7月19日付、「北海道警の警察官による市民の取り押さえと排除に抗議する声明」を発表しました

カテゴリ:声明,治安警察

北海道警の警察官による市民の取り押さえと排除に抗議する声明

 本年7月15日午後、札幌市中央区で安倍晋三首相が参院選候補者に応援演説をしている最中に、何度か「安倍やめろ」等と声を発した男性が制服を着た警察官を含む複数の男性に取り押さえられ、演説現場から強制的に排除されるという事態が発生した。

 北海道警警備部は、朝日新聞社の取材に対して「トラブル防止と、公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれがある事案について、警察官が声かけした」と説明したとのことである。

 しかし、現場に居合わせた者が撮影しSNS上で公開している動画によれば、警察官が男性に対して事前に声かけをした形跡はなく、突然取り押さえて現場から排除していることがうかがわれる。

 また、選挙の自由妨害罪を定める公職選挙法225条には演説妨害の罰則規定があるが、最高裁判決は、演説の妨害とは「事実上、演説をすることが不可能な状態に陥らしめること」であり、演説の継続を不可能にしたり、演説を聴取することを不可能にする行為であるとしている(最高裁判決1948年6月29日)。上記動画では、男性は、選挙カーの上で演説する安倍首相に対して、離れた場所から何度か「安倍やめろ」と声を発したに過ぎず、演説が中断されることなど一切なかったのであり、「公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれ」という北海道警の説明にも無理がある。

 そもそも、警察法2条は、警察の活動について「不偏不党且つ公正中立」を旨とし、「いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない」としており、警察は、公平・中立・適正にその職務を行使しなければならない。特に、選挙は国民が選挙権を行使して意見を表明する大切な場であり、選挙期間中はとりわけ慎重な対応を要するべきである。

 警察が、公職選挙法違反のおそれもないのに、事前の声かけもなく、突然複数人で男性を取り押さえて現場から強制的に排除することは、不当な干渉であり、許されないものである。今回の警察の対応は、公権力が、有形力を行使して時の権力者に対する批判を強制的に封じ込めることにもつながりかねない。

 自由法曹団は、民主主義を守り、政治的言論の自由の保障を求める立場から、今回の北海道警警備部の対応に対して厳重に抗議するとともに、全国の警察等の公権力に対して政治的言論に対する干渉を行うことのないよう強く要請する。

 

2019年7月19日      

   自 由 法 曹 団
    団 長 船 尾   徹

 


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