組みが必要な貧困問題の克服に向けて、今後、貧困・社会保障問題委員会の活動分野のさらなる拡大が必要であることを認識した充実した討議になったと思われます。
(五)労働問題分科会(二日目)
 二日目は、労働問題単独の分科会となりました。法制度と個別事件を、それぞれ各地各団員から報告してもらいました。
 法制度の関係では、安倍「働き方改革」の問題、特に労働時間の上限規制の問題点や同一労働同一賃金の問題などをめぐる発言・意見が多数出て、充実した討議が行われました。全国各地での市民団体や企業(中小)と協働する取り組みなども報告されました。個別事件については、日産派遣切り事件、裁量労働制による時間外手当未払事件、メトロコマース労契法二〇条裁判、過労自死公務災害事件、フルキャスト日払派遣事件、ヘイトハラスメント訴訟、TOTO事件など全国で団員が取り組む労働事件の状況が報告されました。
(六)原発分科会(一日目・二日目)
 一日目は、被害者集団訴訟の全体を俯瞰した後に、生業訴訟原告団の二名の方に「今、福島で暮らすこと、これからも福島で生きること」と題し、講演をしていただきました。更に被害者訴訟で全国初の判決となった群馬訴訟の原告の方にもお話をしていただきました。いずれの方のお話も被害者の苦悩、葛藤がリアルに伝わり、胸に迫るものがありました。涙を流す参加者も少なくありませんでした。被害の甚大さ、理不尽さというものを改めて確認できました。その後、群馬判決についての討議に入り、群馬地裁が、責任を大きく認めた割に、損害の認定が小さかったこと等を中心に意見交換がなされました。
 二日目は、脱原発訴訟の情勢を俯瞰した後、各地の脱原発弁護団から現在の状況と今後の課題などの報告をもとに討議しました。福島事故被害を出発点としながらも、当地で原発事故が起こった場合にどういう被害が生じうるのかについて、立証をどのように行うかが重要である等、困難な課題に対する各地弁護団のさまざまな工夫、努力が語られました。この分科会をきっかけに被害者訴訟と脱原発訴訟との交流の場を設けて欲しいとの提案がありました。また、今後の政策提言についても報告がありました。

五 全体会(二日目)
 分科会終了後、全体会が再開され、次の一一名の全体会発言がありました。テーマと発言者は次のとおりです。
(1) 森友学園問題についての京都・大阪支部の取り組みについて
大阪支部・菅野園子団員
(2) 大垣警察市民監視事件の概要・報告
岐阜支部・山本妙団員
(3) 共謀罪法案廃案に向けた取り組みと成果
東京支部・久保木太一団員
(4) 共謀罪法案廃案に向けた問題提起
東京支部・小部正治団員
(5) 沖縄における米軍基地問題の現状等について
沖縄支部・高木吉朗団員
(6) 安保法制の施行と南スーダンPKO派遣
北海道支部・佐藤博文団員
(7) 明文改憲とのたたかい、改憲をめぐる情勢と国際的NGOによるはたらきかけ
東京支部・笹本潤団員
(8) 安倍政権の「教育再生」に対する団本部教育問題委員会の取り組みについて
東京支部・大久保秀俊団員
(9) IBMロックアウト解雇訴訟と解雇の金銭解決制度について
東京支部・竹村和也団員
(10) 福島原発事故から六年。原発を巡る情勢と課題
埼玉支部・南雲芳夫団員
(11) 「核兵器禁止条約」を実現しよう!
埼玉支部・大久保賢一団員
 全体会発言に引き続いて、次の一〇本の決議が執行部から提案され、会場の拍手で採択されました。
(1) 共謀罪法案の成立に反対し、廃案を求める決議
(2) 安倍政権の危険な「対北朝鮮政策」の中止と外交的・平和的解決への抜本的転換を求める決議
(3) 安倍政権が強行する辺野古新基地建設の即時中止することを求める決議
(4) 過労死と格差を容認し、リストラ解雇を促進する安倍「働き方改革」に反対し、人間らしく働くルールの確立を求める決議
(5) 福島第一原発事故による被害の全面救済の実現及び原発推進政策から即時撤退し原発ゼロ社会の実現を求める決議
(6)「核兵器禁止条約」の早期実現をめざす決議
(7) 司法修習生に対する十分な経済的支援制度の確立を求める決議
(8) 警察権力による市民の表現活動に対する弾圧に強く抗議し、憲法第二一条第一項で保障された街頭での表現活動の自由を侵害する不当な干渉・制限に対し断固としてたたかうことを誓う決議
(9) オスプレイを使用した日米共同訓練の強行に抗議し、配備撤回を求める決議
(10) 安倍政権の戦争をするための教育方針に反対する決議
 以上の決議が採択された後、拡大幹事会が開催され、新人団員の入団が拍手で承認されました。
 続いて、今年一〇月の総会開催地である三重県支部の石坂俊雄団員から、開催場所となる三重・鳥羽への歓迎の挨拶が行われました。
 最後に、群馬支部の金井厚二団員から閉会の挨拶が行われ、全てのプログラムが終了しました。

