第1820号 8/21
カテゴリ:団通信
【今号の内容】
●本郷(広島県三原市)産廃場設置許可取消訴訟の勝訴判決 山田 延廣
●福岡家裁元書記官パワハラ国賠請求事件 井下 顕
~秋の団総会開催地・大阪支部特集 ①~
●大阪における法律家団体の共同行動 藤木 邦顕
●地方団員は問う「常任幹事会は面白い?」(後編) 鈴木 雅貴
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学習会報告
■関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺事件を学んで 大﨑 茉耶
■「関東大震災100年・朝鮮人虐殺問題を考える学習会」の感想 河西 拓哉
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●安保三文書による自衛隊の変貌 国土防衛・専守防衛型から他国攻撃型へ(中) 井上 正信
●公開書簡 「九条の会」への感謝と期待 大久保 賢一
◆大軍拡・大増税阻止に向けた学習会運動について 平井 哲史
◆政府が進めるデジタル社会の問題点~改正マイナンバー法とプライバシー権を考える~学習会参加のお願い 永田 亮
◆第6回原発と人権集会の申込み方法が決まりました 杉本 朗
◆松川事件無罪確定60周年記念全国集会 渡邊 純
●幹事長日記 ②(不定期掲載)
本郷(広島県三原市)産廃場設置許可取消訴訟の勝訴判決
広島支部 山 田 延 廣
1、産業廃棄物処理施設許可処分の取消判決
広島地裁民事第3部は、地域住民等が広島県知事を被告として提訴した、訴外JAB協同組合に対する本郷産業廃棄物処理施設(安定型最終処分場)許可処分の取消請求事件(以下、「本件行政事件」という)につき、2023年(令和5年)7月4日、この許可処分を取消す旨の判決をなした。
この本郷処分場は、三原市と竹原市の分水嶺に位置し、両市の市民の水瓶となっている土地に30年間にわたって103万8,125㎥(25mプールの2000倍を上回る容量)の廃棄物を埋め立てるというものであり、地域に対する環境(負荷)は重大である。
この周辺住民らは、井戸水を利用している者や湧水を利用してブランド米造りを営んでおり、この処分場から汚染水が排出され、飲料水や農業用水が汚染されることを怖れ、本件許可処分の取消を求めた。地域住民らの請求権は、きれいな水を利用する権利(憲法13条が保障する幸福追求権行使の一環)である。
2、仮処分申請事件
この事件は、地域住民等(518名)が急ぎ、この処分場の建設を差止めることを要請してきたため、建設工事及び操業禁止の仮処分申請事件から始まった。私は、この事件を受任するにつき、㋐訴訟頼みに陥らず、社会や行政に対する運動を継続すること、㋑各種検査や専門家の意見を必要とするため、相応の資金集めを行っておくことを要請した。この仮処分事件において、広島地裁保全部は、2021年3月25日付で、建設・操業差止決定を下し、一旦は建設工事は中止されたのである。
訴外組合が広島市内の安定型最終処分場(上安処分場)において基準を超える汚染水を排水したり、熱海市で生じた土石流を超える量の埋立による造成がなされ、既に一部は崩落していること等の杜撰な経営を行っていることが明らかとなったことが大きく影響している。
しかし、この仮処分異議審では、吉岡裁判長に交代し、①本件処分場に汚染物質の搬入可能性、②汚染物質が地下浸透または排水される可能性、③この汚染物質が井戸水等に到達する可能性(因果関係)を疎明すべきとし、①と②は疎明できたが、③は疎明できていないとして、2022年6月30日仮処分決定を取り消してしまった(抗告審も棄却)。
3、本訴提起と判決
地域住民らは、これ以前の2020年7月15日付で本件行政事件をも提訴していた。それは、仮処分事件の審理過程で、許可審査に必要とされる「生活環境影響調査」において、井戸水利用者を調査対象から外し、農業用水水質基準の調査においても取水口が排水予定地から下流20mの位置にあるのにことさら700m下流でしか調査していないなどの杜撰な調査がなされていることが明らかとなっていたためである。
ご承知のとおり、1990年代初め、全国各地で不法投棄や産業廃棄物処分場による環境汚染が社会的問題となり、廃掃法は、15条の2を新設して環境上の配慮条項を制定したうえ、技術上の基準を設けた。ところが、被告県知事は、地域生活環境の保全につき「適正な配慮をすべき」ことを求められているのに、これに全く配慮していないどころか、技術指針さえも遵守していないのである。
この行政事件の担当裁判長は、仮処分異議審において、仮処分決定を取り消した裁判長であり、結果を心配したものの、さすがに、この杜撰な許可手続は放任できないと考えたのか、「『地下水』を巡る処分行政庁の調査や審査及び判断の過程に看過しがたい過誤、欠落がある」とまで述べ、本件許可処分を取消した。
4、考察
この訴訟は、被告県知事が上記「看過しがたい」過誤・欠落がある審査をなしたものであるが、それを曝こうとした住民らの必死の努力が功を奏したものである。勝訴後の住民らの喜び様は、忘れられない。
原告ら住民らは、訴外組合が運営している上安処分場の廃液を採取して検査したり、この審査過程につき情報公開請求して杜撰さを明らかにしたり、三原市・市議会などに訴えて環境保護条例制定運動まで展開している。
私の要請を守ってくれた住民団体の優等生なのであった。
また、この訴訟では、地元地質学者である越智秀二氏から本件処分場用地は、風化花崗岩層であり、裂罅地下水が様々な箇所から湧水が生じていることを、また環境化学・マネジメント学者である中地重晴熊本学園大学教授からは、安定型最終処分場は、安定5品目が対象で有害物質は発生しないとして、底面は素掘りであるが、有機物が付着した廃棄物が埋葬され有害物質が発生する過程等の多くの知見の教授を得た。そして、日弁連は、2007年8月23日付で安定型最終処分場を廃することを求めているが、これも先見の明があったといえるであろう。
最後に、本事件の弁護団は、弁護団事務局長を当事務所の藤井裕弁護士が担い、他に広島弁護士会の環境公害委員会の弁護士ら7名で組織されたものであることを報告する。
※本稿は、青法協機関誌に送付した内容と同文です。
福岡家裁元書記官パワハラ国賠請求事件
福岡支部 井 下 顕
1 福岡家裁の元書記官(男性、定年退職済)を原告として、本年5月、国家賠償請求訴訟を提起した。
元書記官は、1984年入職、2017年に福岡家裁に配属され、後見事務を扱う部署に配属されたが、同部署は極めて繁忙で、同年10月ころから約4か月の間、業務が達成できなかった時は、上司の主任書記官から、「最低の書記官になりたくないならやるべきことをやれ」「1件につき15分で処理すれば、1日に十数件はできるだろう」などと連日叱責された。また、同年10月の超過勤務時間は約109時間に上ったが、主任書記官から「いくら残業しても評価しない」などと言われ、申告ができなかった。
原告は、思い切って、主任の上司の首席書記官に相談したが、首席書記官からは「お前の言い方が気に食わん」「気持ちが弱い」などと言われて対応してもらえず、その直後、主任書記官から「あんたが言ったんやろう」などと指摘され、無視される日々が続いた。
2 翌年2018年以降、原告は不眠に悩まされるようになり、うつ病の診断を受け約1年間休職した。原告は2019年2月に復職し(その後も通院は続いた。)、定年退職間際の2020年12月、改めてパワーハラスメントの事実確認を求める上申書を提出したが、首席書記官からは「パワハラは認められない」と言われ、そのまま翌年2021年3月末日をもって定年退職となったが、同日、口頭で公務災害を申請した。
当職らは(もう一人の相代理人は同期52期で元裁判所書記官)同年6月受任後、公務災害の実施機関である最高裁に対し、パワハラ及び長時間の超過勤務による精神障害の発症を根拠とする証拠資料や意見書を提出するなどしてきたが、2022年9月、最高裁は公務災害と認定した。その理由は主任書記官によるパワハラが原因であるとの説明であった(しかし、首席書記官の監督責任は否定)。
公務災害認定直後、保有個人情報開示請求などを行うも、最高裁からは度々開示期限延長の通知が来て、一向に開示は進まなかった。
当方らが国家賠償請求訴訟を提起して迎えた、本年7月18日の第1回口頭弁論期日の前の週に、1部資料がようやく開示される旨の連絡が来た。
