2022年10月24日、多様な性のあり方の尊重を求め、すべての人が平和に 安心して生活できる社会の実現を求める決議

カテゴリ:市民・消費者,決議

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多様な性のあり方の尊重を求め、すべての人が平和に
安心して生活できる社会の実現を求める決議

 

1 人の性のあり方は極めて多様であり、様々な性のあり方はありのまま尊重されなければならない。性のあり方によって個々人が差別されることなく、安心して生活できることは憲法13条及び14条、前文が保障する基本的人権である。しかし、現実には、性的マイノリティの少なくない人々は、奇異の目で見られることを恐れ性のあり方を隠して暮らしたり、カミングアウトしたことでいじめやハラスメントなどの被害にあったり、社会制度の枠組みから排除されるなど、他者からの差別意識や偏見、不利益に晒されながら生活をしている。2021年に「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」案の国会提出が見送られるなど、性的マイノリティへの差別解消に向けた法整備も大きく後れをとっていると言わざるを得ない。多種多様な人々がそれぞれのアイデンティティを尊重される共生社会の実現のためにも、市民運動・法廷闘争を通じた差別解消のための取り組みが重要となっている。

2 法整備の立ち遅れは著しく、司法の場での救済すら困難な現状が続いている。
 例えば、法令上同性のカップルは事実婚としての保障の対象にすらならないこともある。2014年12月に名古屋市で起きた殺人事件において、被害者と20年以上同居生活をしていた同性パートナーが事実婚の配偶者として犯罪被害者給付金の申請を行ったところ、不支給裁定を受けた。この判断に対する裁定取消訴訟は、2020年6月4日に名古屋地裁で請求棄却となり、名古屋高裁においても2022年8月26日に控訴を棄却されている。
 トランスジェンダーの戸籍の取り扱いに関しては、2004年に施行された性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律が、戸籍上の性別変更の要件として過度な負担を課していることが問題となっている。卵巣、精巣等の生殖腺等の機能を永続的に欠くという要件(同法第3条1項4号)の下で、事実上生殖腺摘出手術を強いられるケースや、健康上や経済的な理由などの理由で手術を受けられないために戸籍の取り扱いを変更できず社会生活上の性別と公的書類記載の性別が一致しない状態を強いられるケースがある。最高裁は、同要件 について2019年1月「現時点では合憲」との判断を出しているが、複数の裁判官が「違憲の疑いが生じている」などの意見を付し、また、国内外で手術要件撤廃を求める声が上がった。現在、生殖腺除去手術を経ないまま、静岡家裁浜松支部に性別変更を申し立てているトランス男性について審理が続いている。他の要件「現に婚姻をしていないこと」(同2号)、「未成年の子がいないこと」(同3号)の憲法適合性も問題となる(2020年、2021年に最高裁はそれぞれ合憲と判断)。
 一方で、司法における変化の兆しもあり、法令上(戸籍や公的書類に記載される性別の取り扱い上)同性どうしのカップルの法的保障に関しては、法令上同性どうしの結婚を認めない現行法の憲法適合性が問題になっている。この点、「結婚の自由をすべての人に」訴訟では、2021年3月17日、札幌地方裁判所において、同性間に婚姻による法的効果を全く認めない民法及び戸籍法が憲法14条1項に違反するという画期的な判決を得た。2022年6月20日の大阪地裁判決では合憲という不当判決がなされたが、東京地裁(1次訴訟)では同年11月30日に判決が予定され、名古屋地裁、福岡地裁、東京地裁(2次訴訟)でも審理が続いている。

3 さらに、社会的な動きとして、とりわけトランスジェンダーに関しては、2018年にお茶の水女子大がトランスジェンダー女性を受け入れたことを契機として、インターネット上を中心にトランス女性を排斥するような言動も多く見られる。
 個人の尊重が守られることは、憲法の最も重要な理念である。しかし、これまで指摘した通り、現在の社会では、多様な性のあり方が尊重されているとは言い難い現実が多数存在している。自由法曹団は、法整備を含め、人々の様々な性のあり方において個人の尊厳が守られ、性のあり方によって個々人が差別されることなく、安心して生活できる社会の実現を強く求めるものである。

2022年10月24日

自由法曹団2022年京都総会

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