六 プレ企画について
(一)新人学習会
 新人学習会(前半)は、群馬支部企画として、同支部の下山順団員(六二期)に講演してもらいました。
 まず、「街頭宣伝の自由と警察の規制に対する取り組みについて」と題して講演をしてもらいました。群馬県警は、市民の街頭宣伝活動を規制し妨害行動を繰り返し行っており、これに対して、下山団員らは、断固抗議をして、表現の自由を守るためにたたかってきました。この活動の経過・結果を語ってもらいました。この警察による不当介入は、群馬県だけの問題ではなく、全国にある問題です。広く連携する取り組みが求められていることを各団員が実感したのではないかと思います。後半は、「朝鮮人強制連行 群馬の森・追悼碑訴訟について」講演してもらいました。県立群馬の森に県の建設許可を受けて建てられた「記憶 反省 友好の追悼碑」を、一部の団体の抗議を受け、政治的中立性を欠くとして、県が設置期間更新申請に対し不許可処分を下したという事件です。「記憶 反省 友好の追悼碑を守る会」は、不許可処分の取り消しを求めて訴訟を提起しました。歴史修正主義者の声に萎縮する行政の対応は、全国に広がっています。過去の歴史に真摯に向き合うことが過ちを繰り返さないためにも重要だと、声を上げ続けなければなりません。いずれも、全国各地で起きうる問題であり、その意義・重要性は当然のこと、登録間もない時期に若手団員が活躍した話ということで、特に、新人のみなさんの今後の活動の参考になったと思います。
 新人学習会(後半)は、「冤罪事件」についての本部企画が行われました。最初に、数々の冤罪事件を担当し、一四件もの無罪判決を勝ち取ってこられた今村核団員(東京支部)に、冤罪事件が起こる過程について、これまで取り組まれた事件をもとに講演してもらいました。恣意的な写真面割台帳により目撃者の記憶が歪められること、目撃者の思い込みによって記憶が塗り替えられること、また、虚偽自白が取り調べの中で作られている過程、物証や科学鑑定の重要性などを具体的な事件に基づきながら話をしてもらいました。冤罪事件が生み出されるメカニズムをわかりやすく話していただき、その恐ろしさや弁護活動の難しさ、重要性がとてもよくわかる内容でした。
 続いて、今村団員とともに冤罪被害救済問題に積極的に取り組んできた泉澤章団員(東京支部)と今村団員との対談が行われました。二人の刑事・冤罪事件についてのこれまでの活動、苦労や醍醐味をときに笑いを交えながら話してもらいました。参加者にとっては、今後、刑事事件・冤罪事件に取り組んでいくにあたっての心構えや視点を得ることのできる貴重な機会となったと思います。
(二)事務局交流会
 今年の事務局交流会は、全体会で、東京支部の久保木亮介団員から「私たちのたたかいが、いかに団事務所事務局に支えられているか〜『生業を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟からのメッセージ」と題し、団員が取り組む集団訴訟などにおいて、団員事務所の事務局員のはたしている役割の大きさ、意義などについての講演がありました。その後、弁護士法人名古屋北法律事務所事務局の長尾忠昭さんから「団事務所での経験と活動、地域での活動について」と題し、団事務所の事務局員の姿勢、地域での活動についての講演がありました。
 全体会終了後は、(1)新人事務局交流会、(2)事務局業務に関する交流会、(3)活動交流会の三つの分科会に分かれ、それぞれ活発な意見交換がなされました。

