2022年10月24日、新自由主義に基づく政治から脱却し、貧困と格差を是正し誰もが安心して 暮らすことのできる社会づくりのために全力で奮闘する決議
新自由主義に基づく政治から脱却し、貧困と格差を是正し誰もが安心して
暮らすことのできる社会づくりのために全力で奮闘する決議
1 2020年から続く新型コロナウイルス(以下「コロナ」)感染拡大は、日本にかねてより存在した格差と貧困をより深刻化し、顕在化させた。派遣労働者をはじめ、不安定雇用に身を置かざるを得なかった人々が、雇用の調整弁として利用され、真っ先に職を失い、窮地に追い込まれた。住み込み労働者や、日雇いの仕事により定まった住居を持つことができずかろうじて日々の生活を維持していた人々が、住まいを失い、人とのつながりを失い、「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることができなくなった。民間団体等が寄付などを原資に運用するフードバンクには長蛇の列が作られ、相談会には多くの人々が助けを求めて集まった。
何度も繰り返された外出自粛要請などにより、テレワークが進展するなどした一方、自宅で過ごさざるを得ない時間が増え、家族関係の悪化、DV被害の深刻化等により家を出ざるを得ず、住まいを失う人も多く出ている。特に、家庭で弱い立場に置かれていたり、非正規雇用によらざるを得ない女性や若年層に与えられた影響は甚大である。
かかるコロナ禍に対して、政府は有効な対策を打つこともできず、感染拡大と外出自粛を繰り返し、日本経済に大きなダメージを与えたにもかかわらず、再度、全国旅行支援を打ち出し、多額の税金を投じている。かかる政府の支援策は、観光・旅行業界と旅行に行く程度の生活に余裕がある人々への支援に過ぎず、旅行に行くことなどできない困窮に喘ぐ人々に対する支援にはならない。このように、政府は貧困解消のために必要な「公助」を投げ出し「自助」を強調することで、多くの人々の生活を窮地に追いやっているのであり、その政治責任は極めて重い。
2 このようなコロナ禍による深刻な貧困が継続している中、2022年にはロシアによるウクライナ侵攻、著しい円安の進行などにより、急激な物価高に見舞われている。日用品や食品が次々と値上げされ、人々の生活は圧迫され、コロナ禍で窮地に立たされた人々はさらに追い詰められている。
特に、20年以上にわたり主要先進国のなかで唯一実質賃金が上がらない日本においては、物価高及び円安による影響は甚大であり、多くの国民の生活を危機に陥れている。
かかる物価高等に対しても、低所得世帯に5万円を給付することを発表したほかは、輸入小麦の政府売り渡し価格の維持、ガソリン価格の抑制等、従前の施策を維持する取り組みを行っているものの、正に生活に困窮する世帯への救援には程遠く、効果的な対策を実施できているとは到底評価できない。
3 岸田文雄首相は、2022年10月5日、経済財政諮問会議において、物価高騰で厳しい状況にある人々への支援に万全を期す旨述べるが、実態は真逆である。本年10月には一定の収入のある75歳以上の高齢者の医療費負担が1割から2割に引き上げられた上、実際には公費負担の削減が大きな目的であるにもかかわらず現役世代のわずかな負担軽減を口実にするなど世代間格差を煽ることで、高齢者医療費の窓口負担や介護負担の更なる増加を実行しようと目論んでいる。
上記のような過酷な現状を生み出している原因は、大軍拡のための防衛予算の大幅な拡大の一方、社会保障・社会福祉の削減と国民負担の増加を進める新自由主義に基づく政治にある。日本の防衛を掲げながら、足元ではその日食べる物にも困窮する国民を多数生み出すのでは本末転倒というほかない。既に、長年にわたる新自由主義に基づく政治により、雇用と国民生活は破壊され、日本経済は限界を迎えている。今こそ、新自由主義路線を見直し、国民の生活を立て直し、誰もが安心して生活のできる社会を構築する政治に転換しなければならない。
我々自由法曹団は、新自由主義政治を転換し、国民生活を立て直すとともに総ての人々が憲法25条の保障する生存権を享受し、安心して生活を送ることができる社会を構築するため、全力を挙げて奮闘することをここに宣言する。
2022年10月24日
自由法曹団2022年京都総会