3 国家公務員特別職、すなわち内閣府職員や裁判所職員、防衛省の職員の公務災害請求については、当該手続きは極めて不透明であると言わざるを得ない。裁判所職員の公務災害請求については、実施期間は最高裁であるが、窓口となるのは、いわゆる当該職員が公務災害発生当時所属していた当該の裁判所である。窓口の裁判所は最高裁に言われるがまま対応するだけで、手続きの概要や進捗状況、公務災害認定の理由についても、最高裁の説明をそのまま述べるだけで、請求者側のストレスは溜まる一方である。しかも、最高裁が公務外認定をすれば、おそらく取消訴訟を提起しても棄却されることは明らかであるから、行政段階で公務災害の認定を勝ち取ることなしには、被災職員の救済は図れない。
4 ところで、前記のとおり、原告がパワハラを受けた直後に、首席書記官に相談を行ったが、当該首席書記官の対応のまずさは指摘するまでもないが、その後、原告が改めてパワハラの事実確認の上申を行い、首席書記官がそれを否定したにも関わらず、最高裁が一転してパワハラを認定した経緯は今も不明のままである(これから開示される資料にそれを明らかにするものが含まれている可能性はある)。当方らは当該の説明を一貫して求め続けてきたが、窓口である福岡家裁の説明は要を得ないし、対応のまずさについて、もちろん謝罪等はない。
5 参議院議員の仁比聰平団員が本年4月、参議院の法務委員会で、政府に対し、裁判所職員のサービス残業問題の実態把握を迫っていただいたが、本件事件も、パワハラと合わせ、月100時間を優に超える超過勤務の実態がある。裁判所職員は繁忙部署に配転されれば、超過勤務、サービス残業に苦しんでいる。こうした点でも実態を明らかにしていきたいと考えている。
秋の団総会開催地~大阪支部特集 ①~
大阪における法律家団体の共同行動
大阪支部 藤 木 邦 顕
1 法律家団体共同行動の出発
大阪では、2018年4月以来、改憲に反対する法律家団体の共同行動が続けられている。当時、2017年10月の解散総選挙で、自民・公明・維新の改憲勢力が引き続き衆議院での3分の2を獲得し、2019年7月の参議院選挙までに改憲発議に打って出るのではないかという情勢が生まれていた。この時期まででも、市民運動としては改憲反対の諸勢力が協力して5月3日、11月3日には総がかり実行委員会としての共同集会を持つことはあったが、法律家団体が協力して改憲問題にあたることはなく、それぞれの友好団体・労働組合の動きを通じての運動参加であった。大阪弁護士会には憲法問題特別委員会があり、連続講座や市民向けシンポを開催していたが、弁護士会の性質上、安倍政権と政治的に対決することとなる改憲反対の運動を構築するものではなかった。そのため、法律家団体が共同していることを示すのが、会内に対しての宣伝となるとも考えて、団支部より各団体へのよびかけをしたものである。
2 5年間の活動
集まった団体は、団支部、青法協大阪支部、民主法律協会、大阪社会文化法律センター、大阪弁護士九条の会である。2018年4月23日に結成総会をしたほか、ほぼ2カ月に1回のペースで各団体の幹事長・事務局長が集まり、情勢・運動状況を見たうえで、時宜にかなった企画や宣伝行動をするなどしてきた。2019年4月以降の活動は以下のとおりである。
2019年6月24日 街宣行動 2人掛け合いで宣伝するチャット宣伝を取り入れ、若手弁護士が交代で宣伝にあたったが、同じ原稿でも弁士それぞれの特色が出て、聞いている方も楽しくなる宣伝であった。
10月29日 同年の参議院選挙後、日韓問題について、日韓請求権協定によって個人賠償請求権も消滅したのではないかという疑問から反韓国感情が弁護士の中にもあること、反韓国の世論をつくって改憲ムードを高めるのが改憲派のねらいであろうとの意見が各団体からも出た。そこで、徴用工事件判決のみならず、日韓関係の歴史的事実は何かを踏まえ、米朝・中朝・日韓など構図が混線する北東アジアの平和構築について、法律家としても認識をもつため、康講師をお招きし、「日韓関係の歴史的経緯と北東アジアの平和構築」とのテーマで、徴用工判決問題をはじめ、日韓関係と今後の北東アジアの平和をどう作るかについて講演をいただいた。
2020年1月29日 淀屋橋共同街頭宣伝 国会では「桜を見る会」問題やカジノ汚職、東京高検検事長定年延長などが出ており、改憲反対と言いながら、憲法問題にとどまらない宣伝となった。
9月23日 同年11月1日に大阪市廃止・特別区設置のいわゆる大阪都構想の第二回住民投票が行われることになった。橋下徹元府知事・大阪市長のもとで提起された大阪都構想は、一度は住民投票で否決されたが、大阪維新の会が少しだけの手なおしで再度の挑戦をしてきたものである。維新は、大阪の住民投票で勝利して、その手法を安倍・菅政権下の憲法改正国民投票に売り込もうとしていたところがあり、五団体としても都構想の問題点を取材し発言を続けていた幸田泉氏を講師に招いて講演会を開催した。住民投票については、団支部をはじめ宣伝や反対票よびかけなどで運動に参加し、約17000票差で維新提案が否決された。
2021年7月 大阪市のエル大阪ギャラリーで「表現の不自由展かんさい」が開催されることとなり、主催者から団支部に対して当初警備の応援要請があった。
6月段階では、名古屋で問題になったような会場使用許可取り消しはないのではないかという観測であったが、会館指定管理者が知事の意向を受けて許可取り消しに出たため、団支部と社文センターを中心に執行停止申立弁護団の組織と3日間にわたる会場警備の体制をとった。執行停止事件は、当時の団支部支部長・幹事長・事務局長と社文センター事務局長が弁護団となって申し立て、地裁決定を得たが、指定管理者側が最高裁まで争い、結局開催中の7月17日に最高裁が許可抗告の却下決定を下して会場使用が確定した。3日間の不自由展開催中、五団体傘下の弁護士が交代で警備にあたり、2人ほど会場にチケットなしで入ろうとした侵入者を労組の応援も得て阻止したほか、不審な郵送物が送られてきたときにも会館と交渉して続行を勝ち取った。
10月8日 総選挙に際して、衆議院選挙で立憲野党の共闘を求める共同アピール「野党共闘と投票率アップで政治を変えよう!」を発出し、司法記者クラブに持ち込んだ。
2022年4月18日 同年2月25日に始まったロシアのウクライナ侵略が日本の改憲論議や防衛力強化・敵基地攻撃能力保有と大きく関係するであろうという認識のもとに、東京新聞論説委員の半田滋氏を講師に「ウクライナ問題と日本国憲法への影響」と題して講演会を開催した。
9月5日 同年7月8日、参議院選挙応援演説に奈良市に来ていた安倍晋三元首相が銃撃されて死亡するという事件が起き、岸田政権は安倍氏を国葬に付すと発表した。五団体では、7月27日の事務局会議で国葬問題を議論し、安倍国葬反対、弔意の強制をしないことを求める共同声明を発出した。各団体とも文案について積極的な議論の上で意見が出され、文字通りの共同声明となった。
2023年3月6日 安倍銃撃事件以後、自民党をはじめとする政治家と統一協会との関係が問題となったが、五団体としては統一協会をはじめとする宗教右派が、各地の自治体で家庭教育支援条例などの制定運動をするなど保守的家庭観を広げる運動をして、これを自民党の安倍派などが応援しているという問題を明らかにすることとした。そして、宗教右派の実態を取材し雑誌「世界」などへ寄稿している富山大学講師の斉藤正巳氏を講師に「ジェンダー問題と宗教右派」をテーマの講演会を開催した。
6月23日 岸田政権が2022年12月に安保三文書を決定し、5年間にわたる大軍拡と財源確保法を制定する中で、五団体として政権の戦略の中心になっている安保三文書の危険性を知らせる宣伝物を作成することが必要と議論し、団支部の若手を中心にビラ案を作成し、共同街頭宣伝を行った。
3 法律家団体共同行動の目標
以上のように、大阪における法律家団体の共同行動は5年にわたって続いている。国会の議席分布からみて明文改憲の危険は続いている。青法協、社会文化法律センターや九条の会も巻き込んで、情勢をみながら共同行動をとることは、今後改憲問題が緊迫した時に必ず力を発揮するであろう。また、大阪では、大阪府・大阪市の知事・市長と参議院選挙区で各回4議席中2議席をとる維新勢力とのたたかいが必要であり、大阪都構想問題で共同行動ができたことは重要である。また、安倍国葬問題や統一協会・宗教右派の問題を取り上げて共同声明を出せたことも五団体が改憲の背景にある政治勢力についての認識を一致させられたと思う。
地方団員は問う「常任幹事会は面白い?」(後編)
福島支部 本部次長 鈴 木 雅 貴
4 7月常幹にて「常幹活性化策」を発表!
