2022年7月16日常任幹事会において、沖縄県知事選挙支援決議を採択しました

カテゴリ:決議,米軍・自衛隊

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本年9月の沖縄県知事選挙において、辺野古新基地建設阻止のため、
玉城デニー知事の再選を勝ち取ることに総力をあげて奮闘することを表明する決議

1 沖縄は去る5月15日で本土復帰50年を迎えた。
 戦後27年間に及ぶ米国の統治によって、沖縄は米軍の軍事占領下におかれた。米軍基地は諸悪の根源として、沖縄住民の生命を奪い、生存の基礎たる財産権を侵害する等して、犠牲と苦難を強い続けた。かかる状況からの脱却を求めて沖縄住民は祖国復帰闘争を不屈に闘い、1972年5月15日に復帰を勝ち取った。
 沖縄県民が復帰に託した願いは、「核も基地もない平和な沖縄」であり、「日本国憲法下での基本的人権の保障」であった。当時の琉球政府の屋良主席が、日本政府に提出した「復帰措置に関する建議書」には「異民族による軍事優先政策の下で、政治的諸権利が著しく制限され、基本的人権すら侵害されてきたことは枚挙にいとまがありません。県民が復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法の下で基本的人権の保障を願望していたからにほかなりません」、「基地のない平和の島としての復帰を強く望んでおります」と強調されている。
 しかるに、72年の復帰によって、沖縄にも日米安保条約が適用されることになった結果、在沖米軍基地は復帰後も基本的に現状のまま維持存続することになり、しかも国土面積の0.6パーセントにすぎない沖縄に在日米軍基地の専用施設の70パーセント以上が集中することになった。沖縄県民の復帰に託した願いは、日米安保条約によって蹂躙されたといわざるをえない。諸悪の根源の存続は、復帰後も沖縄県民に犠牲と苦難の継続を強要することを意味し、現に復帰後50年史はそのことを実証している。

2 かかる沖縄に、日米両政府は1996年4月、「世界一危険な飛行場」と称される米軍基地・普天間飛行場の代替施設として辺野古新基地建設を計画し、その完成後の移設を条件とする普天間基地の全面返還を合意した。しかし、普天間飛行場の危険性の除去は、その早期無条件返還以外にはない。また、代替施設とされる辺野古新基地は大浦湾海域を含むキャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てて、その陸地部と併せた部分に1800メートルの滑走路2本をV字型に設置するというものであるが、その耐用年数は200年、普天間基地には存在しない港湾施設及び弾薬搭載エリアが設置される等、陸海空の一体的運用が安定的に可能となる機能強化された最新鋭基地の新設であり、米のアジア戦略の拠点となるものである。
 沖縄県民は、新たな加重負担となる辺野古新基地建設について、19年2月の県民投票で明らかになったように7割を超える県民が建設反対の意思を表明し、その阻止のために抗議行動を展開している。しかるに国は、民意を無視して、17年4月に埋立て海域の外周護岸工事を開始し、18年12月には土砂投入を強行した。工事着手から5年が経過した現在、辺野古沿岸の浅瀬部分の埋め立て工事がほぼ完成状態にあるが、それは埋立て総面積の約4分の1、投入予定の土砂総量の約10パーセントである。これから投入が予定されている土砂の約7割は、沖縄戦戦没者の遺骨が混入している可能性が高い沖縄本島南部地域の土砂であり、まさに人道に反する暴挙だといわざるを得ない。
 日米両政府の当初計画の「2014年までの完成」は既に経過し、その後8年経過している現在、工事進捗率はわずか1割に過ぎない。しかも埋め立て工事の困難が予測されている大浦湾海域の埋め立て工事は未着手の状態である。工事遅延は、県民を中心とする全国的な支援による建設阻止闘争によるものである。

