2024年6月12日付、「自民党が提出する政治資金規正法改正案修正案に反対し、「政治とカネ」の問題の抜本的解決を求める声明」を発表しました

カテゴリ:声明,憲法・平和,明文改憲

自民党が提出する政治資金規正法改正案修正案に反対し、
「政治とカネ」の問題の抜本的解決を求める声明

1 本年6月6日、自民党が提出した、公明党や日本維新の会の意見を反映させた政治資金規正法改正案の修正案が、衆議院にて可決された。
 同修正案は、企業団体献金や政治資金パーティーの全面禁止といった、国民の要望する抜本的な政治改革には一切踏み込まず、政策活動費や公開基準額の温存で「ブラックボックス」を残すものであり、「政治とカネ」の問題の解決に全く繋がらないものである。
2 今回、自民党が政治資金規正法改正案をせざるを得ない状況に追い込まれたのは、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題が発覚したからである。すなわち、安倍派などの自民党の派閥がパーティー券収入を政治資金収支報告書に記載せず、議員らがパーティー券収入のノルマを超えた分を自分のものにする「キックバック」手法を中心に、裏金づくりをしていたのである。裏金に関与した自民党議員は、判明しただけでも90人を超えており、裏金の総額は、2018年から2022年までの5年間だけで7億5000万円にも及ぶ。また、裏金の使途は明らかにされず、選挙の際の買収のために使われた可能性も否めない。
 そもそも、1988年のリクルート事件などの金権政治への国民的な批判を背景に、1994年に政治改革法が強行され、民意を歪曲して政権党に虚構の多数を保障する小選挙区制とともに、多額の政治資金を税金で賄う政党助成金制度が導入された。しかし、自民党には、金権政治から本気で脱却しようという気はなく、企業・団体献金制度の廃止を棚上げにし続けた。そして、自民党は、30年にわたり多額の政党助成金を受け取りながら、同時に政治資金規正法の抜け穴を使って多額の政治献金を「二重取り」してきたのであり、裏金問題の影響で補選や首長選で自民党あるいは自民党の推す候補が負け続けるなど、国民から極めて強い批判が巻き起こっているのは当然である。
3 今回衆議院が可決した政治資金規正法改正案の修正案は、裏金問題の当事者である自民党が作成したお手盛りの案に、公明党や日本維新の会が求めていた公開基準額などのわずかの修正がされたものに過ぎない。
 また、自民党の二階俊博元幹事長が在任中に党から50億円を受け取りつつも、その使途が不透明であることなどが問題となった政策活動費に関して、政治資金収支報告書の要旨の作成・公開義務を削除して法定化し、合法化を図るものとなっており、「政治とカネ」の問題との決別からはむしろ逆行している。領収書の公開についても、公訴時効が経過した後である10年後の公開とされており、違法行為を行っても刑事処罰から逃れられる仕組みとなっている。
 さらに、政治資金パーティーのパーティー券購入者の氏名公開基準については、5万円超に限って公開するものとし、5万円以下の購入者については公開しなくて良いものとする。5万円以下というのは決して些少な額ではないし、金額がいくらであれ、公開しなくて良い範囲を定めることは、追及された際に虚偽の説明で言い逃れることも可能とし、抜け穴として使われることが許されてしまう。
 加えて、「連座制」についても、会計責任者が処罰された場合に、代表者が確認事項の確認をしないで確認書を交付したときにのみ代表者(政治家)が処罰されるとされており、かつ、会計責任者が虚偽の説明をしたり確認を妨げたりした場合には代表者(政治家)は責任を負わないとされており、こちらも抜け穴を残し、政治家が責任を免れやすい規定となっている。
 本修正案は、「議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする」(1条)政治資金規正法の目的に何ら適うものではない。
 このような修正案からは、今回の裏金問題に正面から向き合わず、「政治とカネ」の問題解決を先送りにしたいという自民党の思惑が透けて見えるのであって、到底許されるものではない。
4 他方、立憲民主党、日本共産党がそれぞれ提出した政治資金規正法改正案では、企業・団体によるパーティー券購入の禁止(もしくは政治資金パーティーそのものの禁止)が定められ、政策活動費は廃止とされ、連座制は(重)過失の場合に公民権の停止を認めるものとなっている。
 「政治とカネ」の問題を抜本的に解決するためには、上記の野党案のような改正は必要不可欠なものである。
 今回の自民党裏金問題は、単に国民の政治不信を招いただけでなく、使途不明な裏金が選挙買収などに利用された可能性も否定できず、我が国の民主主義の根幹を揺るがすものである。
 自由法曹団は、実質的に意味のない政治資金改正法修正案を成立させることによって、国民の目を欺き、不祥事に幕引きを図ろうとする自民党の姿勢を強く非難する。そして、企業・団体献金の禁止、企業・団体によるパーティー券の購入禁止などの真に求められる対策を含めた政治資金規正法改正による「政治とカネ」の問題の抜本的な解決を強く求める。
 
 2024年6月12日
自  由  法  曹  団
団長 岩  田  研  二  郎

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