2024年5月27日、イスラエル軍によるパレスチナ攻撃の即時停止とガザ地区からの撤退、同地区の封鎖解除を求める決議

カテゴリ:国際平和,決議

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イスラエル軍によるパレスチナ攻撃の即時停止とガザ地区からの撤退、同地区の封鎖解除を求める決議

 

1.イスラエルの大規模攻撃により、ガザ地区では民間人の殺害、病院などの生活インフラの破壊、支援物資搬入妨害による飢餓など、パレスチナ人が置かれた人道的状況は悪化の一途を辿っている。2024年5月14日の時点で、昨年10月7日以降ガザ地区でのパレスチナ人死者は少なくとも3万5173人に上り、うち1万4500人以上が子どもである。負傷者は7万9061人以上、行方不明者は1万人以上である。ヨルダン川西岸地区では少なくとも498人が死亡、うち124人は子どもであり、負傷者は4950人以上に上る。ユニセフは、3月15日、ガザ北部で2歳未満の乳幼児のうち3人に1人が急性栄養失調状態にあり、1月と比べて倍増している旨発表している。ガザ地区では、イスラエル軍の保健医療施設への攻撃によって、病院や診療所や保健所の大半が閉鎖に追いやられており、それが一般市民の適切な医療を受ける機会を奪い、ガザ地区のパレスチナの人々の犠牲者拡大を生み出している。病院だけでなく学校など社会的インフラも破壊されている。今年1月26日に国際司法裁判所(ICJ)が集団殺害犯罪を防ぐための保全命令を出し、また3月28日により明確な措置を求める修正命令を出して後も、イスラエルはこの命令に反する行動を続けている。5月7日には、避難民を含め約150万人がいるとされるガザ地区南部ラファに地上侵攻を開始した。
 ガザ地区だけでなく東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区でも、2023年10月7日のハマスによる攻撃の前から多くの民間人の殺戮が行われてきている。
 イスラエルは、2023年10月7日のハマスによる攻撃に対する「自衛」を主張するが、ガザ地区やヨルダン川西岸地区で現在生じている危機的な人道状況からすれば、パレスチナ人共同体の再生不能な破壊を企図したものと見ざるを得ず、集団殺害罪の防止および処罰に関する条約(ジェノサイド条約)が禁止する集団殺害と断じるほかないものである。

2.そして、今回の悲惨な事態の根底には、1948年のイスラエル国家建国から続く入植型植民地主義や人種差別・民族差別がある。イスラエル国家建国は約70万人のパレスチナ難民を発生させ、以来3次にわたる中東戦争の中、イスラエルは1967年の第三次中東戦争以来ガザ地区とヨルダン川西岸の違法な占領をはじめ、入植地を作り続けた。2006年からはガザ地区を封鎖し、人的・物的交流が自由にできないだけでなく、インフラ整備すらままならない劣悪な「天井のない監獄」と評される非人道的状態を作り出した。このようなイスラエルによる違法行為の積み重ねが現在のパレスチナ攻撃につながっている。

3.それと同時に、先進諸国が、これまでイスラエルによるパレスチナでの国際法違反を事実上免罪してきたことが今回の事態につながっていることも看過することはできない。いまも先進諸国はかかる姿勢を改めておらず、日本政府も「国際法に従って自国及び自国民を守るイスラエルの権利」(2024年4月10日日米首脳共同声明)と主張している。ウクライナに侵攻を続けるロシアに対しては国際法遵守を厳しく求めながら、パレスチナ問題に対して消極的な対応をとるダブル・スタンダードは到底許されるものではない。
 先進諸国はイスラエルの国際法違反を事実上免罪してきたことを深く反省し、今こそ団結して即時かつ恒久的な停戦と、イスラエル軍の撤退、封鎖解除に必要な最大限の努力を払うべきである。特に日本政府は、全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することを確認し、恒久の平和を達成するために全力をあげることを誓う日本国憲法を有する国の政府として、イスラエルの攻撃についてもロシアの攻撃についても、国際法遵守を求める立場から国際社会に働きかけ、誰もがひとしく恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存できる世界の実現に向けた先頭に立つべきである。

4.イスラエルが、ガザやヨルダン川西岸に対する攻撃を即刻停止し、ガザの封鎖を解除して、食料・医薬品・電気・水など生命維持や生活に必要な物資等の搬入を保障するとともに、市民の強制移動をやめるべきであることはもちろんであるが、上記を踏まえればそれだけでは不十分である。
 自由法曹団は、イスラエルに対し、直ちに無条件でガザ地区とヨルダン川西岸地区の違法な占領をやめてイスラエル軍を撤退させるとともに、恒久的停戦によって、パレスチナの人々が当然に有しているはずの生命、身体、財産、居住の権利、移動の自由、教育を受ける権利その他の基本的人権すべてを保障・尊重するよう強く求める。また、その実現のために、世界各地で同様の立場に立って活動する市民や機関に対して心からの連帯を表明する。

 

2024年5月27日

自 由 法 曹 団
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