2020年10月12日、法律家6団体「いのちと人間の尊厳を守る、新しい政治を!」集会アピール
2020・10・12
「いのちと人間の尊厳を守る、新しい政治を!」集会アピール
1 はじめに
改憲問題対策法律家6団体連絡会は、市民とともに、安倍首相の目指す憲法9条他の改憲に反対し、憲法を蹂躙し権力の私物化を図る安倍政権を強く批判してきました。安倍首相が辞任して、後継の菅政権が始動し年内総選挙の可能性も指摘される中、平和といのちと人間の尊厳を守る未来を拓く新しい政治の実現を目指して、本日、この集会を開催しました。
2 憲法に基づく政治への転換を
第2次安倍政権発足以降、立憲主義や民主主義に反する政治、その結果として「いのち」や「暮らし」を守らない政治が公然と行われてきました。秘密保護法の強行採決(2013年)、集団的自衛権行使容認の閣議決定(2014年)、安保法制強行採決(2015年)、共謀罪の強行採決(2017年)、米軍兵器の爆買いなどの「戦争できる国づくり」諸政策は、憲法で保障されたさまざまな権利・自由を戦争のために制約するものであり、憲法の平和主義とは相容れません。安倍政権は、選挙や県民投票で何度も反対の住民意思が示されたにもかかわらず、「地方自治」も蹂躙し、辺野古新基地建設を強行してきました。いまだ福島第一原発事故の被災者への完全な補償や暮らしの回復がなされない中、再稼働反対の民意もかえりみず原発を再稼働させました。労働者を守る労働諸法制を改悪し、非正規雇用を増やして貧困と格差を増大させました。医療や保健分野等への財政支出の削減も着実に進められ、こうした「新自由主義政策」が、コロナ感染に対して十分に対応できない事態を生じさせています。
安倍政権の後継の菅政権は、「安倍政治の継承」をうたい、「憲法改正にも取り組む」とし「敵基地攻撃能力」の保有についても前向きです。また、「自助」を強調する新自由主義の推進を公言し、日本学術会議の会員任命拒否問題で明らかとなったように、日本学術会議法に違反し、従来の政府解釈も説明もなく一方的に覆し、憲法23条が保障する学問の自由を侵害する行為を行っています。批判されると、安倍元首相と同様に、問題の「すり替え」と「ごまかし」で説明責任に背を向ける姿勢を隠そうともしていません。
以上のように、安倍政権とこれを引き継いだ菅政権の政治は、法と憲法を無視し、主権者の民意にも耳を貸さない反立憲主義、反民主主義政治です。一切の戦争と武力の行使および武力による威嚇を放棄し、戦力の保持を禁止した憲法9条や、「すべて国民は、個人として尊重される。」とした憲法13条、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営なむ権利を有する。」とした憲法25条に違反する政治といえます。私たちは、安倍政治の継承を認めず、憲法に基づく政治への根本的な転換を求めます。
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合が、先月、取りまとめた要望書は、Ⅰ憲法に基づく政治と主権者に奉仕する政治の確立、Ⅱ生命、生活を尊重する社会経済システムの構築、Ⅲ地球的課題を解決する新たな社会経済システムの創造、Ⅳ世界の中で生きる平和国家日本の道を再確認するの4つの項目を柱とし、いのちと平和、個人の尊厳を守る政治の実現、憲法の理念を社会のすみずみにいきわたらせ、安倍政権で失われた立憲主義と民主主義の回復に取り組んでいく政治を、立憲野党に要望するものであり、私たちはこの考え方を支持します。
3 敵基地攻撃能力保有論批判
本年8月4日、自民党政調会がまとめた「国民を守るための抑止力向上に関する提言」は、いわゆる「敵基地攻撃」能力の保有に正面から踏み込むことを政府に求めています。従来から、政府は、「専守防衛」すなわち、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢」のもと、攻撃的兵器は、憲法9条2項により保有を禁止されている(2017年8月10日小野寺防衛大臣)、いわゆる敵基地攻撃を目的とした装備体系を整備することは考えていない(2019年5月16日安倍首相)と繰り返し答弁してきました。自衛隊が敵基地攻撃の可能な兵器を保有することは、仮に個別的自衛権に限るとしても日本が長く守ってきた「専守防衛」政策を完全に投げ捨てるものであり、政府解釈を前提にしても、憲法9条2項に違反することは明白です。ましてや集団的自衛権の行使が一部容認された安保法制の下では、日本が攻撃されていなくても海外で自衛隊が先に敵を攻撃する危険性が高まり、憲法9条1項が禁止した武力の行使や国権の発動たる戦争へとつながる危険性が格段に増すことになります。
4 まとめ
本年5月、安倍政権は、「法の支配」「権力分立」を否定する改正検察庁法案を、コロナ禍のどさくさに紛れて強行採決しようとしましたが、私たち市民の力で廃案に追い込み、8月の安倍首相辞任へとつなげました。市民の力で政治は変えることができます。
私たちは、憲法の理念が社会のすみずみにいきわたる政治、新型コロナウィルス感染拡大で苦しむ市民のいのちと生活が守られる政治の実現を立憲野党に求めるとともに、憲法9条を破壊し、日本を普通に戦争する国に改造し東アジアを中心に世界の平和に脅威を与えることとなる敵基地攻撃能力保有に断固反対することを宣言し、集会のアピールとします。
集会参加者一同