2023年3月6日、「生活保護基準引下げ違憲訴訟の横浜地裁判決及び宮崎地裁判決の勝利を歓迎し、政府に対し、生活保護基準の見直しを求める声明」を発表しました
生活保護基準引下げ違憲訴訟の横浜地裁判決及び宮崎地裁判決の勝利を歓迎し、
政府に対し、生活保護基準の見直しを求める声明
2013年から2015年にかけて段階的になされた生活保護基準の減額改定(以下「本件改定」という。)を理由としてなされた生活保護利用者に対する保護変更決定処分(以下「本件処分」という。)に対し、その取消しを求めて全国で提訴した生活保護基準引下げ違憲訴訟において、横浜地方裁判所第1民事部(岡田伸太裁判長)は、2022年10月19日、神奈川県内の46人が原告となった訴訟において、本件処分を取り消す旨の判決を言い渡した。また、宮崎地方裁判所民事第1部(小島清二裁判長)も、2023年2月10日、宮崎市内の3人が原告となった訴訟において、本件処分を取り消す旨の判決を言い渡した。
既に、自由法曹団は、全国の地裁で言い渡されている判決に際して声明を発出しているところ、敗訴判決も相次ぐ中で、本件改定の違法を明確に指摘した裁判例が、大阪地裁判決(2021年2月22日)、熊本地裁判決(2022年5月25日)、東京地裁判決(2022年6月24日)、横浜地裁判決(2022年10月19日)と続き、直近の宮崎地裁判決で5件目となり、流れは大きく変わりつつある。
本件処分の取消しを認めた判決はいずれも、行政裁量を振りかざして政府の判断を追随する立場には立たず、本件改定の実質を詳細に検討したうえで、本件改定が専門技術的な知見に基づかず、またはこれに整合せず不合理であるという事実を適切に判断し、司法の役割を果たそうとの法曹の気概を感じるところである。
本年4月には、大阪高等裁判所における初の控訴審判決も控える中、わたしたちは、この流れをとめずに、政府に誤った政策の是正をさせる方向に大きな力を集中していかなければならない。
自由法曹団は、横浜地裁判決及び宮崎地裁判決の勝利を歓迎するとともに、政府に対し、生活保護利用者の生活実態を正面から受け止め、直ちに2013年引き下げ前の生活保護基準に戻すことを求める。あわせて、すべての国民の健康で文化的な生活を保障する観点から、生活保護基準の合理的な決定方法への見直しを含め、市民の立場にたった生活保護行政の見直しを進めるよう求めるものである。
2023年3月6日
自由法曹団 団長 岩田研二郎