七 最後に
 冒頭にも述べたとおり、今回の五月集会の直前に、共謀罪法案が衆議院法務委員会で採決され、五月集会直後の二三日に衆議院本会議で強行採決されました。昨年の臨時国会では、TPP、カジノ法案、部落差別永久化法などが、十分な審議もなされずに強行採決されましたが、共謀罪法案に対する反対世論が高まる中でさえ、わずか三〇時間程度の審議で共謀罪法案も強行採決するといった安倍政権の政治運営は、もはや少数派の意見を全く顧みない民主主義の放棄というほかありません。今年五月三日、安倍首相自身が、自衛隊を明記する改憲案を語りました。安倍首相は、自民、公明におおさか維新の会などを加えて、衆参両院にて改憲勢力が三分の二以上の議席を確保している現状下で、自らの任期内に、その野望を実現すべく動き出しています。すでに集団的自衛権の行使容認を法制化した「戦争法制」は施行されており、秘密保護法の制定、昨年の盗聴法拡大・司法取引の導入、そして共謀罪と、我が国では、監視・密告社会化が進み、着々と「戦争をする国」へ変貌させられています。さらには、過労死・格差を容認し、解雇を金銭で正当化させる雇用ルールの破壊、財界重視・人命軽視の原発再稼働の促進など、国民を犠牲にする政策も積極的に推し進めてきています。二〇一七年五月群馬・磯部研究討論集会では、こうした情勢を受けて、全体会及び六の分科会において、いずれも大変熱心な討論が繰り広げられました。今回の討論集会が団員一人一人の全国各地での今後の活動に役立ちうるものになったのであれば、主催者側として大変嬉しく思います。
 最後に、今回の五月集会も、地元群馬支部の団員の皆さま、事務局員の皆さま、大変多数の、多大なるご尽力によって成功しました。執行部一同、深く御礼申し上げます。ありがとうございました。


現実主義の陥穽〜群馬・磯部五月集会の憲法・平和分科会に参加して〜

北海道支部  池 田 賢 太

一 はじめに
 昨年、札幌市定山渓において五月集会が、多くの団員の参加を得て、大成功に終わった。昨年の総会には参加できなかったので、ご恩返しも兼ねて、群馬・磯部五月集会に参加した。
 毎回参加して思うことだが、その度に多くの刺激と縁を得て、元気をもらう。歴史ある自由法曹団の一員として、頑張ろうと思う気になれる。

二 憲法・平和分科会に参加して
 さて、私は、憲法・平和分科会に参加した。五月集会あるいは総会に出席するときには、ほぼ毎回この分科会に参加している。改憲阻止MLで情報を寄せてくださる諸先輩がそれぞれに議論を展開され、圧倒されるとともに、事実に即した主張を行うための日々の研究の成果が示される。
 今回の分科会では、まず記念講演を行った君島東彦教授に対する質疑応答から始まった。講演に対する質疑もそうだが、やはり五月三日の安倍改憲発言と絡めた質疑も多くなされた。最初はベテランの団員による質疑が中心であったが、学生など若い層を中心に改憲に抵抗感を示さない人が増えているという話題から、六九期弁護士に発言の機会が回った。そこから火が着いたように手が挙がるようになった。その際、私も触発されて質問をした。
 私は、君島教授の講演レジュメ中、東アジアから憲法第九条を見ると、「日本軍国主義に対する歯止めとしての九条。懲罰としての九条という見方」があるとの記載に関連して、今の日本はいかなる意味において軍国主義とみられているのか、つまり軍隊になりきれない組織としての自衛隊は、いまだ軍国主義として脅威なのか、という趣旨の質問をした。君島教授からは、自衛隊の設備からすれば世界第五位、防衛予算が五兆円を超える実態からは、軍としての脅威を与えているとの意見が示された。私は、さらに日本の民主主義は東アジアから信頼されていないのかと質問をした。つまり、設備の面は確かにそうかもしれないが、設備が直ちに脅威とするのは飛躍があるように感じたのだ。設備が増大し、しかも軍部に対するコントロールが効かない状態にあれば、これはまぎれもない脅威だろう。とりわけ排外主義を隠さない安倍政権に対する不信感もあるのではないか、という関心からだった。これに対する君島教授の回答は、東アジアからみた日本の民主主義に対する不信は分からないが、日本の憲法学者の多くはいまの議会主義を信頼していない。だからこそ、憲法改正を許さないのだ。他方で、アメリカの学者はもっと信頼してもいいのではないかという主張もなされているとのことだった。直接の回答ではなかったが、憲法学者から端的に議会主義が機能していないと指摘されたことは、十分わかっていたはずなのに、大きな衝撃を受けた。どこかで見ないふりをしようとしていたからかもしれない。

