2024年7月16日、「大田原市教育委員会による育鵬社版歴史・公民教科の採択に抗議する」声明を発表しました

カテゴリ:声明,子ども・教育,教科書問題

大田原市教育委員会による育鵬社版歴史・公民教科の採択に抗議する

2024年7月16日

大田原市教育委員会 御中

自   由   法   曹   団
団 長  岩  田 研二郎

 栃木県大田原市教育委員会は、本年7月10日、市立中学校で2025年度から4年間使用する歴史及び公民教科書に育鵬社版教科書を採択した。
 育鵬社版歴史教科書は、「自虐史観」からの脱却を唱え、日本の引き起こしたアジア太平洋戦争が、アジア諸国を欧米の植民地支配から解放することを目的としていたかのように教え、日本の加害責任については曖昧な記述しかしていない。
 また、同社版公民教科書は、国民主権よりも天皇の役割を情緒的に強調し、基本的人権を軽視して、日本国憲法及び平和主義を連合国から押し付けられた憲法であって「改正」すべきものであるかのように教え、国際紛争の平和的な解決よりも、自衛隊を海外に派遣する必要性を強調する内容となっている。
 私たち自由法曹団は、育鵬社版教科書は、憲法に対する見方があまりにも一面的で、教育基本法や学習指導要領に照らしても問題があることや、憲法について不正確な記述がなされているため、高校入試問題を解く上でも不都合が生じうる点について、問題点を明らかにする意見書を公表し、大田原市教育委員会にも届けていた。
 また、これまでも大田原市教育委員会は、育鵬社版歴史・公民教科書を採択してきたが、これに対しても市民から強く批判がなされてきた。
 今回の教科書採択は、かかる批判・反対の声を全く無視して行われたものである。
 採択された教科書で教育を受けることになる中学生は、人格的成長の途上の重要な時期にあり、上記のような育鵬社版教科書による一面的で偏った教育を受けることにより、生徒に回復しがたい重大な悪影響が及ぼされることが強く危惧される。
 日本の侵略戦争の事実を否定し、国際問題の平和的な解決を軽視する教科書による学習を強いられる生徒がいることは、日本の将来にとっても重大な問題であり、国内だけでなく国際社会からも厳しい批判を受けることは確実である。
 私たち自由法曹団は、栃木県大田原市教育委員会の今回の歴史・公民教科書の採択に対し抗議するとともに、同委員会に対し、改めて採択をやり直し、育鵬社教科書を採択しないよう求めるものである。

以上

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