(2018年発行分)第1654号/12/21 一一月二八日 第一回「働き方改革」 一括法批判検討会の報告 事務局次長 深井 剛志
カテゴリ:団通信
一一月二八日、自由法曹団は、労働法制中央連絡会、全労連との共催で、第一回「働き方改革」一括法批判検討会を開催しました。この批判検討会は、四回に分けて、「働き方改革」一括法の各論点について、議論状況の報告と分析、今後の活動方針の議論等を行うものです。第一回のテーマは、「働き方改革」一括法全体をどのように見るか、ということと、労働時間法制に関する問題点でした。当日は、団員、組合関係者含めて、四〇人の参加者がありました。
まず、全国労働組合総連合 雇用・労働法制局長の伊藤圭一さんから、「働き方改革」一括法の概要についての説明と、省令・指針等の審議状況の報告がありました。伊藤さんからは、「働き方改革」一括法の改正点条文、その内容、旧法との違い、施行日が記載されたわかりやすい一覧表が示されました。また、それぞれの改正法の省令・指針の審議の状況について、網羅的に報告がなされました。
次に、私から、時間外労働の上限規制についての報告を行いました。労働時間上限規制に関する指針を用いて、原則通り、月四五時間以内の三六協定を締結することが重要であること、特別条項を締結する場合の条件を明確にすべきこと、労使交渉では労働時間の多寡だけではなく、その他の労働条件の改善も勝ち取るようにたたかうべきであることなどを説明しました。三六協定は、組合側が締結に同意しないと成立しないのであるから、組合としては、使用者と対等な立場で協議に応じ、労働条件の改善を勝ち取ることが重要であるということを強調しました。
その後、今村幸次郎団員が、高度プロフェッショナル制度についての報告を行いました。今村団員からは、高度プロフェッショナル制度の廃止に向けて、指針や省令などでできる限り適用範囲を絞り込ませること、労使委員会の決議など労働者の力を利用して、適用・採用させないこと、最終的には、法的に廃止に追い込むことが必要であると報告しました。特に、具体的な対象業務が省令においてどのように定められているのか、という点については、具体例を挙げて説明されていて、大変わかりやすいと評判でした。
それからは、意見交換、自由討議の時間となりました。いろいろな組合の参加者の方から、現場の状況や労働時間の短縮に向けた取り組みの報告をいただきました。
JMITUの三木陵一さんからは、JMITU内における労働時間の現状、時間短縮のためのたたかいの要求内容について報告いただき、三六協定を締結する際の要求事項についても説明いただきました。そして、三六協定を積極的に活用し、イニシアティブをもって、労働時間の短縮を実現しようと呼びかけました。
日本医労連の三浦宜子さんからは、医療・介護現場の働き方の実態について報告がありました。「夜勤規制Q&A」という冊子を用いて、健康への影響が非常に大きい夜勤交代労働の有害性を説明し、夜勤規制の取り組みについて紹介され、単に労働時間の短縮だけではなく、勤務間インターバル協定締結の必要性などについても強調しておられました。
働くもののいのちと健康を守る全国センターの岡村やよいさんは、二〇一二年の一二月に採用後わずか八か月後に自死をした新人看護師の労災申請事件で、不支給処分取消訴訟の審理の最中に、退社後の自宅でのレポート作成の時間を労働時間として加算していなかったこと、休憩時間が三〇分しか取得できていなかったことを考慮に入れていなかったことを理由として、異例の自庁取消を行った事件の報告がなされました。この報告からは、看護師が、退社後に膨大な量のシャドーワークを行っていた実態が明らかになり、医療現場における労働時間規制の必要性が明らかになりました。現在、医師は、時間外労働の上限規制の適用対象外となっておりますが、このような医療現場の実態に鑑みると、直ちに法的整備が必要です。
その他にも多くの発言をいただき、充実した内容で、第一回批判検討会は終了しました。
第二回は、二〇一九年一月三一日の一八時三〇分から、全労連会館で開催されます。テーマは、同一労働同一賃金に関する問題点です。
多くの団員の参加を呼びかけます。