三 現実主義の陥穽
 分科会の最初の部分を書いただけで所定の字数を大幅に超過することが確定してしまった気がする。少しだけ伸びること、二日目の議論をほとんど省略することをお許し頂き、私の感想を記したい。
 私が議論を聞きながら思い出したのは、丸山眞男の「『現実』主義の陥穽」という論文である。丸山は、この論文の中で、日本人が通常現実とか非現実とかという場合の「現実」について、次の三つに整理している。
 まず一つは、現実の所与性である。本来、現実とは日々作られていくものであるが、日本では端的に既成事実と等置されると指摘する。換言すれば、現実はいつも「仕方のない」過去であるという。
 第二に、現実の一次元性である。社会的現実は極めて多元的であるにもかかわらず、「現実を直視せよ」などという叱咤する場合には、そのことはたいてい簡単に無視され、現実の一つの側面だけが強調されるのである。
 そして、第三の特徴は、その時々の支配権力が選択する方向が、すぐれて「現実的」であると考えられ、それに対する反対派の選択する方向は容易に「観念的」「非現実的」とのレッテルを張られがちであるということである。
 私にとってみて、憲法九条の懲罰的意味合いというのは、九条解釈の中で抜け落ちていた視点であった。憲法制定前後の日本の行動に照らしてみれば、当然のことでありながら、東アジアからの視点は抜けていた。これは、憲法解釈において、比較憲法学の視点を持ち合わせていなかったからだけではなく、どこまでもDomesticな視座から離れられない自己というものを再認識させられた。芦部教授の教科書をいくら読んでも、このことは書かれていない。支配的通説が私の九条観を作っていたのだと感じた。
 憲法改正論に対して、私たちに説明責任が転嫁されたとするならば、私たちはより多角的な視点から現実を見つめ、その裏付けとなる事実をもとに、理論を構成していかなければならない。そのためには、事実をいかに収集し、いかに分析することが重要であるか、そのことを突き付けられた五月集会であったと思う。