事務局会議にて常幹活性化策を検討し、7月常幹で発表しました(7月常幹資料3-1「常幹出席、100名30支部を達成する3つのステップ」、団員専用HPにて掲載)。
その内容を報告します。
20年3月より、オンライン(ZOOM)参加が導入されました。オンライン参加の導入は、出席者数増加に寄与しています。
オンライン参加導入前後を含む全35回の常幹議事録を分析したところ、導入前は平均出席者数40.8名だったのに対し、導入後は平均55.0名に増加しています。
オンライン参加の利点は、移動に時間が掛からず、どこでも出席できることにあります。そのため、移動時間が長い地方支部の出席者が増えているかと思いきや、そうとも言い切れませんでした。
オンライン参加導入前の平均出席支部数は18.2支部、導入後は平均19.1支部です。出席者数の伸びと比べて、出席支部数はほとんど横ばいです。
この理由を探るため、支部ごとの出席率をマップ化してみました。
すると、支部ごとの出欠は固定化されており、二極化していることが分かりました。
例えば、私の属する福島支部は、35回中4回しか出席がありません。この理由は、35回とも私が福島支部唯一の常任幹事でありながら、出席しなくてもいいかと思い欠席を続けておりました。今年2月以降は次長になるので毎回出席しています。自覚が足りず、申し訳なさを感じます。
出席率が高い支部は、マップの色の濃いところです。例えば、滋賀支部は35回中32回出席です。
執行部では、出席者数と出席支部数の分析を踏まえ、①団員に常幹の開催を周知すること、②一人ひとりの発言機会を確保する双方向の会議の実現、③常幹を楽しく充実した内容とすることの3点を、運営において求められる工夫として整理しました。
その上で、具体的な取り組みの提案として、以下の3点を取り組み、「常幹出席、100名30支部」の達成を目指すことを提案しました。
① 特別報告実施を団員にメールで周知
② オンライン分散会の積極的な活用(運用の改善も併せて実施)
③ 常幹終了後にアンケートを実施し、次回常幹にフィードバック
7月常幹では、執行部提案について議論し、早速、常幹終了直後に実施したオンラインアンケートでは、常幹の運営方法の改善に資する貴重なご意見をいただきました。
5 地方団員は問う「常任幹事会は面白い?」
7月常幹の翌日、執行部で、岩田団長から、2005年の滋賀支部の故玉木昌美団員の団通信が紹介され、執行部内で常幹活性化に向けてさらに活発な意見交換が行われました。
その団通信のタイトルは「常任幹事会は面白い? 常幹及び支部活動活性化のために」(団通信1185号2005年12月11日)です。私の団通信のタイトルは、今も昔も常幹を面白くしようと言っている団員がいることを紹介したいがためのものでした。
ぜひ故玉木団員の投稿を御覧になってください。
常幹に出席することで、刺激を受け、地方でも呼応する活動をしなくてはという気持ちになる。実際に地方での取り組みを行ってみると、常幹で報告せねばという気持ちになる。その相乗効果から、支部活動の活性化をはかることができると提案されています。
他方、常幹の課題も率直に指摘されています。
また、会議を午後5時きっかりに終了して、2時間ほど懇親会の時間をとり、団だけで一部屋借りて、酒を飲みながら、各地、各人の報告、意見を述べるようにしたらどうかという提案は、個人的に大変良いかと思いました(飲酒するかどうかは各人の自由)。
最後の締めくくりは、「『参加してよかった、いい話が聞けて元気をもらった。』といえる常幹にしていき、全国各支部の参加を確保したいものである。」というものです。これはまさに現執行部が提案していることそのものです。
先ほど、出席率が高い支部の例として滋賀支部を挙げましたが、先輩団員の取り組みがあってのことなのだなと理解しました。
常幹を通じて、団員同士、打てば響くようなやり取りができると良いですし、団員ならできると確信しています。
常幹には、常任幹事以外の団員も出席し、意見を述べることができ(規約8条)、実際の運用においてもそのようになっています。
そのため、全団員の皆様におかれましては、常幹に気軽に参加して、良い刺激を受け、日々の活動に活かしてもらいたいと思います。
学習会報告
関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺事件を学んで
神奈川支部 大 﨑 茉 耶
1 はじめに
8月3日、ジャーナリストの加藤直樹さんをお招きした、『関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年~歴史の事実を知り現代に生かす』に参加しました。この学習会に参加するまでは、本事件については悲惨な歴史的事実という程度の認識でした。
しかし、この虐殺が生じたメカニズムやこの歴史自体への扱い、そして近年の日本で繰り返されようとしている恐ろしさについて学び、単なる歴史的事実で片付けてはいけないものだと実感いたしました。
2 本虐殺事件を考える三つのポイント
加藤さんは、朝鮮人虐殺事件の意味を考える上でのポイントを①流言と虐殺の背景にある植民地支配と民族差別。②制服警官が流言を拡散し、軍自ら虐殺する等の行政の責任。③政府による事件の矮小化・隠ぺいの三つに整理しました。
都心が壊滅状態になる程の大火災を伴った関東大震災において、当初は「社会主義者が放火した」「朝鮮人が爆弾を持って放火した」という二つの流言が生まれたそうですが、前者はまもなく立ち消え、後者だけが拡散されました。冷静になれば、なぜ大地震でタイミングよく爆弾を持っていたのか、なぜ朝鮮人だと分かったのか等、不自然な点は沢山あります。また、当初は流言を信じた警察や政府も、数日以内に流言に気づき、朝鮮人の保護や報道規制をかけました。それでも、広まった流言はすぐに収まらず、被害は甚大なものになっています。
現在、日本には植民地はありません。しかし、植民地がなくとも、民族に対する差別はたしかに存在していると感じます。そして政府は、当時も今もこの虐殺事件から目を背け、なるべく情報を国民から隠そうとしています。100年前に流言による虐殺が生じたベース、虐殺の事実を顧みない姿勢といった、同じ過ちを繰り返すだけの十分な基盤が、残念ながら今の日本にはあると感じました。
3 学ぶべき教訓
加藤さんのまとめでは、①災害時の差別的流言を許さないこと②日頃から民族差別が許されない社会をつくること③行政の姿勢を注視することが、我々がこの事件から学ぶべき教訓と紹介されました。
①については、東日本大震災の際、中国人強盗団が被災地を襲っているとの流言が拡散され、それを信じた自警団が被災地へ赴き、中国人を見つけたら殺して瓦礫に埋めるとまで発言しています。ここで恐ろしいと感じたのは、現に被災して気が動転している人々のみならず、外から冷静に被災地の情報を見る事ができるはずの者が流言をそのまま信じ、実際に殺害をほのめかして現地までわざわざ赴いていることです。大虐殺の危険性はすぐそこまで迫っていた、という現実から目を背けてはいけないと思いました。
②③については、ただでさえ混乱下にある災害時に、情報の真偽を判断する材料は何かといえば、最後は自分が普段接している社会での常識・認識になると思います。加藤さんお話でも、流言が広まるかどうかは、社会が何に対して信憑性を置いているかに影響されるとのことでした。いざ災害が生じた場合に差別的流言を許さないためには、日ごろから②③を意識して生活する必要があります。特に、首長がどのような態度をとっているのかは、社会の認識や災害時の行政提供情報の内容にも影響しますので、動向を注視し、必要な批判を加えるべきだと感じました。
4 最近の懸念
ここで、私が最近気になっている関連ニュースをご紹介します。近年、フェイクニュースに関する規制が話題 となる中で、X(旧Twitter)に導入された「コミュニティノート」という機能に私は不安を抱いています。これは、他者の投稿に対し、注釈をつけ、これは真実ではない可能性があるという背景事情を提供することができる、情報の正確性を担保するために導入された機能です。
