2023年6月12日、「改定入管難民法の成立に抗議し、難民認定審査と入管行政の抜本的な見直しを求める声明」を発表しました

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改定入管難民法の成立に抗議し、難民認定審査と入管行政の抜本的な見直しを求める声明

 

1 政府が今国会に法案提出した改定入管難民法(改定入管法)が、参議院法務委員会での強行採決の末、2023年6月9日に参議院本会議で可決、成立した。
 改定入管法は、自由法曹団が2023年2月16日付で発出した「政府による入管法改定案再提出に反対する声明」で指摘したとおり2年前の通常国会で厳しい批判を浴びて廃案となった旧法案の内容をほぼそのまま維持するものである。特に、極めて低い難民認定率を放置したまま難民認定申請中の送還が停止される規定に例外を設ける点や退去強制拒否罪を創設する点は、迫害の恐れのある国への送還を禁止する難民条約のノン・ルフールマン原則や家族統合の原則など国際人権法・難民保護規範の観点から許されないものであって、外国人の人権を侵害し、その身体・生命への直接的な危害を招来するものである。

2 さらに、今国会の審議中、政府が主張する法改定の根拠を揺るがす事実が次々に明らかになった。「送還忌避者」の年度ごとの増減について統計を取っていないこと、法改定の直接的な根拠とされた「申請者の中に難民(と認定できる人)がほとんどいない」との発言をした難民審査参与員(柳瀬房子氏)は「1年6カ月で500件の対面審査を行った」としていたが、斎藤健法務大臣が認めるとおり、そのような審査は「不可能」であったこと、その柳瀬氏に全体の4分の1にあたる審査が配点されるなど参与員によって事件の配点数に極端な偏りがあったこと、入管庁が「送還忌避者」を2022年度に456件減らす「縮減目標」をたてていたこと、ウィシュマ・サンダマリさんの死後に入管の医療体制改善が進んだとの報告にあたって大阪入管で医師が酒に酔った状態で被収容者を診察していた事実を隠蔽していたこと等の判明により、改定法の根拠や妥当性は根底から崩壊し、全国各地で大規模な反対の世論が巻き起こった。にもかかわらず、政府・与党は、こうした事実を直視せず、審議を尽くさないまま数の力に物を言わせて採決に踏み切った。国民の声を無視し、国会審議を無意味化する暴挙であり、到底許されるものではない。

3 自由法曹団は、このように提案根拠が崩壊し、深刻な矛盾が露呈していたにもかかわらず、国際社会の趨勢に逆行して外国人の人権保障を後退させる改定入管法が強行的に成立させられたことに対して強く抗議する。あわせて、政府に対し、今回の審議中にその一端が明らかになった難民認定審査と入管行政の実態を徹底的に明らかにしたうえで、その抜本的な見直しを求める。今回の法改定によって、問題を幕引きとすることは決して許されない。自由法曹団は、誰もが国籍の違いによらず人間としてふさわしい取扱いを受けることのできる世界の実現に向けて日本が先頭に立てるよう、国際的な人権水準に沿った抜本的な難民認定審査と入管行政の見直しと必要な立法措置実現のためにたたかう決意である。

 

2023年6月12日

自  由  法  曹  団
団長 岩 田  研 二 郎

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