安倍改憲発言を受けて
〜国民投票も見据えた運動の構築を

京都支部  諸 富   健

一 はじめに
 安倍首相は、九条一項二項を維持しつつ自衛隊を明記する憲法改正を打ち出しました。また、教育無償化や緊急事態における議員の任期延長にも言及しました。これを受けて、自民党は年内にも改憲案をまとめると報じられています。五月集会でも大きなテーマとなり、私も憲法・平和分科会で発言させていただきましたが、改めて私見を述べさせていただきます。
二 国民投票で過半数を取るための広範な運動を
 既に色んな方が述べられているように、自衛隊加憲論はこれまでの運動に大きな揺さぶりを掛けるもので、分断の意図があることは明らかです。憲法・平和分科会で発言した際に九条を変えてもいいと思う方はいらっしゃいませんかと質問したところ、どなたからも手が挙がりませんでした。ただ、自然災害などで頑張っている自衛隊の存在をきちんと憲法に明記すべきではないかと言われると、それはそうだと考える市民の方は結構多いのではないでしょうか。今のところ、世論調査では九条の改正について反対が多数を占めていますが、実際に九条改憲案が出てきたときに賛成と反対が逆転する可能性も否定できません。ですので、少なくとも自民党が打ち出してくる自衛隊加憲論には反対であるという立場をどのように多数派にしていくかが課題だと思います。衆参ともいわゆる改憲勢力が三分の二を占めていますが、国民投票で過半数を取ることが難しいと思わせることができれば、発議そのものを阻止することも可能だと思います。ただ、思い切って勝負に出てくることもあり得るので、その場合には大阪都構想の住民投票のように、まさに一票でも多く反対派が上回るようシビアな陣取り合戦に臨まなければならない、そうしたことを見据えた取り組みが必要だと思います。そのためには、自民党から具体的な改憲案が出てきたときに、九条改正賛成派でも自民党案には反対してもらうための説得的な理論を編み出す必要があるのではないでしょうか。
三 「立憲主義」が一つの大きな旗印
 安保法制反対の取り組みにおいて、「立憲主義」が大きくクローズアップされました。いわゆる「掛け布団」と「敷き布団」(中野晃一教授)が手を取り合って大きな運動を作り出すことができた一つの要因に「立憲主義」があることは間違いありません。日弁連挙げて安保法制反対運動に取り組めたのも、「立憲主義」を堅持するという一致点があったからにほかなりません。私は、「立憲主義」が自衛隊加憲論反対を多数派にしていく上でも一つの大きな旗印になると考えます。確かに、自衛隊を憲法に書き込めば「立憲主義」に反しないという意見もあり得ます。しかし、私自身まだまだ理論的に詰められていませんが、既に作り出された違憲状態という瑕疵を後に治癒するという方法が許されるのか、提案される自衛隊加憲論の内実から実質的に「立憲主義」に反すると言えるのではないか、という反論を加えることができるのではないかと思います。とりわけ、日弁連は、単に九条改正に反対という立場は取れませんが、「立憲主義」に反する改正は許さないというスタンスで一定の意見を構築することは可能です(例えば、緊急事態条項(国家緊急権)創設に反対する意見書)。弁護士会に対する市民の信頼は大きいものがあるのですから、各団員が地元の弁護士会で積極的に活動に関与し、自民党の自衛隊加憲論に反対する機運を高められるような工夫を懲らしていただければと思います。
四 教育無償化、緊急事態条項も要注意
 安倍首相は、二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にしたいと述べています。また、首相在任中に改憲を実現したいと繰り返し述べ、自民党総裁任期を三期九年に伸ばすことまでしています。明文改憲を実現した初の首相として歴史に名を残したいというすさまじいまでの執念が感じられます。だからこそ、この絶好の機会を逃してはならないと考えているでしょうし、絶対に失敗は許されないとも考えているでしょう。だとすると、本丸は九条だとしても、自衛隊加憲論は国民投票では厳しいと判断すれば、それは後回しにして、教育無償化や緊急事態条項を先行させることも十分考えられます。これらの危険性についても、引き続き市民に広く伝えていく必要があると思います。

五 さいごに
 とりとめもなく書き連ねましたが、安倍首相が突きつけた課題は非常に重く、簡単に結論が出るものではありません。本部、支部を問わず、様々な角度からの継続的な議論が不可欠でしょうし、MLや団通信等を活用して議論の蓄積を全体で共有する努力も必要だと思います。安倍自民党改憲をなんとしても阻止するために、私自身も思索を深めながら、実践的な取り組みを強化していきたいと思います。


