(2018年発行分)第1654号/12/21 二〇一八年福岡・八幡総会旅行記 第二 総会後の一泊旅行の一日目 神やどる宗像大社へ 東京支部 伊藤 嘉章
カテゴリ:団通信
一 三つの社の関係
総会終了後、イカ刺しとアルコールで身を清めたあと、宗像大社の辺津の宮を参拝する。アマテラスがスサノオの劔をかみ砕いて霧の息吹から生まれた三姉妹のうち、市杵島姫神をここ辺津宮に祀り、たぎつ姫神を筑紫大島の中津宮に祀り、田心姫神を沖の島にある沖津宮に祀る。案内人によると、三つの社は、直線上にあるという。陸地から六〇キロ海上にある沖の島の沖津宮から、筑紫大島の中津宮を経て、ここ辺津宮を、どのようにして直線上に設置することができたのか。それとも偶然なのか。
「三つの社がある宗像大社は一つの宗教法人か。」との質問がでた。案内人は「そうです。」という。帰ってから登記情報を調べると、宗像大社の目的は「田心姫神、湍津姫神、市杵島姫神を奉斎し公衆礼拝の施設を備え神社神道に従って祭祀を行ひ、祭神の神徳をひろめ本神社を崇敬する者及び、神社、神道を信奉する者を強化育成し社会の福祉に寄与し、その他本神社の目的を達成する為に財産管理、その他の義務を行う。」とある一つの宗教法人となっています。
鳥居の前に、官幣大社という社名標がある。明治四年(一九七一年)の太政官布告によって制定された官幣大社の社格を、一九四五年、GHQの神道指令後、官幣の字を隠すようになったという。
案内人は、本殿の建築様式は、「五間社・兩流れ・妻入り・柿葺(コケラフキ)」という。私は神社仏閣には興味がないので案内人の各言葉の説明の内容は忘れてしまった。本殿の棟の両端に万歳するように手を伸ばしている千木がここでは真っ黒だ。「ここの千木はどうして黒いんですか。」と案内人に聞くと「そんなくだらないことをきくな。」とばかりに、「別に意味はない。」という。
本殿の背面にも入口がある。これは、日本中でここだけという。
二 宝物殿を見学する。
沖の島の祭祀跡から発見されたという鏡を見る。三角縁神獣鏡がある。内行花文鏡、方格規矩鏡がある。き鳳鏡もある。沖の島では、鏡は化粧道具でも墓に埋める死者の伴走品でもなく、祭祀の道具であったことになる。帰ってから調べてみると、沖の島では古墳ではないにもかかわらず、岩の上にある一七号遺跡の一箇所から二一面もの鏡がでてきたとあった。古墳における葬礼に近い祭祀がいとなまれていたのはなぜか。当時は、「葬祭未分化」であったという議論があるという(正木晃「宗像大社古代祭祀の原風景」NHKブックス四六頁)。
宝物殿掲示の年表によると、沖の島の祭祀は、四世紀後半から始まったという。祭祀の場で発掘された土器で一番古いのは、土師器である。そして、のちの時代の須恵器へとつづく。そこで、土師器が古墳から発掘される四世紀に、沖の島の祭祀が始まったという年代が比定できるのですかと質問した。案内人も同意していた。
但し、年表の時代区分では、古墳時代は最新の学説に基づいて、三世紀の半ばに始まったように書いてある。また、弥生時代についても、紀元前五ないし六世紀からという最近の学説によっているようだ。しかし、日本書記では十一代の天皇となっている垂仁の時代は紀元ゼロ年の前後と書いてある。ここだけは日本書記記載のままで、学問上の知見が反映されていないようだ。
三 女人禁制と高野山
沖の島は古代から女人禁制という。いまどき、なんで。案内人の説明によると、女性は子供を産むという神聖な役割を担っている。だから玄界灘の荒波で船が転覆して女性の命が奪われないように女人禁制にしたという。本当か、後付けではないのか。今では、大型の船に乗っていけば転覆の心配はない。前記の理由では、女人禁制を維持する理由がないのではないか。
高野山も昔は女人禁制であった。若い男の僧侶が集まって修行しているところに女性が来ると煩悩が高揚して修行の妨げになるので女人禁制にしたのだと言われると納得できそうだが。今では、高野山に女人高野(田川寿美)は存在しない。
四 夢想
神宿る沖の島から日本海に沈む夕日を見ながらあぶったイカをつまみにぬるめの燗でいっぱいやる。八代亜紀の世界だ。夜には、満天の星を見ながら、古代に思いをはせる。翌朝は、朝焼けの中、モーニングコーヒーを飲む。こんなリゾートライフがあってもよいのではなかろうか。そのために、ホテルをつくり、定期観光船を就航させる。経営主体は、民間か、独法か。神宿る島にカジノを作るの。明治時代には軍事施設があったとか。とにかく、インバウンド。
五 常連の定義
福岡県の奥座敷脇田温泉に泊まる。
懇親会で福岡支部の団員がアカペラで炭坑節を披露。
ひとやま、ふたやま、みやま越え ヨイヨイ
奥に咲いたる八重椿
なんの色よく咲いたとて、さまちゃんが通わにや
あだの花 サノヨイヨイ
「さまちゃんて、何ですか」という質問が出た。私が「さまちゃん」とは恋する青年のことだと言っても、無視されてしまい、他の話題に移ってしまった。
この懇親会で、「オプショナル旅行の常連とは、旅行に二回以上参加した者をいう。」と定義付けが決定したので報告いたします。私も常連になりました。