2023年8月31日、「日本政府に対して関東大震災時の朝鮮人虐殺の真相究明を求めるとともに、歴史の修正を許さず、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムの根絶に向けて取り組むことを決意する声明」を発表しました

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日本政府に対して関東大震災時の朝鮮人虐殺の真相究明を求めるとともに、歴史の修正を許さず、
ヘイトスピーチ・ヘイトクライムの根絶に向けて取り組むことを決意する声明

 

1 今年で関東大震災から100年を迎える。震災発生直後、朝鮮人が井戸に毒を入れた等のデマ、「不逞鮮人」等のヘイトスピーチに煽動された民衆が「自警団」を結成し、官憲もこれに加担して、数多くの罪のない朝鮮人を虐殺した。この事件は人種差別に基づく大虐殺事件であり、最悪のヘイトクライム事案であったと評価することができる。

2 大量虐殺に対する日本政府の責任は重大である。官憲がデマの拡散に加担したのみならず、旧四ツ木橋付近における虐殺においては軍隊が捕らえた朝鮮人を機関銃の一斉掃射で射殺する等した。さらに当時の政府の指示により犠牲者の遺体は掘り返され、別の場所に隠匿されたという。政府は現在に至るまでこの事件の真相を隠蔽し続け、公的な調査は行われておらず、虐殺の犠牲者数も確定できず、遺族への謝罪や補償もなされていないのである。

3 戦後の一時期、この事案に関して民間を中心に反省の取組みがなされた時期があった。ところが、近年の日本では朝鮮人を差別する人種差別主義と歴史を歪曲しようとする歴史修正主義が活発化し、毎年9月1日に墨田区・横網町公園で催される追悼式典には右翼団体の妨害がなされ、小池百合子東京都知事は、就任2年目の2017年から追悼文送付を拒否するようにすらなっているのである。

4 人種差別と歴史修正主義が活発化する社会では、ヘイトスピーチ、ヘイトクライム事件もまた増加する。近年に限っても、川﨑市の多文化交流施設「川崎市ふれあい館」への殺害や爆破の脅迫、韓国民団愛知県本部、名古屋韓国学校、京都府宇治市のウトロ地区(在日コリアン集住地区)の民家等への連続放火事件などが発生し、インターネット上には、在日コリアンや朝鮮学校に対するヘイトスピーチが溢れている。

5 かかる危険な状況を変えるには、まず、関東大震災時の朝鮮人虐殺について、戦後の反省に立ち返り、政府が虐殺の事実を認めて公式に謝罪することが不可欠である。その上で、事件の真相をについて公的な調査を行い、遺族への謝罪や補償を行うべきである。
 また政府は、ヘイトクライムの実態の正確な把握とこれを防止するための適切な取り組みを行い、ヘイトクライムの原因となるヘイトスピーチを社会から根絶する決意を表明すべきである。

6 自由法曹団は、震災直後の1923年9月20日、東京弁護士会館で総会を開き、「震災中における朝鮮人殺害の真相およびその責任に関する件」を決定している。その決意は今も変わらない。団は、100年の節目に立って、日本政府に対して関東大震災時の朝鮮人虐殺の真相究明を求めるとともに、今後も、歴史修正主義との闘い、ヘイトスピーチ・ヘイトクライム根絶に向けた取り組みを進めていくことを表明する。

 

2023年8月31日

                        自 由 法 曹 団

  団長 岩田 研二郎

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