2022年10月26日、「防衛省職員及び国指定代理人による弁論準備手続の秘密録音に厳重に抗議し、事案究明と徹底した再発防止を求める声明」を発表しました
防衛省職員及び国指定代理人による弁論準備手続の秘密録音に厳重に抗議し、
事案究明と徹底した再発防止を求める声明
2022年10月26日
自由法曹団 団長 岩田研二郎
1 2022年10月11日、横浜地方裁判所横須賀支部で行われた国を被告とする労働事件(地位確認等請求事件)の弁論準備手続において、被告国の指定代理人(防衛省職員)が非公開であるはずの同手続の様子を秘密録音していたという事件が発生した。同日の期日では、被告側が退席し、法廷内に裁判官・書記官・原告訴訟代理人弁護士のみが残った後にも、荷物にまぎれさせ、それとわからないように残置されていた録音機が作動していたことが判明しており、裁判官と反対当事者側との協議内容を秘密裏に録音していたと評価するしかない事態となっている。手続終了後、裁判官立会いのもと、書記官が当該録音機の内容を調査したところ、同日の手続以外の期日においても手続の内容が録音されていたことが確認されている。
2 そもそも、本件の防衛省職員の行為は、「法廷における写真の撮影、速記、録音、録画又は放送は、裁判長の許可を得なければすることができない。」と定める民事訴訟規則第77条に違反する明確な違法行為である。
また、本件は、弁論準備手続という非公開手続のもと、和解に向けた話し合いが進められている中で、被告側が退席していることを前提とした原告側の内情・センシティブな情報提供や意見交換が行われる場が秘密裡に録音されていたものであり、盗聴とよばれても仕方のない行為である。当該行為は、訴訟遂行における当事者間の信頼関係を破壊し、公平・公正な裁判の実現を妨げるとともに、不正な手段により一市民(一労働者)の権利利益を侵害するもので、極めて重大な問題である。しかも他の期日についても秘密録音していたことが判明しており、一貫した意図がうかがわれる。
かような司法のルールを破る違法行為を国自身が行っていたことは極めて遺憾であり、防衛省以外の省庁を対象とする他の裁判においても、同様に秘密録音が行われているとの疑念を持たざるを得ず、この意味でも、裁判当事者としての国の誠実性への信頼を破壊した責任は計り知れない。
3 団は、国に対し、当該行為が国民の裁判への信頼を揺るがし、国民の人権を著しく侵害するものとして厳重に抗議する。そして、国に対し、本件関係者に対する厳正な対処は当然として、徹底した事実究明とその調査内容の公表を行い、さらに、国が一方当事者である他の事件での同種の秘密録音の実施等の状況についても事案究明を徹底させ、実効性ある再発防止策の実施を求める。
また、裁判所に対しては三権の一翼である司法権を担うものの責務として、司法に対する信頼回復と公平・公正な裁判の実現のため、今般の国の行為に対して厳正な対処を行うことを求めるものである。
以上