3 2019年、埋立て予定の大浦湾海底には広範囲にわたってマヨネーズ状の軟弱地盤が存在することが発覚した。政府は15年の調査でこれを把握していたが、隠蔽したまま埋め立て工事を開始したことも判明した。
 そのため国は、20年4月、沖縄県に対して、軟弱地盤改良工事を目的とした設計概要変更申請書を提出した。改良工事は砂杭7万1000本を打ち込み地盤を強化するというものである。しかし、軟弱地盤は水面下の最深90メートルまで存在しているが、改良工事は水深70メートルまでしか計画されておらず、それより深い部分は技術的に困難であるため放置される。水深90メートル地点はB27地点と称されているが、国は放置の理由として、その海底は「非常に固い粘土層」であると説明する。その根拠は、同所から約150メートル、約300メートル、約750メートル離れた3地点の地盤から推定したもので、B27地点の地盤そのものを調査した結果ではない。敢えてB27地点の力学的試験を回避したうえでの推定に正当性、合理性がないことは一目瞭然である。地質学の専門家は、B27地点とそれら3点では土質が異なるので、強度推定の根拠とはなり得ないと批判する。沖縄防衛局によれば、改良工事に要する期間は着手から12年、総工事費用は当初の約2.7倍の9300億円である。但し、沖縄県は2兆5500億円と試算している。
 玉城デニー沖縄県知事は21年11月、国から申請のあった設計変更申請を不承認とした。その主なる理由は、B27地点の必要な調査が行われていない等、軟弱地盤の安定性につき十分な検討がなされていないことは、埋立て承認要件である公有水面埋立法4条1項2号所定の「災害防止」の配慮にかけているということである。
 これに対して、国(沖縄防衛局)は、不当な行政処分から私人の権利救済を目的とする行政不服審査制度を私人になりすまして利用し、国交大臣に対して不承認取消を求めて審査請求を行った。国交大臣は22年4月、不承認を取消し、次いで沖縄県に対して承認するよう是正指示した。沖縄県はそれに従わず、5月に総務省の機関である「国地方紛争処理委員会」に審査の申立てを行った。同委員会は去る7月12日、不承認取消の裁決は「有効」だとして、沖縄県の審査申立を却下した。是正指示の適法性判断については、8月末日までにはその結論が出ることになっているが、そこで決着が付くわけではない。
 国が軟弱地盤の改良工事に着手するには、設計概要変更申請の承認を得ることが不可欠であるが、そのためには地方自治法245条の8に基づく代執行訴訟を提起し、そこで勝訴することが必要となる。しかし、B27地点の力学的試験を回避したままの変更申請に合理性がないことは明白であり、そのハードルはきわめて高いといわざるを得ない。

4 沖縄県知事選挙が来たる8月25日告示、9月11日投開票で実施される。オール沖縄勢力の玉城現知事と自民党推薦候補の事実上の一騎打ちとなる。最大の争点は辺野古新基地建設の是非である。
 新基地建設を阻止し、日米両政府にそれを断念させる確かな道は、玉城知事の再選しかあり得ない。それは沖縄の犠牲の軽減につながるのみならず、日米安保条約体制に決定的な風穴をあけるとともに、加速する我が国の戦争する国づくり及び改憲策動への阻止力ともなり得る。また全国的に展開している市民と野党の共闘を激励し、その維持強化に寄与することにもなる。
 仮に自民党推薦候補者が勝利すれば、設計変更申請はその知事によって承認され、代執行訴訟も不要となり、新基地建設は一挙に加速されることになる。これまでの沖縄の首長選挙において保守派は官邸ぐるみの選挙を実施してきたが、今度の知事選挙はこれまで以上の政権丸抱えの選挙となることは必至である。これに対抗するには、全国的な支援によるオール沖縄の体制強化、玉城知事再選のための大衆的選挙闘争が求められている。
 自由法曹団は、今度の沖縄県知事選挙の重要性に鑑みて、玉城知事再選のために総力を挙げて奮闘する決意を表明するとともに、全国の団員及び友誼団体に対して、物心両面にわたる全面的支援を強く呼びかけるものである。

 

2022年7月16日
自由法曹団常任幹事会

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