日本政府に対し辺野古新基地建設の断念と普天間基地の即時無条件撤去を求める決議

カテゴリ:決議,米軍・自衛隊

日本政府に対し辺野古新基地建設の断念と
普天間基地の即時無条件撤去を求める決議

 

1 日本政府は,2018年12月14日,辺野古崎のN3,K4,N5護岸で囲まれた一角(「(2)-1工区」)への土砂投入を強行し,その後,2019年3月25日,K1,K2,K3,K4,N5護岸で囲まれた浅瀬部分(「(2)工区」)への新たな土砂投入を強行してきたが,2020年10月1日までに,土砂投入が強行されている「(2)-1工区」と「(2)工区」への土砂投入量は計画全体で必要とされる2100万㎥の3.2%にとどまる。
 また,沖縄県漁業調整規則は,サンゴ類の採捕の禁止と特別採捕につき沖縄県知事の許可制を定めており,許可権者である沖縄県知事は,沖縄防衛局による大浦湾のサンゴ合計39,000群体の移植申請につき,慎重に審査を継続していたところ,2020年2月28日,突如,農林水産大臣が,地方自治法245条の7第1項に基づき,許可処分をするよう是正の指示を行った。その後,沖縄県知事は,是正指示が違法であるとして国地方係争委員会に審査申し出を行ったが,同委員会は2020年6月19日,是正指示の違法性を否定したため,沖縄県知事は,2020年7月22日,福岡高裁那覇支部に国の関与取り消しを求める訴訟を提起している。

2 こうした日本政府を挙げての,埋立てを既成事実化し,沖縄県知事の権限行使を妨げる暴挙は,辺野古新基地建設に反対する沖縄県民が諦めさせることを狙ったものであろうが,沖縄の民意や怒りは強まることはあっても揺らぐことはない。
 そのことは,2018年9月の沖縄県知事選挙での玉城デニー氏の圧倒的大差による勝利に続き,2019年2月に実施された辺野古新基地建設の是非を問う沖縄県民投票では埋立て「反対」に投票総数の7割以上にあたる434,273票が投じられ,同年4月21日の衆議院沖縄3区補選でも「オール沖縄」の支援を受けた屋良朝博氏が勝利し,同年7月21日の参議院選挙においても,辺野古新基地建設反対を掲げ,「オール沖縄」の支援を受けた高良鉄美氏が,自民党の候補者に6万票以上の大差をつけて当選した。さらに,2020年6月7日に実施された沖縄県議選においても辺野古新基地建設反対を掲げる候補が過半数を占める結果となっており,辺野古新基地建設反対が沖縄県民の意思が揺らいでいないことは,これまでの選挙結果によって明らかにされている。

3 沖縄防衛局は,2019年12月,未だ土砂投入がはじめられていない大浦湾側の工区の埋立てを行うには,地盤の強さを示すN値がゼロという“マヨネーズ並み”の軟弱地盤が存在する大浦湾側の海域に新たな護岸を設置しなければならず,地盤改良に必要な砂杭の数は76,699本,使用する砂の量は650万㎥に達し,その工費は9300億円,工期は10年に及ぶことを公表した。この軟弱地盤は最も深いところで水深90mに達し,そのような水深の地盤改良は,世界的にも例が無く,専門家から技術的におよそ不可能と指摘されている。
 そして,上記軟弱地盤の埋め立てについては,護岸(C護岸の)の構造や工法の変更が必要であり,沖縄防衛局は,2020年4月21日,沖縄県知事に対し,埋立承認処分変更承認申請を行った。この変更承認申請の標準処理期間は163~223日とされ,2020年12月1日以降沖縄県知事の判断が示されることとなっている。これまでの玉城デニー知事の対応からすれば,新基地建設阻止を求める沖縄県民の民意に反する変更承認申請を不承認とすることが見込まれる。その場合,県と国との間の新たな争訟が司法の場に持ち込まれることになる。

4 このように,日本政府の強権的な姿勢とは裏腹に,辺野古新基地建設の計画は技術的にも法的にも行き詰まりに陥っているのである。
 辺野古新基地は,日米軍事同盟・在日米軍の機能を大幅に強化し,周辺諸国に新たな軍事的緊張をもたらし,日本と東アジアの平和を脅かすものである。また,その耐用年数は200年とも言われ,ひとたび基地が作られてしまうと,沖縄県民に永続的な米軍基地による負担・被害をもたらすものであり,絶対に許されない。
 日本政府は,「沖縄の負担軽減」などと称して辺野古新基地建設が普天間基地の撤去の唯一の解決手段である旨の説明をしているが,それは全くの偽りである。繰り返し示された沖縄県民の意思に反して新基地建設を強行することは,それ自体民主主義を否定し,地方自治を侵害するものにほかならない。
 基地のない平和な沖縄を実現するために必要なのは,普天間基地の即時無条件撤去と辺野古新基地建設の中止である。
 1996年のSACO合意から今日まで辺野古新基地建設を阻止し,工事計画を技術的にも法的にも困難な状況に至らしめたのは,基地建設に反対する沖縄県民の粘り強いたたかいの成果にほかならない。
 自由法曹団は,日米軍事同盟に反対し安保条約破棄を求める立場から,沖縄県民のたたかいに敬意を表し,ともにたたかうことを表明するとともに,日米両政府に対して辺野古新基地建設を直ちに断念し,普天間基地を即時無条件撤去するよう強く求める。

 

2020年10月18日

自由法曹団 兵庫・神戸総会


PDFはこちらから

TOP