2024年5月27日、日本の加害責任と基本的人権を軽視する、「つくる会」系教科書及び令和書籍歴史教科書の採択に反対する決議

カテゴリ:子ども・教育,決議

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日本の加害責任と基本的人権を軽視する、「つくる会」系教科書及び
令和書籍歴史教科書の採択に反対する決議

 

1.これまで自公政権は、解釈改憲や戦争法の整備、軍備拡張などによって戦争をする国づくりを強行しつつ、これに並行して、教育に対する国や行政の介入を強める政策も推し進めてきた。同政権が教育制度の改変に力を入れるのは、戦争をする国づくりを実現するために、政府に都合の良い教育を行うことによって、改憲や戦争を容認する国民を生み出そうとしているからに他ならない。
 教科書に政府見解に基づく記述行うよう教科書検定基準を改変し、子どもたちに教科書を通して、政府見解を正当なものであるかのように教え込もうとしていることもこの顕れである。

2.そして、この自公政権の教育政策を後押しするのが、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」、自由社)と「つくる会」から分裂した教科書改善の会(「改善の会」、育鵬社)の中学校歴史教科書・公民教科書(以下、あわせて「つくる会」系歴史教科書・公民教科書)である。
 「つくる会」系歴史教科書は、「自虐史観からの脱却」を謳い、アジア諸国を蔑視し、日本の引き起こしたアジア太平洋戦争が、アジア諸国の独立につながったと教え、日本の加害責任については曖昧な記述にとどまっている。
 また、「つくる会」系公民教科書は、国民主権よりも天皇の役割を情緒的に強調したり、基本的人権を軽視して公共の福祉と義務を強調する、日本国憲法を、あたかも押し付けられた憲法であって「改正」すべきものであるかのような記述をし、自衛隊を海外に派遣する必要性を強調する内容となっている。
 さらに、今回の教科書検定では、初めて令和書籍の歴史教科書が検定に合格した。令和書籍は、これまでの中学校歴史教科書が「きわめて反日色が強い」として2018年に設立された教科書会社である。これまで、3回の教科書検定で不合格とされた。「日本人の日本人による日本人のための教科書」、「国史教科書」を標榜し、「つくる会」系教科書と同様、アジア太平洋戦争での日本の加害責任を小さく見せる記載をしている。また、現憲法の基本原則に反するとして国会で排除・失効が確認された教育勅語を大きく取り上げ、その徳目を「先人たちの良き伝統」と賛美している。
 これら「つくる会」系教科書及び令和書籍歴史教科書は、日本の歴史に対するとらえ方があまりに一面的であり、憲法についての記載も誤りが多く、正確な知識を得られる教科書とは到底いえないものである。

3.今年、7月から8月、全国で今後4年間使用される中学校教科書の採択が行われる。
 中学生は、人格的成長の途上の重要な時期にあり、未だ批判能力が十分に育っているわけではない。「つくる会」系教科書や令和書籍教科書によって、上記のような一面的で偏った学習を受けることにより、生徒に回復しがたい重大な悪影響が及ぼされることが強く危惧される。
 義務教育を修了させ、将来の主権者を育てる教育課程であるとの中学校の位置づけからしても、憲法について誤りを多く含む同教科書の使用は不適切といわざるを得ない。

4.2001年4月に登場して以来、「つくる会」系教科書は採択運動を展開してきたが、国民の批判の前に、わずかな地域でしか採択されていない。「つくる会」系教科書の採択を許さなかったのは、採択関係者、教職員、市民、保護者の良識であった。
 自由法曹団は、このような「つくる会」系教科書を採択させてこなかった経験を受け継いで、2024年も「つくる会」系教科書及び新たに発行された令和書籍歴史教科書を採択させないために、広範な人々と手を結び、全力を挙げて奮闘することを決意するものである。

 

2024年5月27日

自 由 法 曹 団
2024年福島・岳温泉
5月研究討論集会

 

 

 

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