9月7日付、福岡県教育委員会に対する「育鵬社版公民教科書を採択したことに抗議する」を発表しました

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             育鵬社版公民教科書を採択したことに抗議する

                                                    2020年9月7日

福岡県教育委員会 御中

                                                自  由  法  曹  団

                                                団長 吉  田  健  一

 

 福岡県教育委員会は、本年8月、同県立輝翔館中等教育学校で2021年度から4年間使用する公民教科書に育鵬社版教科書を採択した。

 育鵬社版公民教科書は、国民主権よりも天皇の役割を情緒的に強調し、基本的人権を軽視して、日本国憲法及び平和主義を連合国から押し付けられた憲法であって「改正」すべきものであるかのように教え、国際紛争の平和的な解決よりも、自衛隊を海外に派遣する必要性を強調する内容となっている。

 また、採択はされなかったが、育鵬社版歴史教科書は「自虐史観」からの脱却を唱え、日本の引き起こしたアジア太平洋戦争が、アジア諸国を欧米の植民地支配から解放することを目的としていたかのように教え、日本の加害責任については曖昧な記述にとどまっている。

 このように育鵬社版教科書は、その記述に多くの誤りを含むものであるとともに、憲法に対する見方があまりにも一面的で、教育基本法や学習指導要領に照らしても問題がある。私たち自由法曹団は、今回の教科書採択に先立って、育鵬社版公民教科書の問題点を明らかにする意見書を公表し、福岡県教育委員会にも届けてきた。

 福岡県立輝翔館中等教育学校ではこれまで育鵬社版歴史・公民教科書が採択されてきたが、これに対しては県民から強く批判がなされてきた。今回の採択において育鵬社版歴史教科書を採択しなかったことは、県民の声に耳を傾けたものとして一定評価できるが、同社版公民教科書を採択した点は、前述した同社版公民教科書の問題点を看過し、県民の批判を無視するものであって許されるものではない。

 中学生は、人格的成長の途上の重要な時期であり、このような時期に生徒が自己の人権侵害に声を上げるとともに、他者の人権を尊重することや、主権者として具体的に行動すること、諸外国(特に近隣他国)と協調して平和を構築するといった憲法の原則について正しく理解することが大切である。しかし、このような重要な時期に育鵬者版教科書によって一面的で偏った教育を受けることで、憲法の原則に対する正しい認識をもつことができなくなることは、生徒に回復しがたい重大な悪影響が及ぼされることが強く危惧される。

 私たち自由法曹団は、福岡県教育委員会の今回の公民教科書の採択に対し抗議するとともに、同委員会に対し、改めて採択をやり直し、育鵬社教科書を採択しないよう求めるものである。

                                                          以上

 

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