しかし、この目的だけが一人歩きし、現在はコミュニティノートに書いてあることこそが真実であるとユーザーに認識されている例が散見されます。コミュニティノートの真偽は、閲覧した各ユーザーの評価によって決まるという運用ですが、結局「よりそれっぽいこと」を書いたものが評価を集め、真偽とは異なる視点でその記載の信憑性が決まってしまう可能性があります。これは、例えば本虐殺事件のような外国人への差別意識が社会に蔓延していると、100年前の歴史を繰り返すことになりかねません。
5 最後に
現代には、情報を一瞬で共有できるツールが山ほどあります。これは、単純に流言の拡散力が100年前から飛躍的に上がっていることを意味するだけでなく、影響力ある人物による発信や、画像や映像を添付することで流言の信憑性が簡単に増すような状況となっています。
この差別が簡単に拡散する時代で、悲惨な虐殺を繰り返さないためにはどうしたら良いのか、虐殺の事実と向き合い、反省を学ぶことをきっかけに、自分も考えていきたいです。
「関東大震災100年・朝鮮人虐殺問題を考える学習会」の感想
神奈川支部 河 西 拓 哉
1.はじめに
8月3日に開催された「関東大震災100年・朝鮮人虐殺問題を考える学習会」に参加してきました。
関東大震災の朝鮮人虐殺問題とは、1923年9月1日に発生した関東大震災の際に、「朝鮮人が各地で放火」などのデマが流れ、軍や警察、自警団の民衆により、多くの朝鮮人が虐殺されたという問題です。この朝鮮人虐殺はヘイトスピーチからジェノサイドに発展した事件で、現代もなお在日コリアンなどの外国籍住民に対するヘイトスピーチが横行していることや、小池都知事が2017年以降、「さまざまな歴史的な認識がある」などとさも朝鮮人虐殺について両論あるかのように述べて関東大震災朝鮮人虐殺の追悼式典への追悼文送付を取りやめるなどしていることなどからすると、現代もなお続く問題と言えます。
2.朝鮮人虐殺問題を考える上で重要な3つのポイントについて
講師の加藤直樹先生からは、まず、朝鮮人虐殺問題を考える上で重要な3つのポイントを中心に解説して頂きました。一つ目は、【流言と虐殺の背景には民族差別があり、差別の背景には植民地支配があったこと】、二つ目は、【警察が流言を拡散し、軍は自ら虐殺するなど、行政が関与していたこと】、三つ目は、【政府が事件の矮小化・隠蔽を図り、その結果、今もわからないことが多くあること】です。
一つ目のポイントについては、1919年の3.1独立運動以降、植民地支配に対する朝鮮人の抵抗運動への恐怖とともに、メディアなどによって「不逞鮮人」といったヘイトスピーチが広まり、これにより人々の差別意識が煽られたことで、朝鮮人に関する流言が広まりやすい状況が作られ、朝鮮人が殺して良い“怪物”に仕立て上げられたといったことをお話頂きました。
二つ目のポイントについては、警察をはじめとする“治安エリート”が、民衆がパニックを起こすことに動揺していわゆる“エリートパニック”を起こし、警察は「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などの流言を自ら拡散して流言に信ぴょう性を与え、一方、軍隊は、シベリアや満州でゲリラ戦を経験していたため、そのような流言を信じて躊躇なくシステマチックに丸腰の朝鮮人を殺害してしまったといったことをお話頂きました。
三つ目のポイントについては、政府が朝鮮人虐殺事件を矮小化・隠ぺいするために、朝鮮人が実際に犯罪を行っていたかのような風説をメディアに報道させたり、虐殺された朝鮮人の人数がわからないように虐殺被害者の遺体を被災者の遺体と区別せずに処分させたりしたことや、警察が流言の拡散に加担したことを責任追及されないよう、警察に反抗的な者を除いて、朝鮮人を殺した自警団を逮捕しなかったことなどをお話頂きました。
これらのお話を聞いて、現代の日本にそのまま当てはまることが多くあるように感じました。
まず、外国籍住民に対するヘイトスピーチ等の差別的言動は今もなお横行しており、東日本大震災の時には「外国人の窃盗団が盗みを働いている」などのデマが広がりましたし、右翼活動家などでなくとも、「外国人が増えると犯罪が増える」といった言葉を悪気なく言っている人を見ることは少なくありません。また、原発事故の対応や新型コロナウイルスの対応においても、エリートパニックについて指摘されています。さらに、入管法改悪に際して、難民認定率の著しい低さ等について入管を追及するような報道が増えると、難民申請者の犯罪が多いかのような印象を与えるためか、一部の難民申請者の犯罪を殊更に取り上げるなどして恣意的に情報を流したということもありました。
このように、現代の日本においても、朝鮮人虐殺問題の原因となった事情と類似の事情は存在し、ジェノサイドが再度起きる可能性は否定できません。このため、二度と同じことを繰り返さないためにも、朝鮮人虐殺問題は日本市民の誰もが知らなければならないものと考えます。
3.朝鮮人虐殺否定論について
次に朝鮮人虐殺否定論についてもお話頂きました。以下、要点を箇条書きにします。
・2008年ごろに工藤美代子氏による朝鮮人虐殺否定論が湧いて出てきた。
・否定論の代表的なものは、「朝鮮人の暴動があったため、それに対抗するために朝鮮人を殺害した」というようなもので、虐殺研究書「現代史資料6関東大震災と朝鮮人」に流言記事として掲載されていた新聞記事等がその証拠とされた。
・関東大震災発生当時は東京市内の多くの新聞社が壊滅し、残った3社の新聞社が流言をそのまま記事にしていたため、「伊豆諸島沈没」などの虚報が飛び交っている状況だった。
・震災の2日後の9月3日には、警視庁は新聞各社に、朝鮮人暴動は流言であるとして、これを流さないよう求めていた。
・警視庁が1925年にまとめた「大正大震火災誌」には、朝鮮人暴動という流言を信じた人々が自警団を組織し、朝鮮人を殺傷するに至った、これは大変な痛恨事だったという趣旨の記載があった。
このように、朝鮮人虐殺否定論は明らかなデマなのですが、2017年に小池百合子東京都知事が、朝鮮人虐殺否定論の影響からか、朝鮮人虐殺について両論あり得るかのようなことを言いだし、それ以降、関東大震災朝鮮人虐殺の追悼式典への追悼文送付を取りやめてしまいました。虐殺否定論それ自体許されないものであることはもちろんのこと、両論あり得るかのような態度を取ることも、ジェノサイドの被害者である朝鮮人が加害者であった可能性を認め、「外国人は犯罪を犯す」というヘイトスピーチを“教訓”に仕立て上げることに加担するもので、決して許されるものではないと考えます。
なお、虐殺否定論のトリックについては、加藤先生の著書「TRICK 『朝鮮人虐殺』をなかったことにしたい人たち」に詳しく書かれております。
4.最後に
講演の最後に、加藤先生に、どのような動きの中で朝鮮人虐殺否定論が出てきたのかを質問したところ、加藤先生からは、虐殺否定論は工藤美代子氏が発明したものだが、虐殺否定の動きは昔からあり、歴史修正主義者たちは歴史修正の隙を伺っていたのではないか、慰安婦強制連行や南京大虐殺の件が歴史修正主義者たちの成功体験になっており、「次は朝鮮人虐殺だ」となったのではないかといったことをお答えいただきました。
朝鮮人虐殺問題を覆い隠そうとする試みは、究極的には社会を壊すことにつながりかねないため、一市民として、これに積極的に対抗していく必要があると強く感じました。この問題についてより知識を深めるために、8月27日の「関東大震災100 年・朝鮮人虐殺問題を考えるフィールドワーク」にも参加しようと思います。
安保三文書による自衛隊の変貌
国土防衛・専守防衛型から他国攻撃型へ(中)
広島支部 井 上 正 信
統合防空ミサイル防衛能力