分科会に参加して感じたこと

東京支部  齊 藤   彰

一 分科会に参加した動機
 私は、自由法曹団に新規入団した六九期の弁護士です。現在は、上野で弁護士をしております。
 私が活動している東京都台東区は、低所得の方が比較的多い地域であるため、普段の仕事の中で、そのような方々と接する機会が比較的多くあります。そのため、弁護士として仕事をする中で、貧困や社会保障政策について興味を抱いておりました。そこで、五月集会では、貧困・社会保障分科会に参加しました。
二 分科会の感想
 分科会では、社会学者である後藤道夫先生をお招きし、「日本型生活安定装置の本格的解体とどう戦うか」という題名で講義をして頂きました。
 講義の中で、現在の日本は、年金や失業保険等の社会保障制度が不十分であるため、個々人に多額の貯蓄があることが原則とされている一方、若者から高齢者に至るまで様々な世代で貧困が進行し、無貯蓄世帯が急増しており、多額の貯蓄という原則が成り立っていないとの指摘がありました。
 その上で、そのような状況を改善するためには、「福祉国家型生活保障」の本格構築が必要であると述べられました。そして、「福祉国家型生活保障」の構築のためには、勤労者の最低生活保障を維持できる程度まで賃金を上げること、法人税や所得税累進課税を強化すること、資産税の見直しや富裕税を導入すること、社会保険料の企業規模別格差付けを実施することなどを指摘されました。
 私は、普段の仕事の中で、勤労しながらも普段の生活に困窮している方、傷病が原因で勤労できずに生活保護を受けているものの、受給金額が低額でまともな生活を送れない方を見る中で、そのような方々に最低限度の生活を保障する制度構築の必要性を痛感しておりました。そのため、生活保障制度の新構築が必要であるいう後藤先生のご指摘には賛成です。
 もっとも、貧困・社会保障分野では、財源の確保という大きな問題があります。確かに、法人税増税や高所得者に対する課税強化は、財源確保のための方策の一つです。しかしながら、企業の海外進出や高所得者の消費の減退というデメリットもあり、それらに対する対策も必要となります。この財源の問題は、解決が容易でなく、今後も議論を続ける必要があると感じました。
 今回の分科会に参加することで、日本の貧困・社会保障の現状を知り、これらの問題について深く考える契機となりました。今後、弁護士として活動する中で、貧困・社会保障問題に対する視点を常に持ち続け、何らかの貢献ができればよいと考えております。


活動交流会に参加して

北大阪総合法律事務所  河 合 成 葉

「活動交流会」に参加させていただきました。
 ここ最近、私の通勤時間は主に「仕事と家庭と活動を、どうすればバランス良く成立させることができるか」という思索に費やされています。
 この「活動交流会」では、各事務所で取り組んでいる活動報告を中心に、その成果や悩み、工夫していることなどを出し合い交流しました。
 報告では、「地域で友の会を作り、そこからの相談や紹介などが一定数ある」、「地域の催しで無料相談会を行ったことがきっかけとなり、毎月の定例相談に繋がった」、「相続に関する相談会など、事務所で企画しても人が集まらないが、それを地域に持ち込むと数十人集まることもある」などの報告がありました。
 また、「事務所内でも活動に対し積極的な人と、そうでない人の温度差が大きい」、「活動の重要性がなかなか共有できていない」などの悩みも聞かれました。
 一方で、「活動ができている人は仕事もできる」、「自分たちが地域に対し真剣に向き合えば、地域の人も応えてくれる」などの話もありました。
 弁護士は昼夜問わず仕事をし、事務局もその事務処理を必死に行うものの、なかなか売り上げには直結せず、深刻な経営問題に直面している事務所も少なくありません。私自身、「仕事と家庭だけで精一杯だ」と、活動に対する意欲や活力が途絶え、挫けてしまいそうになることもあります。
 しかし、五月集会で各地の取組を聞き、また同じ悩みを持った仲間と出会う度に、団事務所で働くことの意義・誇りを再確認することができます。仕事と活動では得られるものが違います。仕事で得られる事務局としてのスキルも大切ですが、活動を通して人と繋がることで、ものの見方や考え方がひろがり、人間として成長することができると思っています。
 また、活動は誰かに強制するものでも、強制されるものでもありません。ひとり一人、違う向き合い方があると思っています。
 私にとっては、仕事も家庭も活動も、どれも切り離すことのできない大切なものです。自分なりに活動に対する意義を模索しながら、これからも向き合っていきたいです。


