2024年5月16日、永住資格の取消事由拡大を含む入管法の改悪に反対する要請書を衆議院法務委員に送付しました

カテゴリ:国際,声明

PDFはこちら


 

要請書

衆議院法務委員 殿

                        

 私たちは、永住資格の取消事由拡大を含む入管法の改悪に反対します。

 現在、衆議院法務委員会で審議されている入管法の改定案は、「永住許可制度の適正化」と称して、①「この法律に規定する義務を遵守せず」又は②故意に公租公課の支払いをしない場合③一定の犯罪によって拘禁刑に処せられた場合に、永住者の在留資格を取り消すことを可能にする内容を含んでいます。

 しかし、①入管法上の義務を遵守しないことについては、うっかり在留カードの常時携帯義務(入管法23条2項)や在留カード紛失を知ってから14日以内の再交付申請義務(入管法19条の12第1項)に違反してしまったような極めて軽微な違反であっても、法文上は制約なく「永住者」の在留資格を取り消せる建付けになっています。②故意に公租公課の支払いをしない場合については、経済的な困窮から公租公課の支払いが滞ることは国籍によらず誰であっても起こり得るところ、入管庁は「故意による公租公課の滞納」の統計すら持っておらず、立法事実がありません。③拘禁刑に処せられた場合については、執行猶予が付いてさえ取消事由に当たることになります。外国籍住民についても、日本国籍者に対する措置と平等に、法令に基づく、督促、差押、行政罰や刑罰といった制裁を適切に課せば足りるのですから、外国籍住民に対してのみ、日本での安定的な生活基盤を根底から覆す永住許可の取消という極めて重い制裁を加重する理由はありません。いかなる場合に取消後の他の在留資格への変更が許可されるのかも不明確です。

 もともと「永住者」の在留資格は、原則として引き続き10年以上在留している者にのみ、「素行が善良であること」、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」及び「その者の永住が日本国の利益に合すると認められる」ときという、諸外国と比較して厳しい要件をクリアしてやっと得られるものです。「日本人と外国人が互いに尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会の実現を目指」すのであれば、このような、日本で安定した生活をするための数少ない法的地位である永住者の地位を不安定化し、全ての永住者に悪影響を及ぼす本改定案は、到底許容できるものではありません。

 「適正な在留確保のため」という中身のない建前に惑わされることなく、本改定案に反対をお願いするため、本文書を送付いたします。

 

2024年5月16日

自 由 法 曹 団
団 長 岩田研二郎

 

TOP