既存のレーダーの能力向上や新型レーダー導入による、極超音速滑空ミサイル等の対処能力を向上させます。防衛力整備計画別表2によると、陸自03式中距離対空ミサイル(中SAM)の能力向上型開発により、極超音速滑空ミサイルや弾道ミサイルへの対処能力を向上させる、イージスシステム搭載艦2隻建造、E-2D早期警戒機を取得、SM-3ブロックⅡA、PAC-3MSE、SM6ミサイルの導入が挙げられています。
このほか、高出力レーザー、高出力マイクロ波等の指向性エネルギー兵器を開発し、大量の無人機による攻撃へ対処することを述べます。
統合防空ミサイル防衛には、ISRTによる情報収集と併せて、敵標的を攻撃するための戦闘情報ネットワークが不可欠です。前項で述べたオペレーションサイクルです。防衛力整備計画はこのために、護衛艦や航空機等(シューターと称します)の射撃ネットワークシステム(FCネットワークシステム FCとは射撃管制のこと)を取得、共同交戦能力(CEC)を保持すると述べています。
これらにより、E2D早期警戒機、地上レーダー、無人偵察機、衛星などのセンサーとシューターをネットワークでリアルタイムに情報をリンクさせ、敵標的を攻撃します。F35A/Bは多機能先進データリンク機能(MADL)を備えており、シューターだけではなくセンサーとしても機能します。
30大綱では、スタンド・オフミサイルの保有だけではなく、新型護衛艦(まや型2隻)、対艦ミサイルSM6、E2D早期警戒機へ共同交戦能力(CEC)が付与されました。米軍との共同交戦を可能にしようというものです。
安保三文書はこれを更に進めて反撃能力を保有・行使をするため、統合防空ミサイル防衛へと進化させるのです。
スタンド・オフ防衛能力は、もともと30大綱で強調されたものでした。しかし30大綱当時には敵基地攻撃能力保有の政策決定をしていなかったため、30大綱はスタンド・オフ防衛能力について、「自衛隊員の安全を確保しつつ、我が国への効果的に阻止をする」と、いかにも「嘘っぽい」誤魔化しのような説明となっていました。
しかし安保三文書は反撃能力保有の決定をしたので、そのような誤魔化しをする必要はなくなりました。
防衛力整備計画では、「統合防空ミサイル防衛能力」の項において、スタンド・オフ防衛能力を活用した反撃能力を行使すると述べています。そして、反撃能力行使の運用を(3自衛隊の)統合運用を前提とした一元的な指揮統制のもとで行うと述べます。
反撃能力は台湾有事での対中国武力紛争を想定した軍事能力で、2016年以降進められてきた防衛力の南西シフトの具体化(与那国島への陸自沿岸監視隊を手始めに、奄美・宮古島・石垣島への対艦ミサイル部隊配備、与那国島への陸自中SAM部隊配備計画、沖縄勝連陸自分屯地への対艦ミサイル部隊配備と新たなミサイル連隊編成、第15旅団を増員し二個連隊の師団化など)により、南西諸島はいずれも近い将来中国大陸への攻撃拠点と化すでしょう。
(1) 無人アセット防衛能力
ISRTを実行するための様々な種類の無人偵察機、攻撃型の無人機、無人水上艇、無人潜水艇、無人車輛などを取得します。これらの無人機は有人装備と連携した作戦を想定しています。
30年代には更新時期を迎える国産のF2主力戦闘爆撃機の後継次期主力戦闘爆撃機を英国とイタリアを入れて共同開発しますが、この次期主力戦闘爆撃機は無人攻撃機との連携した作戦を可能にします。これは敵国領域へまず無人機を侵入させて、敵防空網を攻撃制圧したうえで、有人攻撃機が第二撃を加える作戦構想です。あるいは無人航空機と有人戦闘機とが連携しながら敵航空機を迎撃するなどです。
(2) 領域横断作戦能力
領域横断作戦とは、陸・海・空の従来の戦闘領域に加えて、宇宙・サイバー・電磁波領域を統合して行われる新たな戦闘様式です。2015年4月の新ガイドラインで初めて導入され、30大綱では防衛政策の中心に位置づけられた軍事的能力です。
もともとは米国が中国の接近阻止領域拒否(A2AD)戦略を打ち破るために編み出した新しい戦闘様式です。防衛省自衛隊は領域横断作戦を2017年度には本格的に研究していました(統合幕僚長への統合幕僚学校による平成29年度指定研究成果報告書2017.9)。
日米による領域横断作戦を合意した新ガイドラインやこれを中心に置いた30防衛大綱は、中国との本格的な軍事作戦を想定して策定されたものであると言ってよいでしょう。
領域横断作戦には、陸・海・空に加えて,宇宙・サイバー・電磁波領域での戦闘とそのための高度な戦闘情報ネットワークの構築、敵国のこの能力を攻撃し阻害する能力(電子戦能力)が不可欠です。
防衛力整備計画別表2には、護衛艦などの従来の装備に加えて、F35A,B、F-15能力向上型、スタンド・オフ電子戦機(空自C2輸送機を改造)、ネットワーク電子戦システム(NEWS)を挙げています。敵国の衛星機能を阻害したり、レーダー、通信能力を無力化する電子戦を重視しています。
人工衛星は、早期警戒、偵察、通信、測位の機能の種類があり、戦闘情報ネットワークと精密誘導攻撃にとって死活的な機能を持っています。そのため現代戦闘では真っ先に衛星機能を阻害する攻撃から始まると言われています。
安保三文書はこの軍事能力を重視します。そのために、サイバー防衛部隊を4000人にも増員し、これを含めて更に防衛省自衛隊のサイバー要員を2万人体制にすると述べています。しかし、サイバー技術者は民間企業でも不足しており、防衛省、自衛隊が2万人ものサイバー要員を抱え込めば、民間企業は必要な技術者を確保できなくなるのではないでしょうか。私にはかなりの「大風呂敷」に思えます。
(3)指揮統制・情報関連機能
統合ミサイル防空能力にしても、領域横断作戦にしても、3自衛隊の部隊の一元的で、且つ迅速なリアルタイムでの統合指揮が不可欠です。そのことはこれまで述べたことでお分かりいただけることでしょう。そのためにNDSは自衛隊に統合司令部を設置すると述べます。当然統合司令官を置くことになります。
統合司令部、統合司令官の設置は、米軍との統合戦闘を可能にするためのものです。米国がかねてからこれを強く求めていました。三文書閣議決定の1か月後に開かれた日米2+2共同発表文は「起こり得るあらゆる事態に適時かつ統合された形で対処するため」統合司令部設置の決定を歓迎すると述べてその狙いを隠しません。
現在は、自衛隊の最高の地位にあるのが統合幕僚長です。それを支えるのが統合幕僚監部です。統合幕僚長は防衛大臣や総理大臣に対するアドバイザーであり、且つ統合任務部隊を指揮する指揮官でもあります。しかし現代戦闘では、二つの任務を掛け持ちするほどの余裕はありません。その結果統合幕僚長はアドバイザーに徹し、自衛隊を統合指揮する統合司令官と統合司令部を設置することになりました。
NDSは、現代戦の新たな戦闘様式として、領域横断作戦、反撃能力と並んで「ハイブリッド戦」を重視しています。国家安全保障戦略では、「Ⅳ我が国が優先する戦略的なアプローチ」を構成する主要な要素として「ハイブリッド戦」を挙げ、サイバー・宇宙、情報分野の取組を強化すると述べ、国家防衛戦略では、「偽旗作戦を始めとする情報戦を含むハイブリッド戦の展開」と述べて、「ハイブリッド戦」を情報戦の分野に位置づけています。
「ハイブリッド戦」とは、正規軍による戦闘だけではなく、国籍を隠した不明部隊による作戦、サイバー攻撃、電子戦、偽情報の流布やSNSなどを利用した相手国の世論への影響力行使などを指しています。偽情報の流布やSNSなどを利用した相手国の世論への影響力行使は認知戦とも言われ、相手国の市民の意識の中へ、厭戦気分や政治指導者への不信感を植え付ける等戦争遂行意思を阻害する活動や、敵国による認知戦への対処が現代戦では重要視されます。
防衛力整備計画では「認知領域を含む情報戦等」との項目を設けています。情報戦に対処できる体制・態勢をつくるとして、その中核となる情報本部の体制を強化させます。また、SNS上の情報等を自動収集する機能の整 備を図ります。
