2019年8月28日付、「日本がホルムズ海峡等の有志連合へ参加し自衛隊を派遣することに断固反対する声明」を発表しました

カテゴリ:国際平和,声明,憲法・平和,戦争法制,米軍・自衛隊

日本がホルムズ海峡等の有志連合へ参加し自衛隊を派遣することに断固反対する声明

 

1 本年7月9日に、ダンフォード米統合参謀本部議長は、中東のホルムズ海峡等で「船舶の護衛」を目的とする有志連合を結成することを表明した。そして、8月7日、エスパー米国防長官は、安倍首相と会談して、日本が有志連合への参加を「強く検討すべきだ」と語り、現在、日本政府は、有志連合への参加やホルムズ海峡等に自衛隊を派遣することを検討している。
 アメリカ主導の有志連合は、2001年のアフガン戦争、2003年のイラク戦争、2014年のISIS掃討作戦など、アメリカが他国とともに中東地域で戦争・戦闘する時に結成されてきた。今回の有志連合も、米軍が全体の統制指揮を行うものであり、日本が有志連合に参加すれば、イランをはじめとする中東諸国に対する敵対行動となり、これまで築いてきた友好関係が失われかねない。また、戦争法が施行された今、ホルムズ海峡周辺でひとたび武力衝突が起これば、日本が中東でのアメリカの戦争に巻き込まれるおそれがある。いかなる名目によっても、日本が有志連合へ参加し自衛隊を派遣するべきではない。

2 今回の有志連合結成のきっかけは、トランプ米政権が2018年5月に、イランと欧米諸国の間の「核合意」から一方的に離脱し、イランに対する経済制裁を開始したことである。これは、アメリカが露骨にイスラエルを擁護し、イスラエルが敵視するイランに圧力をかけるためのものであり、今回の有志連合結成の狙いもイラン包囲網を形成することにある。この有志連合へ日本が参加することは、日本がアメリカの中東政策に賛同して追随することを意味し、イランをはじめとする中東諸国との関係を著しく悪化させることになる。
 また、戦争法の下では、ホルムズ海峡周辺に日本の自衛隊が派遣されれば、米艦防護等の任務を負わされる危険性があり、ひとたびアメリカとイランの間で武力衝突が起これば、平時の派遣がすぐさま有事でのアメリカのための武器使用につながる。まさに日本がアメリカの戦争に巻き込まれることになる。
 さらに、有志連合への参加やホルムズ海峡等への自衛隊派遣には法的根拠もない。日本が有志連合に参加し自衛隊を派遣する法的根拠として、防衛省設置法による調査研究や、海賊対処法の海賊対処行動、自衛隊法の海上警備行動などが挙げられているが、中東地域への自衛隊派遣を調査研究と称するのは偽り以外の何ものでもないし、今回の有志連合は海賊に対処するものでもない。海上警備行動も平時における自国船舶の警備を想定したものであり、いずれも法的根拠にはならないのである。

3 軍事力を背景にした有志連合は、ホルムズ海峡周辺の緊張をいっそう高めるだけで、問題の解決にはならない。また、日本の有志連合への参加は、アメリカの誤った中東政策を追認し、日本とイランの関係を悪化させ、アメリカの戦争に巻き込まれるリスクを増大させることになる。その上、法的根拠もない。
 日本はこれまでイランと良好な関係を築いてきており、憲法9条の理念や、日本の中東における信頼を活かしながら対話と外交による平和的解決を目指すべきである。また、アメリカに対しては、毅然と有志連合への参加を拒否し、「核合意」への復帰を求めるべきである。
 自由法曹団は、戦争法の廃止を目指し、戦争に絶対に反対する立場から、自国船舶の保護を口実にした、アメリカの軍事行動への組み込みを意味する有志連合へ参加し自衛隊を派遣することに断固反対する。

2019年8月28日
自由法曹団
団長船尾徹

 

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