自衛隊は「国旗」を掲げない
――「日の丸」と「旭日旗」

東京支部 後 藤 富士子

一 五月五日付「赤旗」によれば、アジア・サッカー連盟(AFC)は四日、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のアウェー水原(韓国)戦で、サポーターが旭日旗を掲げたJ1川崎に対し、一年間の執行猶予付きでAFC主催大会のホーム一試合を無観客試合とする重い処分と、罰金一万五〇〇〇ドル(約一七〇万円)を科すと発表した。AFCの規律委員会は、旭日旗は国籍や政治的主張に関連する差別的象徴と認定し、倫理規定に違反するとしたという。
二 同日の朝日新聞記事では、処分の趣旨が「旭日旗が国籍や政治的主張に関連する差別的象徴」というのではなく、「旭日旗を掲げる行為は人種や政治的な信条などによる差別を禁じる規定に違反する」という内容になっている。そのせいか、「政治的、差別的ではない」との反論や、「旭日旗はよく使われている」という官房長官の発言も紹介されている。
 ところで、「旭日旗」についての説明(キーワード)を見ると、図柄が例示され、「朝日をデザインした旗。日の丸から放射状の光線が赤い線で描かれている。同様のデザインの旗は旧日本軍が採用し、現在では陸上・海上自衛隊が使用。韓国や中国では『日本の軍国主義、帝国主義の象徴』との認識が根強い。」とある。
三 一方、平成一一年に制定された「国旗及び国歌に関する法律」の第一条は、一項で「国旗は、日章旗とする。」と定め、二項で「日章旗の制式は、別記第一のとおりとする。」として、図柄の記載とともに、(1)寸法の割合及び日章の位置、(2)彩色(地は白色、日章は紅色)が規定されている。すなわち、「日章」とは「日の丸」であることが一義的に明らかで、「旭日旗」の図柄・制式とは全く別物である。
 そこで、私は、朝日新聞の前記解説が間違っているのではないかと疑問に思い、朝日新聞に質問したところ、間違いはないとのことであった。なお、航空自衛隊が旭日旗を使用しないのは、そもそも「日章旗」の制式には「旗竿」があることに照らし、飛行機に掲げることができないからであろう。
 そうすると、陸上・海上自衛隊は、「国旗」を使用していないことになり、「法治国家の軍隊が国旗じゃないものを掲げるなんて、アリ?」と驚くばかりである。さらに、AFCの規律委員会によって「国籍や政治的主張に関連する差別的象徴」と認定された旭日旗を掲げるなんて、「国賊!」というほかない。
 そして、私が尤も落胆するのは、「日の丸」「君が代」に反対する法律家が、自衛隊の「旭日旗」使用を問題にしないことである。日本には「軍国主義反対」「差別反対」の法律家は沢山いるだろうに、「法の支配の担い手」ではないのだろうか?
(二〇一七・五・二七)


横田で行動し、沖縄に行く(1)

東京支部  盛 岡 暉 道

一 横田で行動する
 横田基地問題を考える会は、美堀町九条の会、立川平和委員会と共同して、三月二五日〜四月二日に、横田基地南側の飛行コース直下の約五〇〇戸に対して、横田基地へのオスプレイ配備に関するアンケート調査を行った。
 三月二五日頃にあらかじめ、アンケート用紙に代金受取人払いの返信用封筒を付けて五〇〇戸に配っておき、四月二日(日)に約三〇人で、対象地域を一〇区に分けて、留守宅が多いと思われるので、比較的在宅が見込まれる午前一〇時半〜一一時半に、二人一組になって訪問した。
不在の場合は玄関ドアにアンケートを張っておいてと書いておいたが、張り出してあったのは、全体で五、六軒にすぎなかった。
 会ってアンケートを受けとることができたのと郵送での回答を合わせて、回収率は約二七%である。
 私は、三月二五日に、都営住宅一八〇戸に一人でアンケート用紙配ることを仰せつかって、都営なら一八〇戸でも「楽勝だ」と思って、「あいよ」と軽く引き受けて、五階建てから八階建ての五棟をまわったが、この都営の各戸のドアにある郵便口は大変固い蓋がされているので、それをこじ開けてアンケートを入れていると、次第に手の指が痛くなって来て、思わぬ苦労をした。
 しかし、都営全体で二〇戸程の空き室があることを知って、家賃が安く日当たりのよい部屋ばかりなのに出ていく人がけっこういるんだなぁと認識を新たにした。
 四月二日のアンケート回収日には、手違いで私のすぐ近所の二〇軒ばかりが回収者が出払ってしまったので、これも私一人で回収することになった。
 幸い、好い天気で気分よくまわれたが、わが家から二〇〇メートルほど離れた家では、隣地で家庭菜園をやっていた六〇歳代〜七〇歳代のおじさんが「アンケート?横田が日本を守ってくれてんだから、オスプレイぐらい当たり前だろう」といって肩をそびやかさんばかりの態度だった。
 私は「成る程な」と思いながら訪問を続けたが、このあとにまわった家の内の三、四軒で「うちはアンケートはちょっと…」とか「まだ書いてない。」などと云ってたが、これも、対応は柔らかだが、その何人かは基地容認派も含まれていると見なければならいのかも知れないとも思いあたった。
 兎に角、四〇年以上も横田基地反対の運動をやってきたが、このように、目と鼻の先のご近所さんたちと、直接、横田について話をしたのは初めてだったので、これは、大いによい体験であった。
(続く)