これらの能力は敵国に向けられるだけではなく、私たちも対象となります。防衛省はAI技術を使い、SNSで国内世論を誘導する工作の研究に着手したことが共同通信で報道されました(2022年12月10日付共同通信配信記事)。インターネット上で影響力のある「インフルエンサー」を使って、無意識のうちに防衛省に有利な情報を発信するよう仕向け、防衛政策への支持を広げたり、有事で特定の国への敵愾心を醸成する、国民の反戦・厭戦機運を払拭したりするネット空間のトレンド作りを目指す、というものです。これはステルスマーケティングの手法で、いわば禁じ手になります。
これらの情報戦能力のため情報本部の情報戦対処能力を強化します。
国家防衛戦略、防衛力整備計画は積極的サイバー防衛を重視します。相手からのサイバー攻撃を防御するだけではなく、相手のサイバー攻撃能力へこちらから攻撃を仕掛けることです。サイバー攻撃は国内のパソコンを経由して行われることがあり、積極的サイバー防衛のためには、常時サイバー空間を監視し、そのために市民や企業のパソコンに侵入する必要が出てきます。これは既存の法令(不正アクセス禁止法、)で禁止されており、また憲法上の通信の秘密を侵害することになり、電気通信事業法に違反します。積極サイバー防衛のためにはこれらの法令の改正が不可欠になります。
宇宙領域での作戦を強化するため、現在ある宇宙領域専門部隊(宇宙作戦群)の能力を強化し、将官クラスを指揮官とする宇宙領域専門部隊を編成し、航空自衛隊を宇宙航空自衛隊と名称変更します。自衛隊の宇宙作戦は、宇宙空間の監視(宇宙領域把握 SDA)です。これにより得たデータを日米が共有するため、米宇宙軍と連携しており、米宇宙軍には航空自衛隊から二佐が連絡将校として派遣されています。自衛隊の活動は米国の宇宙作戦の基礎的なデータとなります。(続く)
公開書簡 「九条の会」への感謝と期待
埼玉支部 大 久 保 賢 一
はじめに
8月3日、「九条の会」が「岸田政権の軍拡に反対し憲法改悪を阻止する市民の総決起の秋を創ろう」という声明を発出している。この小論は、この声明に関連して、「九条の会」への感謝と期待を述べる公開書簡である。
「九条の会」に対する感謝とは、この間、改憲勢力の猛烈な攻撃が継続しているにもかかわらず、明文改憲を許していないのは、「九条の会」の存在と活動が大きく寄与していると思っているからである。期待というのは、核戦争の危機が迫っている状況の中で、核兵器廃絶の課題もその視野に入れて欲しいということである。
「九条の会」の呼びかけ
「九条の会」は、岸田首相は政権延命のために秋にも解散を狙っている。解散・総選挙の結果、維新の会が野党第一党になるようなことがあれば、軍拡や改憲の企てが進行する危険がある。今、私たちは、軍拡と改憲の戦争する国か、憲法の人権と民主主義が活かされる平和な国かの岐路に立っている、との問題意識のもとで「九条の会大集会―大軍拡反対!憲法改悪を止めよう!」の開催を提起している。私は、この問題意識を共有するし、埼玉の所沢で「九条の会」にかかわる者の一人として、大集会の成功に尽力したいと思う。
そして、この大集会が「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」と「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」との共同で開催されることにも、この集会をステップにして11月を「軍拡反対、岸田改憲阻止の総行動月間」とすることにも大賛成である。「安保法制反対」の時に比して、「大軍拡反対」の反対運動が立ち遅れているように見えるので、ぜひ、この取組を成功させたいとも思っている。
けれども、私は、この声明に対して、注文もあるし、更には、「九条の会」への期待を述べたいのである。
この「声明」に欠落していること
この「声明」には、核戦争あるいは核兵器という単語は出てこない。要するに、「核兵器」については何も語られていないのである。私は、「九条の会」は憲法9条の改定を阻止するための運動体ではあるが、事の性質上、核兵器廃絶を視野に置くのは当然だと思っているので、この「声明」が何も触れていないことに強い違和感を覚えているのである。内部でどのような議論が行われているのかは知る由もないが、「戦争する国」か「平和な国か」の岐路に立っているとの情勢認識を述べながら、核兵器使用の危機にも核兵器廃絶についても何も記述しないということへの違和感である。
世界を覆う危機意識
グテーレス国連事務総長は、8月6日の広島平和記念式典で、「核戦争勃発の危機を知らせる鐘が再び世界に鳴り響いている今、より多くの指導者たちが、真剣に事態と向き合わなくてはならない」とスピーチしている。彼は、就任以来、同趣旨の警告を繰り返している。米国の科学者たちの「終末時計90秒」は多くの人に知られている。核兵器が使用される危険性が極めて高いという情勢認識は、昨年のNPT再検討会議でも確認されている。「世界には今なお約1万2500発の核兵器が存在している。その廃絶は、人類の死活にかかわる喫緊の課題である」というのは、今年の原水爆禁止世界大会の国際会議宣言の一節である。国際社会では、「核兵器使用」や「核戦争勃発」が真剣に憂慮され、核兵器廃絶は喫緊の課題とされているのである。
その危機感は世論調査にも現れている。『毎日新聞』
8月8日付朝刊は、社会調査研究センターが、8月6日は広島原爆の日であることを指摘したうえで、世界のどこかで核兵器が使用される恐怖を感じるかを尋ねたところ、「感じる」が82%、「感じない」は7%、「分からない」11%だった。「日本が核戦争に巻き込まれるかどうか恐怖を感じるか」との質問には、「感じる」が70%以上にのぼり、「感じない」の12%を大きく上回り、「わからない」も16%あったとの調査結果を伝えている。人々は、核戦争の危機を体感しているのであろう。
こういう状況の中で、9条改憲が問われているのである。その状況を無視したまま改憲問題を語ることは、「何か大事なことを忘れている」ことになるであろう。
原爆投下と9条制定
1946年夏の制憲議会において次のような政府答弁が幣原喜重郎によって行われていた。
原子爆弾というものが発見されただけでも、戦争論者に対して、再考を促すことになる。…日本は今や、徹底的な平和運動の先頭に立って、大きな旗を担いで進んで行くものである。戦争を放棄するということになると、一切の軍備は不要になる。軍備が不要になれば、我々が従来軍備のために費やしていた費用はこれもまた当然に不要になる。
当時の政府は次のような解説をしていた。
一度び戦争が起これば人道は無視され、個人の尊厳と基本的人権は蹂躙され、文明は抹殺されてしまう。原子爆弾の出現は、戦争の可能性を拡大するか、または逆に戦争の原因を終息せしめるかの重大な段階に達したのであるが、識者は、まず文明が戦争を抹殺しなければ、やがて戦争が文明を抹殺するであろうことを真剣に憂えているのである。ここに、本章(2章・9条)の有する重大な積極的意義を知るのである(「新憲法の解説」・1946年11月)。
これらはほんの一例である。憲法9条の背景に「核のホロコースト」があったことは多くの識者によって指摘されている。
また、米国で第9条の会(Article 9 Society)を創設したチャールズ・オーバービー(Charles M. Overby)は、広島平和記念資料館を訪れ原子爆弾の悲惨さに衝撃を受け、日本国憲法9条の理念に感銘を受けたというエピソードも忘れてはならない。
結論
9条誕生の一要因として、原爆の発明とその使用があった。9条は「核の時代」の刻印を受けているのである。戦争を廃棄しなければ人類が消滅するという時代の刻印である。自分も含むヒトという種が絶滅しないように、9条は制定されたのである。だから、そのことを視野に入れての護憲運動、更には、徹底した非軍事平和思想の産物である日本国憲法9条の世界化が求められるのである。
非軍事平和思想が徹底されれば、核兵器はなくなることになる。けれども、核兵器があたかも「平和を維持するための道具」であるかのように扱われ、核兵器に依存しての安全保障政策が展開されている状況下では、核兵器廃絶を抜きにしたままの非軍事平和思想の展開は「画竜点睛を欠く」ことになる。
