2025年2月15日常任幹事会において、「日本政府による国連女性差別撤廃委員会への拠出除外等の措置に抗議し撤回を求める決議」を採択しました

カテゴリ:国際,決議

PDFはこちら


 

日本政府による国連女性差別撤廃委員会への拠出除外等の措置に抗議し撤回を求める決議

 

 2025年1月29日、日本政府は、国連人権高等弁務官事務所に対して用途を特定して毎年拠出している任意拠出金について、その使途から女性差別撤廃委員会(CEDAW)を除外すること、そして本年度実施予定であったCEDAW委員の訪日プログラムを見合わせる措置を取ることを明らかにした。
 女性差別撤廃条約は1981年に発効し、日本は1985年に同条約を批准した。同条約は、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃を目的とし、そのためのすべての適当な措置を取ることとされ(第2条、第3条)、ジェンダー平等、政治参加、国籍の取得・保持、教育など様々な分野についての具体的な措置や権利を確保することを定めている(第5条~16条)。条約の実施状況を検討するために女性差別撤廃委員会が設置され(第17条)、締約国は同委員会に報告を提出し(第18条)、同委員会は政府報告を審査して提案及び勧告をする(第21条)。そして、締約国は自国においてこの条約の認める権利の完全な実現を達成するためのすべての必要な措置をとることを約束すると定められている(第24条)。
 2024年10月、女性差別撤廃委員会による8年ぶりの日本政府報告審査が行われ、10月30日には同委員会より総括所見が出された。この総括所見において日本は、夫婦の氏の選択に関する法規制の改正を求める勧告をはじめ、様々な分野における女性差別の撤廃、ジェンダー平等に向けた勧告を受けている。日本政府の措置は、女性差別撤廃委員会が、これらの勧告のうち、皇位継承を「男系男子」に限っている皇室典範の改正を勧告し、これに関する日本政府による記載の削除要請に応じなかったことに対する抗議としてなされたものである。
 そもそも女性差別撤廃委員会が日本政府と異なる見解を勧告したからといって、そのことを理由として報復的措置をとるなどあってはならないことである。日本政府代表団団長は、政府報告審査にあたり、冒頭のステートメントで、「女性に対するあらゆる差別の撤廃及び男女共同参画社会の早期の実現に向けて、今後も女子差別撤廃委員会とともに歩みを進めていきます」と、政府の立場を表明している。今回の措置は、この公に表明した立場をくつがえすものである。皇位継承問題は勧告のごく一部であり、日本政府は、選択的夫婦別姓の導入、選択議定書の批准、女性の政治参加の拡大など、勧告によってジェンダー平等に関する様々な課題について重要な指摘を受けている。にもかかわらず、ジェンダー平等実現のために多様な活動を行う女性差別撤廃委員会への資金拠出を停止することは、国際社会に対して日本がジェンダー平等に関わるあらゆる課題についてこれを軽視する姿勢を示したものにほかならず、政府が公的に人権を軽視することを表明したものであって断じて許されない。
 日本は、世界経済フォーラムが公表しているジェンダー・ギャップ指数において、全146か国中118位と低い順位であり、なおかつこの状況は何年も続いており、改善の見通しも立っていない。日本社会において、女性に対するあらゆる分野の差別の撤廃は喫緊の課題である。日本政府が行うべきことは、勧告を真摯に受け止め、女性差別解消に尽力することである。
 自由法曹団は、人権を尊重し、誰も排除されることのない共生社会を目指すため、日本政府による措置に対して断固抗議し、措置をただちに撤回し、女性差別撤廃条約締約国としての役割と責務を果たすことを強く求めるものである。

 

2025年2月15日
自由法曹団常任幹事会

 

TOP