2024年6月19日、「永住資格取消事由拡大を含む改定入管法の成立に抗議する声明」を発表しました

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永住資格取消事由拡大を含む改定入管法の成立に抗議する声明

 

1 政府が今国会に提出した出入国管理及び難民認定法(入管法)の改定案が、2024年6月14日に参議院本会議で可決、成立した。
 同改定入管法には、入管法上の義務を遵守しない場合や、故意に公租公課の支払いをしない場合、一定の犯罪によって拘禁刑に処せられた場合に、出入国在留管理庁が「永住者」の在留資格を取り消すことができる旨の条項(以下「本件永住資格取消条項」)が含まれており、在留期間や就労制限等がなく、外国籍住民が日本で安定的に生活することを可能にする数少ない在留資格であるところの「永住者」という法的地位を著しく不安定化するものである。

2 そもそも本件永住資格取消条項は、閣議決定の前提となる有識者会議でも全く検討されていなかった経緯があり、今国会の審議の中でも永住者が公租公課を滞納するケースが多いとの事実は示されず、本改定法で取消事由とされた「故意に」よる滞納の件数は調査すらしていないことが判明するなど、立法事実に関する調査や議論が行われないまま提案されたことが明白なものであった。
 政府は、「やむをえない事情があった場合には取消事由に該当しない」、「取消対象になるのは一部の悪質な場合に限られる」などと答弁しているが、法文上はそのような限定を読み取ることは困難である。同様に、在留カードの常時携帯義務違反などの軽微な違反であっても法文上は「永住者」の在留資格を取り消し得ることになる。政府は今後ガイドラインを策定すると述べるが、それでも入管の広範な裁量によって永住者の地位が恣意的に剥奪される危険は否定できない。
 さらに現行法でも永住者は一定の刑罰法令違反等があった場合には退去強制の対象となるのに、本件永住資格取消条項では執行猶予付きであっても拘禁刑の判決が確定すれば在留資格の取消しを可能とするものであり、外国籍住民に対してのみ、刑罰に加えて永住資格の取消という極めて重い制裁を加重することとなり極めて不合理である。

3 このように立法事実も合理性も全くない本件永住資格取消条項からは、外国籍住民を生涯にわたり政府当局の厳しい管理下に置き、恣意的に日本から排除することが可能な立場に追いやろうという不当な差別的意図を見て取らざるを得ないのであり、これは政府が謳う「日本人と外国人が互いに尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会の実現」との理念とは対極に位置するものである。
 自由法曹団は、本件永住資格取消条項を含む改定入管法が成立したことに対して強く抗議するとともに、外国籍住民の地位が不当に脅かされることのないよう、今後のガイドライン策定の経過及び法の運用を監視し、ひいては本件永住資格取消条項を廃止に追い込むためにたたかう決意である。

 

2024年6月19日

自 由 法 曹 団
団長 岩 田 研二郎

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