私は、今、「戦争か平和か」もさることながら、「核兵器に依存する平和か」それとも「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼する平和か」の大分岐にあると思っている。政府は「戦争を抑止するための核兵器」を言っているのである。核抑止論である。
改憲勢力は、米国の核の傘という「核兵器に依存する平和」を推進しているのである。「平和を望むなら核兵器に依存せよ」というのである。日本国憲法の「平和を愛する諸国民の公正と信義による平和」はその根源的な対決軸なのである。だから、彼らは、9条を改廃しようとするのである。
そして、自衛のための実力が容認される限り、核兵器は廃絶されないであろう。核兵器は「絶対的最終兵器」だからである。政府は、自衛のためであれば核兵器の保有も使用も許されるとしている。こうして、私たちは、何時、政府の行為によって、核戦争の惨禍に晒されるか不明な状況の中での生活を強いられ続けるのである。私はそれに耐えられない。
だから、私は、「九条の会」に核兵器廃絶を視野に入れた護憲運動を期待したいのである。
(2023年8月8日記)
大軍拡・大増税阻止に向けた学習会運動について
事務局長 平 井 哲 史
6月1日よりスタートした「坂本基金」を活用した大軍拡・大増税阻止に向けた学習会運動奨励事業は、7月末までに25件/6支部の方から講師奨励金の申請がありました。報告で寄せられた参加者の感想や質問等を以下に一部紹介します。
・地方議員の挨拶文に全く憲法が出てこないが、どうしたらよいか。
・高い兵器を爆買いしても扱える人がいなきゃ意味がない。グランドデザインが必要。
・軍拡阻止のために何ができるか?
・野党共闘の見通しはあるか?
・台湾問題は国内問題であり、介入するのは内政干渉となるのではないか?
・台湾は戦争覚悟で独立を主張するだろうか?
・原発の守りは十分なのか?
・攻められたらどうするという意見に対しどう答えればよいか?
・「平和の準備」って具体的に何をするの?
・立憲民主党をどう考えたらよいか?
また、講師をやってみての感想としては、「そもそもあまり地理的知識がなく、【逆さ地図】などで視覚的にイメージしやすいようにするのが大事」「少数でもやってみてよかった」といったものが寄せられています。
●未申請の方はどしどし申請ください
申請がまだ一部の団員にとどまるようで、つかめている声もまだ一部にとどまります。やればやっただけの反応もあり、続けていくことで、「響く訴え」の切り口も固まっていくかと思われます。今度の総会までの予算として300件分を組んでありますので、どうぞ全国津々浦々での実践のご報告をよろしくお願いします。
●申請用フォームができました
「申請をするのに団通信についている用紙を印刷したり、コピーしたりするのは手間」という声に応えて、「団員専用ページ」に申請用のフォームをつくりました!
コチラを読み取っていただけばフォームにアクセスできます。https://forms.gle/CwRUmUhHd1akfJJc8
●団通信への投稿を
合わせて、「どんな話が響いたか」「特徴的な質問はなんだったか」「それにどう答えたのか」について、団通信にご投稿いただけると、総会での議論がいっそう充実したものとなりますので、こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
政府が進めるデジタル社会の問題点
~改正マイナンバー法とプライバシー権を考える~学習会参加のお願い
市民問題対策委員会 担当次長 永 田 亮
1 2023年6月2日、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案」、いわゆるマイナンバー法等の一部改正法が成立しました。同法は、マイナンバーカードについての国民の利便性の向上を掲げ、マイナンバーの利用範囲の拡大等を定めたほか、マイナンバーカードと健康保険証の一体化(以下、「マイナ保険証」という。)と従来型の健康保険証の2024年度までの廃止を定めたものとなっています。
今や私たちの生活は、デジタル社会の中に組み込まれ、情報検索やGPS、AIチャットなどの活用により多くの利便性がもたらされています。しかし、その利便性の裏側で、デジタル社会の中で新しい形で個々人のプライバシーが侵害されています。プライバシー情報の膨大な蓄積と利用がプライバシー権の重大な侵害であるとして、欧米諸国では「情報自己決定権」など自身の情報の収集、保存、管理、利用のあらゆる場面で当事者のコントロールを認める方向に舵を切っています。
一方、日本では、2021年9月にデジタル庁が発足し、マイナンバーカードの普及や情報の利活用の促進ばかりに重きが置かれ、市民のプライバシー権は置き去りにされているといわざるを得ません。
2 自由法曹団では、裁判手続のIT化や改正マイナンバー法の問題点を指摘する意見書や声明、医療現場の崩壊と弱者切り捨てを招くマイナ保険証の見直しを求める声明など、プライバシー権の観点から政府の進めるデジタル政策について問題点を指摘してきました。EUのGDPR(EU一般データ保護規則)など国際社会では情報に関する自己決定権が尊重されているのに対し、日本では、数十年前から通説とされる自己情報コントロール権すら裁判上肯定されておらず、プライバシー権の立ち遅れは看過しがたいほど著しいものとなっています。
3 自由法曹団の弁護士として、政府が進めるデジタル政策への問題点を学び、市民のプライバシー権(自己情報コントロール権)の保障に向けた取り組みを進めるため、2022年の日弁連第64回人権擁護大会・シンポジウム第2分科会「デジタル社会の光と陰~便利さに隠されたプライバシー・民主主義の危機~」の実行委員長を務められた武藤糾明団員を講師として、学習会を開催することといたしました。
マイナ保険証の導入に伴う事故は多数発生し、国民の不安がこれ以上なく高まるなか、従来型保険証の廃止に対して政府は期限を長期化させた資格確認証で乗り切ろうとしており、政府の政策の失敗は明らかとなっています。この問題をここで終わらせないためにも、学習会にご参加いただき、国民本位のプライバシー権の確立に向けた取り組みにつなげていきましょう。
【政府が進めるデジタル社会の問題点~改正マイナンバー法とプライバシー権を考える~学習会】
《日 時》9月21日(木)午後6時00分~
《会 場》団本部+Zoom
《講 師》武藤糾明団員(姪浜法律事務所)
第6回原発と人権集会の申込み方法が決まりました
神奈川支部 杉 本 朗
団通信2023年8月1日号(1818号)に、柿沼団員が概要を紹介してくれた「第6回『原発と人権』全国研究・市民交流集会inふくしま」について、申込み方法が決定しましたのでおしらせいたします。
今回はリアル参加とZoom参加の二とおりがありますが、どちらの場合もGoogleフォームからの登録をお願いいたします。
なお、資料代については、会場参加の方のみ現地で1000円をお願いすることとし、Zoom参加の方からはいただかないことといたしました。
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第6回『原発と⼈権』全国研究・市⺠交流集会 inふくしま
「人間・コミュニティの回復と原発のない社会をめざして―事故から12 年のいま―」
【開催日】全体会:9月2日(土)13:30~17:30
分科会:9月3日(日)開催時間は分科会毎に異なります
【会 場】福島大学L棟・M棟(福島県福島市金谷川1)
【資料代】会場参加の場合、受付にて1000円(現金払
のみ)を申し受けます。
【参加登録】以下のフォームからご登録ください。
https://forms.gle/mVt8Yb7Xe4hptZds5
※Zoom参加の場合
9月2日(土)午前10時までにご登録ください。
9月2日(土)正午までに、登録メールアドレスに接続案内をお送りします。
【構成】(予定)
◎全体会:9月2日(土)13:30~17:30
