100周年・東京総会『新自由主義に基づく国民の命と暮らしを軽視する政治から脱却し、貧困と格差の是正に取り組む政権を樹立するために全力を挙げて奮闘する決議』

カテゴリ:決議,貧困・社会保障

PDFはこちら


 

新自由主義に基づく国民の命と暮らしを軽視する政治から脱却し、
貧困と格差の是正に取り組む政権を樹立するために全力を挙げて奮闘する決議

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、菅内閣は、昨年9月の発足直後、検査体制、医療体制、ワクチンの供給接種体制のいずれも整備も不十分なまま、「Go Toキャンペーン」を継続・拡大させた結果、昨秋から冬にかけて劇的な感染拡大を招き、2021年1月に2度目の緊急事態宣言を発出する事態に陥った。
 その後も、検査体制、医療体制の整備を進めないまま、緊急事態宣言の発令と解除を繰り返し、今年7月、東京都などに4度目の緊急事態宣言が発令されている中で、東京オリンピック・パラリンピックの開催を強行し、2021年8月には一日の新規感染者が2万人を超える感染爆発を招いた。そして、感染爆発によって医療体制のひっ迫していることを受け、菅首相は、重症患者以外は自宅療養を基本とするという方針を打ち出し、実際に自宅療養を余儀なくされた人々が適切な治療を受けることができないまま命を奪われることになるなど、国民の命と健康を軽視する政策をとり続けてきた。
 一方で、これまでの政府が新型コロナ対策として打ち出した「雇用調整助成金」の特例措置、「持続化給付金」・「特別定額給付金」の支給や「Go Toキャンペーン」など、いずれもその効果は限定的であり、幸福追求権(憲法13条)、生存権(憲法25条)を保障している憲法に基づく権利保障として十分なものではない。そのことは、生活困窮を脱することができない人々が頼る緊急小口資金及び総合支援基金の貸付金額がすでに1兆円に上っていることからも明らかであり、今後、返済時期を迎えた人々が更なる経済的困窮に見舞われることが予測される。さらに、最後のセーフティネットである生活保護についても、2021年6月末時点において、前年同月と比較して申請件数は13.3%、保護開始世帯数は12.3%も増加している。生活が立ち行かず、生活保護に頼らざるを得ない状況に追い込まれている人々が多数うまれていることが明らかとなっている。
 これらは、アベノマスク以来、これまでの安倍内閣・菅内閣による新型コロナ対策がことごとく失敗してきたことを示している。

 岸田首相は、2021年10月の就任直後、新自由主義の弊害に触れ、「新しい資本主義を起動」などと述べるが、一方では自公政権が進めてきた公的病院の統廃合計画を推進する姿勢を変えておらず、新型コロナウイルス感染拡大に対して保健医療、公衆衛生等の公的分野が十分に対応できない事態を生じさせているこれまでの自民党政権による新自由主義的政策の下で貧困と格差の拡大させてきたことに対する反省はみられない。
 とりわけ、経済政策として掲げたのは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進であり、実質賃金を著しく下げ、国民の生活を破壊した「アベノミクス」そのものであり、これまでの自公政権と変わるものではない。

 一方で、市民連合は2021年9月8日、「衆議院総選挙における野党共通政策の提言」をまとめ、これを立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組の各党首がこれを受け入れた。同提言の副題は「命を守るために政治の転換を」とされ、主要政策の一つとして「格差と貧困を是正する」ことが掲げられている。「貧困と格差を是正する」ために「最低賃金の引き上げや非正規雇用・フリーランスの処遇改善により、ワーキングプアをなくす。」こと、「誰もが人間らしい生活を送れるよう、住宅、教育、医療、保育、介護について公的支援を拡充し、子育て世代や若者への社会的投資の充実を図る。」こと、「所得、法人、資産の税制、および社会保険料負担を見直し、消費税減税を行い、富裕層の負担を強化するなど公平な税制を実現し、また低所得層や中間層への再分配を強化する。」ことの3項目が挙げられており、日本社会における格差と貧困の是正に向けた共通政策を掲げて新しい政治に転換することが市民と野党の共同において確認されたことは、極めて大きな意義を有している。

 自由法曹団は、新型コロナウイルス感染拡大に対して、2020年4月7日「憲法を生かし、いのちとくらしを徹底して守る感染拡大防止策の確立を求める」声明を発表し、2020年10月18日に開催された2020年兵庫・神戸総会において、自己責任を基本とする新自由主義政策としての医療費の削減や「効率」を最優先し「公助」を切り捨ててきた医療・介護・公衆衛生政策を見直し、幸福追求権(憲法13条)、営業の自由、居住移転の自由(憲法22条)、生存権(憲法25条)、財産権(憲法29条)、学習権(憲法27条)を保障している憲法を生かす政治への転換をする必要があることを訴える決議を採択してきた。
 いま、たたかわれている衆議院議員総選挙は、長年にわたって継続された自公政権による新自由主義路線の社会保障削減、生存権をはじめとする基本的人権を蹂躙する悪政から脱却する絶好のチャンスである。
 自由法曹団は、あらためて、自公政権による国民の命と生活を軽視する政治から脱却し、市民連合の野党共通提言が掲げる格差と貧困を是正する政治を確立し、国民生活を立て直すとともに、憲法が生かされる政治の実現のために、なおいっそうの奮闘することを宣言する。

 

2021年10月23日

自由法曹団創立100周年・東京総会

TOP