松川資料のユネスコ世界遺産登録申請について

東京支部  鶴 見 祐 策

 本年五月一〇日、松川事件の裁判と運動の記録(略称「松川資料」)について、国内選考委員会に対し、福島大学の中井勝巳学長による「ユネスコ世界記憶遺産」の登録申請が行われた。その報道が松川事件と松川裁判への新たな想いを呼び起こしている。「登録を推進する会」の事務局(NPO松川運動記念会内・電話〇二四―五二三―四一八三・FAX〇二四―五六三―一七〇四)には各地から共感の声が寄せられているという。地元紙(福島民友)も社説で「司法史に残る貴重な記録と記憶を後世に、そして世界に語り継いでいかなければならない」と伝えている。
 「推進する会」は、松川資料の登録を目指して、吉原泰助元福島大学学長を筆頭に、学者・研究者・文化人・ジャーナリスト・救援運動・事件関係者・弁護士など多くの人々の呼びかけによって昨年の一月二五日に結成された。荒井新二現団長をはじめ多数の団員がそこに名を連ねている。その結集には石川元也元団長による全国的な訴えに負うところが大きい。
 「大衆的裁判闘争」は我が団にとって伝統的な作風と言えるだろう。先輩たちの松川裁判と関わりがその原点である。九九年には秋保で開かれた「事件五〇周年記念シンポ」(団報一五七)と銘打つ五月集会が想起される。その成功には福島大学の伊部正之教授のご尽力があった。
 その福島大学の資料室(電話〇二四―五四八―八四二二)に松川に関する膨大な資料が保存されている(法政大学大原社研にも)。その数は一〇万点にも及ぶという。そして誰でも何時でも閲覧できるよう整備されている。その中に救援運動の高まりで発掘されたアリバイ物証の「諏訪メモ」、元被告らの生死を分けた最高裁の合議の実態を窺わせる「調査官報告書」、獄中から必死の訴えを書き綴った元被告の書簡などの各原本や、判決批判の健筆を振るった広津和郎氏の論稿や記念塔の碑文の草稿など歴史的に貴重な品々が含まれている。裁判所に宛てた著名人の連名の要請書などにも括目させられる。まだの団員は機会をみて訪れてほしいと思う。
 申請書の普及が望まれる。パンフもあり、「救援情報」(国民救援会の機関誌)も特集予定と聞いている。申請書には資料ごとの説明があり実物の写真も適宜に添えられている。そして「資料の意義」として、事件の時代背景、裁判の経過、有罪判決と救援運動、諏訪メモの発覚と最高裁の弁論、差戻審の無罪、国家賠償など松川裁判と運動の全容を明らかにし、さらにドレフュス、サッコ・ヴァンゼッティ、ローゼンバーグ夫妻など、世界の歴史上に著名な「冤罪」事件と対比しながら、それらの国際的な連帯の救援運動にも言及し、さらに裁判批判の大衆的な運動の実態を語り、広津和郎氏に代表される知識人による啓蒙活動の業績と評価を紹介している。そして最後に松川運動の壮大な展開がその後の日本の司法制度にもたらした少なからぬ影響についても簡潔に言及している。
 松川を広く知らせる手ごろなガイドブックとしても役立つに違いない。
 日本国からユネスコへの登録は二つに限られている。「狭き門」ではあるが、この申請の成功のために団員のご協力を重ねてお願いしたいと思う。