開会挨拶
第1部 13:40~
〇記念講演 『ふくしま』と科学者の社会的責任-科
学者・市民・政治」(仮題)
広渡清吾氏(東京大学名誉教授・元日本学術会議会長)
〇現場の声
汚染水問題 柳内孝之(小名浜機船底曳網漁業協同組合)
帰還困難地域の未来 馬場績(津島原発訴訟原告団)
解除地域 小林友子(双葉屋旅館/希来基金代表)
区域外広域避難者 鴨下美和(福島原発被害東京訴訟原告団)
継続する汚染と林業者の被害(宗像幹一郞(福島県原木椎茸被害者の会)
第2部 15:30~
〇基調報告 吉村良一(立命館大学名誉教授・第6回原発と人権実行委員長)
〇パネルディスカッション
司会:寺西俊一(一橋大学名誉教授)
パネリスト:関礼子(立教大学教授)/今野順夫(福島大学名誉教授)/米倉勉(弁護士、原発事故全国弁護団連絡会代表世話人)/明日香壽川(東北大学教授)/大久保賢一(弁護士、日本反核法律家協会会長)
〇集会宣言の採択
◎分科会:9月3日(日) 開催時間は分科会毎に異なります
第1分科会(9:30-12:00)復興再生:復興を語る上での記録〜人びとが中心となる「復興」の条件 Zoom配信予定
第2分科会(10:00-14:40)訴訟の現状・到達点とこれから」/日本環境会議「福島原発事故賠償問題研究会」2023年度第2回研究会 Zoom配信予定
第3分科会 核兵器と原発
第4分科会(10:00-16:00)再稼働の持つ危険性・問題 後日YouTubeチャンネルで配信
第5分科会 メディア・ジャーナリズム
第6分科会(13:00-15:00)原発事故による分断をどうのりこえる YouTube配信あり
【カンパのお願い】
集会の運営のためのカンパへのご協力をお願いしています。ご協力いただける場合には、一口1000円で下記の郵便振込口座への送金をお願いします。通信欄にはご住所お名前のほか「集会カンパ」とご記⼊いただけると幸いです。
口座番号:00160-4-616895
加入者名:「原発と人権」全国研究・交流集会実行委員会
【本件に関するお問い合わせ】
第6回「原発と人権」全国研究・市民交流集会実行委
員会 事務局長 杉本 朗
Email: attysugi@gmail.com
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松川事件無罪確定60周年記念全国集会(@福島大学)のご案内
福島支部 渡 邊 純
松川事件の無罪確定(1963年9月12日)から60周年を迎えるにあたり、福島大学を会場に全国集会が開かれることになりました(今年9月30日~10月1日)。長らく福島県松川運動記念会の理事長を務められた安田純治団員が退任され、私が後任を務めることとなったことから、集会のご案内をいたします。
「松川事件」ってなに?
松川事件とは、1949年8月17日未明、東北本線上り線のレールが何者かによって外され、松川駅から金谷川駅に向けて走行中の列車が脱線し乗務員3名が犠牲になったという脱線転覆事件です。当時、GHQと吉田内閣が100万人規模の労働者の馘首を企図し、社会が騒然とする中、7月に下山事件(国鉄総裁が轢断死体として発見)、三鷹事件(三鷹駅で無人列車が暴走)などが発生し、吉田茂首相は「社会不安は、主として共産主義者の扇動による」と述べていました。松川事件についても、事件発生の翌日、現場での救助活動や検証等も終わっていない段階で、増田官房長官が「三鷹事件…その他の事件と思想的底流において同じである」などとする声明を発表するなど、事件を日本共産党やその関係者の仕業と決めつける大キャンペーンが行われました。その中で、国鉄と東芝松川工場の労働者20名が「共同謀議」に基づき列車転覆を実行したとして、逮捕・起訴されました。被告人らは刑事裁判で全員が無実を訴え、団員をはじめとする弁護団(岡林辰雄団員・大塚一男団員が主任弁護人。いずれも故人)が弁護活動にあたりました。一審判決・控訴審判決とも有罪判決となり、最高裁で破棄差戻し、差戻し審(仙台高裁)で全員無罪の判決を勝ちとり、さらに最高裁で検察官上告が棄却され、全員無罪が確定したのでした。
大衆的裁判闘争の原点
自由法曹団が「大衆的裁判闘争」という方針を確立したのは、松川事件がきっかけだと言われています。古くは岡林主任弁護人の「主戦場は法廷の外」という言葉が伝えられていますが、法廷内の活動にとどまらず、広く国民に対して事実を訴え、事実と道理に基づいた裁判の実現のために、裁判所を大衆的に監視していくということを意味していると思います。
これを体現するかのように、松川事件では、救援会や民主団体だけでなく、多数の文化人・知識人も支援に立ち上がりました。特に作家の広津和郎は、控訴審判決の後「中央公論」の連載で控訴審判決の徹底的な分析と批判を足かけ5年にもわたり書き続けました。この連載を読んだ全国の市民が、学習会や現地調査などに参加する中で被告人らの無罪を確信し、全国に草の根のように松川運動を広げていきました。こうした努力によって、「共同謀議」の中心とされた被告人のアリバイを示す「諏訪メモ」の発見や最高裁差戻し判決、そして全員無罪の確定につながっていったのです。広津は、無罪確定の翌年に現地に建立された松川記念塔の碑文を「人民が力を結集すると如何に強力になるかということの、これは人民勝利の記念塔である」という言葉で締めくくっています。
松川運動をどのように現代に活かすか
これまで、福島では、松川事件に関わる全国集会をたびたび開催してきました。そこでは、元被告の方やそのご家族、弁護団、支援者(いわゆる「モベヒ」、今の「原弁支」)の「同窓会」のような交流が見られました。今回の集会でも、そうした光景が見られることでしょうが、元被告の最後の一人であった阿部市次さんも昨年逝去されるなど、リアルに松川運動を知る世代は少なくなっています。私自身もリアル世代じゃありませんが、集会のたびに、全国で松川運動に関わった人たちが「松川運動には、生き方を変える何かがあった」と口々におっしゃるのを耳にします。それが何かは、私にはよく分かりません。「無実の人を死刑にしてはならない」という人道的な思いなのか、「事実と道理に基づいた公正な裁判を」という正義感なのか、はたまた謎解きの面白さか…。しかし、松川運動をきっかけにして社会への眼を開かれた人が無数にいたということは、単に「そういう時代だったから」とか「今とは情勢が違うから」と無造作に片付けてよいものではないだろう、とも思うのです。
松川運動の経験は、刑事分野では、再審事件や弾圧事件の救援活動に継承され、それ以外の分野でも、様々な労働事件、公害事件などに継承されています。今日的な課題としては、刑事分野では再審法改正の運動であり、こと福島に関しては、原発事故後の国賠訴訟(生業訴訟、いわき市民訴訟等)が、松川事件の大衆的裁判闘争の経験を正当に継承していると評価できるのではないかと思います。「我田引水」と言われるかもしれませんが、まあ、それはそれとして、松川運動の何が人々を引きつけたのかということを考え、学び、継承することは、単なる懐古にとどまらず、いま私たちの目の前にある課題の解決にとっても有益なんじゃないでしょうか…と言いたいわけですよ(前置きが長くてすみませぬ)。
全国集会にぜひご参加ください!
全国集会は、福島大学にて、9月30日(土)午後1時~10月1日(日)午後0時まで行われます。1日目は、鴨志田祐美弁護士(大崎事件弁護団)による記念講演のほか、記録映像の上映など。2日目は、「冤罪と刑事司法」をテーマにしたシンポジウムなどを予定しております。そのほか、福島大学松川資料室所蔵資料の特別展示なども行われ、オプションとして記念塔セレモニー、原発事故被災地視察などの企画も用意されております。
詳しくは、福島県松川運動記念会HP(下記リンク)をご覧ください。参加申込み用紙もダウンロードできます。
秋の福島で、みなさまの参加をお待ちしております。
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