2023年10月23日、全国一律での最低賃金制度実現を求めるとともに最低賃金の大幅な引上げを求める決議

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全国一律での最低賃金制度実現を求めるとともに最低賃金の大幅な引上げを求める決議

 

1 2023年7月28日、中央最低賃金審議会は、各都道府県の引上げ額の目安について、従来の4区分から3区分に変更した上で、Aランク41円、Bランク40円、Cランク39円とする答申をとりまとめた。
 これを受けて、同年8月18日、各都道府県の地方最低賃金審議会による最低賃金改定額の答申が出そろった。各地方最低賃金審議会による答申の結果、全国加重平均で時給1,004円、昨年から43円(4%超)の引上げとなったが、実際に最低賃金が1,000円を超えるのは8都府県にとどまり、地域間最大格差は昨年の219円から220円(最高・東京都1,113円、最低・岩手県893円)に拡大した。区分数が4から3へ縮小されたこと自体は前進といえなくもないが、区分が存置される以上、地域間格差が解消されるわけではない。

2 全労連・国民春闘共闘等が行った近時の調査によれば、労働者の最低生計費は、都市部と地方の間で大きな差がないことが示されている。その一方で、2006年には最低賃金の地域間最大格差が109円であったにもかかわらず、2018年には224円にまで拡大し、その後も地域間最大格差は200円を超えたままである。
 このような地域間格差を是正するためには、当然のことながら、最低賃金が低い地域の引上げ額を大きくすることが求められるが、中央最低賃金審議会の答申は、格差是正に大きく逆行するものである。
 また、ロシアによるウクライナ侵攻等にも影響を受けた物価高は市民の暮らしを苦しめており、2022年度平均の消費者物価指数は、前年度比で3.2%の上昇を見せ、2023年8月の生鮮食品を除く食料については前年同月比で9.2%上昇した。消費者物価指数の上昇は、食料・エネルギーといったモノのみならず、サービス消費にも及んでおり、2023年4月においては、前年同月に比べて4.1%上昇している。
 今回の最低賃金引上げは、物価の上昇に追いついておらず、かつ、地域間格差が存置されたことで、全国の市民の生活を圧迫している結果を招いている。

3 最低賃金の引上げにあたっては、大企業に比べて財政的基盤が強くない中小企業への支援も必要となる。当然、物価の上昇は、中小企業の経営をも圧迫している。現行の業務改善助成金制度だけでは極めて不十分であり、社会保険料の減免制度の導入や中小企業の価格転嫁を後押しするサポート制度の充実等更なる支援策が求められるところである。最低賃金の引上げが経済効果をもたらすことは、韓国や米国における最低賃金引上げとGDPの上昇幅が示しているとの分析もなされている。

4 自由法曹団は、中央最低賃金審議会に対して全国一律の最低賃金制度の実施に向けた議論を早急に行うこと及び少なくとも次年度以降、地域間格差を縮小させるとともに最低賃金を大幅に引き上げる旨の答申を行うことを求めるとともに、国に対し、中小企業に対する最低賃金引上げを促進する支援策を講じることを求める。そして、自由法曹団として、労働組合及び民主団体と協力して全国一律の最低賃金制度の実現と最低賃金の大幅引上げに向けた取り組みを続けることを改めて決意し、決議する。

 

  2023年10月23日

         自由法曹団2023年大阪総会

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