2024年10月21日、「いわゆる名古屋白竜町事件及び大垣警察市民監視違憲訴訟についての名古屋高裁判決を 踏まえ、警察の情報収集活動等について早急に法規制を求める決議」

カテゴリ:決議,治安警察

PDFはこちら


 

いわゆる名古屋白竜町事件及び大垣警察市民監視違憲訴訟についての名古屋高裁判決を
踏まえ、警察の情報収集活動等について早急に法規制を求める決議

 

1 2つの名古屋高裁判決
 名古屋高等裁判所民事第2部(長谷川恭弘裁判長)は、2024年8月30日、名古屋白竜町マンション暴行でっち上げ事件DNA等抹消請求国賠訴訟(名古屋白竜町事件)において、一審が認めていた国(警察庁)に対する指紋、DNA型、顔写真の抹消を命ずるとともに、マンション建設会社に対しでっちあげを認定して損害賠償を命じた。
 また、同裁判所は、同年9月13日、大垣警察市民監視違憲訴訟において、原告の請求をほぼ全面的に認容し、公安警察の情報収集・保有・提供等の活動(以下「情報収集活動等」という)を違法と断罪したうえ、岐阜県に対して、請求額全額の損害賠償を認めるとともに、公安警察が保有すると認められる原告の個人情報を抹消するよう命じた。

2 事案の概要
 名古屋白龍町事件は、名古屋市白龍町に住む原告が、近隣の高層マンション計画に反対する住民運動を中心的に進めていたところ、マンション建設事業者の現場監督に暴行したという理由で逮捕・勾留・起訴された住民運動弾圧事件に端を発する。当該刑事事件については、原告及び弁護団の尽力により、2018年2月14日に無罪を勝ち取った(一審で確定)。原告及び弁護団は、国に対し、警察が保管している原告のDNA等の抹消を求め、さらに国や愛知県などに対して損害賠償請を求めて提訴したというものである。
 また、大垣警察市民監視違憲訴訟は、岐阜県大垣市上石津町の山あいに風力発電事業計画が持ち上がったことから、地域住民が風力発電に関する学習会を企画するなどしたところ、大垣警察署警備課(公安警察)が、事業主体であったシーテック社(中部電力の子会社)の従業員を呼び出し、上石津町の地域住民2名、大垣市在住の市民活動家1名、団事務所であるぎふコラボの事務局長1名の合計4名の市民について、「このような人物と繋がると、やっかいになる」「大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まないことになりかねない」などと伝え、これら市民4名の個人情報をやり取りしたというものである。これに対し、市民4名が原告となり、プライバシー侵害等を理由として、岐阜県に対して損害賠償請求を、岐阜県と国に対して原告らの個人情報の抹消を求めて提訴したものである。

3 被告が上告を断念
 上記2つの事件は、いずれも被告が上告を断念し、名古屋高裁判決が確定するところとなった。
 まず、名古屋白竜町事件は、捜査の過程でDNA型等の情報は適法に取得されたものであったが、その後に被告人の無罪が確定したことにより、情報を保有しておく必要性がないとして、情報の抹消が命じられた。これに対し、警察庁が上告を断念したことにより、高裁判決が確定した。
 また、大垣警察市民監視違憲訴訟は、一審では情報収集・保有の「必要性がないとはいえない」などとされたものが、高裁では、収集・保有の趣旨・目的が主張・立証されておらず違法と判断された。これに対し、岐阜県は「主張・立証は困難」として上告を断念した。
 いずれの事件も、個人情報をみだりに収集・保有・利用されない自由が認められ、抹消請求が認められたことは画期的であり、さらに、被告が上告を断念したことも画期的である。これは、上告しようもないほどに違法性が明らかであることを物語っている。

4 情報管理の立法措置の及び独立した第三者機関の設置の必要性
 この2つの高裁判決は、警察の情報管理の在り方や公安警察の活動を規律する法律が必要であることを指摘している。
 そもそも、警察が、個人情報を違法に収集・保有したり、あるいは結果として保有が違法状態になったりしても適切に抹消したりしないのは、警察の情報管理の在り方を規制する法律や、公安警察の活動を規制する法律がないことが原因である。警察は、一地方の警察の失態として片づけようとする意図が見え隠れしているが、そのようなことを許してはならない。名古屋白竜町事件も大垣警察市民監視違憲訴訟も、全国どこでも起こりうる事件だと言えるからである。
 今後、警察の横暴を許さず、日本国憲法のもと民主的な警察を実現するためには、警察の情報管理の在り方や公安警察の活動を規律する法律を制定することが急務である。また、これら警察の情報管理の在り方や公安警察の活動が制定された法律に基づいて適正に行われているかどうかをチェックするために、警察から独立した民主的な基盤を有する監視機関を設置することが不可欠である。自由法曹団は、これらの条件を満たす法律を速やかに制定するように強く求めるものである。

                                     以上

 

2024年10月21日

自  由  法  曹  団
2024年岐阜・下呂温泉総会

 

TOP