愛知・西浦総会決議『日本政府に対して「特定複合観光施設区域整備法」(「カジノ実施法」)の廃止とカジノ誘致を検討している地方自治体に対して誘致の撤回を求める決議』
日本政府に対して「特定複合観光施設区域整備法」(「カジノ実施法」)の廃止とカジノ誘致を検討している地方自治体に対して誘致の撤回を求める決議
1 2018年7月20日、カジノ実施法が、参議院本会議において自民、公明、日本維新の会などの賛成で可決され、成立した。カジノ実施法成立後、北海道、横浜市、大阪府・大阪市、和歌山県、長崎県などが、カジノ誘致の意向を示しており、林文子横浜市長は2019年8月22日、記者会見で、カジノを含む統合型リゾート誘致を正式に表明した。
2 そもそも、カジノ施設については、①青少年の健全育成に悪影響を及ぼす。②射幸心(偶然に得られる成功や利益を当てにし、まぐれ当たりによる利益を願う気持ち)をあおり、そうした一攫千金の考え方が、勤労意欲や勉学意欲を低下させる。③カジノ施設設置地域では、風紀や住環境・教育環境等が悪化する。④ギャンブル依存症の問題。⑤カジノは、刑法が禁止する賭博施設の設置に国家及び都道府県が関与するものであるなど複数の問題点があげられている。
特に、ギャンブル依存症の誘発については、カジノ実施法案の国会審議の中でも大きく取り上げられた。政府は、ギャンブル依存症対策として、カジノを設置できる区域を3つまでと限り、入場料金及び1ヶ月の入場回数に制限を設けた(入場料・認定都道府県等入場料を合計6000円とし、日本人等の入場回数を連続する7日間で3回、連続する28日間で10回に制限する)と説明している。しかし、政府の説明は、「経済的、社会的、精神的問題が生じているにもかかわらず、ギャンブルをやめることができない」というギャンブル依存症の特質を全く踏まえていない。入場規制についても、24時間営業しているカジノにおいては1日を24時間とカウントすることで、「週6日の滞在」も可能であり、ギャンブル依存症の対策とはならない。そればかりか、カジノ実施法は、カジノ事業者が賭金を貸し付けることを認めるなど、客をいっそう深くギャンブルにのめり込ませ、ギャンブル依存症を拡大・深刻化させるものとなっている。さらに、最初の区域整備計画の認定日から起算して5年を経過した場合において、所要の措置をとるとされており、今後、規制が緩和されることも容易に想定される(設置区域については7年後)。
3 自由法曹団は、これまで、2014年4月に「カジノ法案の廃案を求める意見書」を発表し、その後も、同年10月「カジノ法案の廃案を求める決議」をあげ、2016年12月には「カジノ法律案の廃案を求める声明」を発表し、2018年5月21日「『特定複合観光施設区域整備法案』の国会提出に強く抗議し、同法律案の廃案及び『特定複合観光施設区域整備の推進に関する法律』の廃止を求める決議」をあげ、同年8月3日には「『特定複合観光施設区域整備法』(「カジノ実施法」)の強行採決に強く抗議し、同法律の廃止を求める声明」をあげ、カジノ推進法・実施法に一貫して反対してきた。
本来、地方自治体は、住民に対して、健全で、安全な生活環境を維持・形成する責務を負っている。にもかかわらず、カジノ誘致を進めることは、青少年への悪影響、カジノ施設周辺の治安悪化、社会問題となっているギャンブル依存症の問題を拡大・深刻化させるなど、住民の生活環境に著しい悪影響を与えることになり、地方自治体の責務に反するものであるため、絶対に許されない。
自由法曹団は、政府に対して、カジノ法の廃止を求めるとともに、カジノ誘致を検討する地方自治体に対して、カジノ誘致を中止するよう求める。
2019年10月21日
自由法曹団 愛知・西浦総会