2024年5月27日、岸田政権が進める大軍拡・「戦争をする国づくり」に断固として反対する決議
岸田政権が進める大軍拡・「戦争をする国づくり」に断固として反対する決議
1.岸田政権によって、日本の急速な軍事国家化が進められている。
2022年12月16日に閣議決定された安保三文書による「戦争をする国づくり」が、最も目に見える形で実践されている場が、南西諸島である。
石垣島、与那国島、宮古島、奄美大島といった風光明媚な土地に、「第一列島線」の防衛を想定したミサイル配備・軍事要塞化が、着々と進められている。さらに、米軍と自衛隊の共同訓練も頻繁に行われており、これまでアメリカ本土でのみ行われていた離島奪還訓練である「アイアン・フィスト」は、2023年から南西諸島を舞台とするようになった。
また、沖縄・辺野古では、普天間基地移設に向けた地盤改良工事をめぐり、岸田政権は代執行によって沖縄防衛局の設計変更申請を承認し、2024年1月10日、大浦湾側の工事着工を強行した。司法もそれに追随し、最高裁は、2024年2月29日、早々に県の上告受理申立てを不受理とする決定をした。
住民の声を無視して進められる軍事要塞化は、日本を「先の大戦」に後戻りさせるものである。
2.同時に、この間、岸田政権は、「防衛装備移転三原則」と運用指針の改定による殺傷兵器の輸出解禁、全国583カ所に及ぶ土地利用規制法による区域指定、全国の民間空港・港湾の「特定利用空港・港湾」への指定、今年度防衛予算の大幅増(前年比約1兆1300億円増で過去最大の7兆9496億円)など、様々な分野や地域で「戦争する国づくり」を推し進めている。
そして、2024年5月10日、自衛隊の陸海空の各部隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」の創設を内容とした改定防衛省設置法と、秘密の対象を拡大し、広範な民間人をセキュリティ・クリアランス(適性評価)の対象とする経済秘密保護法が成立した。
「統合作戦司令部」の創設は、自衛隊を米軍の指揮下に深く組み込み、自衛隊と米軍の一体化を進展させるものであり、容認することはできない。
経済秘密保護法の目的も、日米での共同開発や軍事産業のために「重要経済安保情報」の「活用」をはかるものであって軍事国家化を進めるものに他ならない。同法は、秘密保護を経済分野まで広く拡張し、国民の知る権利を制限するものであるとともに、適性評価のために実施される身辺調査によりプライバシー侵害、国民監視を強めるものである。わずか28条しかない条文に22もの附帯決議がついており、不十分な国会審議によって成立した欠陥法であることは明らかであり、即刻廃止されなければならない。
3.さらに、岸田政権は、国の地方自治体に対する包括的指示権を認める地方自治法改定案を今国会に提出した。同法は、災害対策を口実に、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の発生または発生するおそれがある場合という曖昧模糊とした発動要件によって、地方自治体の自治権を国が奪うものである。また、本来災害対策にも割り振られるべき多額の血税を、軍事費の大幅増に回していることを見れば、地方自治法改定の狙いは、災害対策にはなく、有事における国民統制にあると指摘せざるを得ない。まさに緊急事態条項改憲の先取りである。
4.自由法曹団がたびたび指摘していることであるが、こうした日本の軍事国家化は、国民のためではない。アメリカのためである。
2024年4月10日の日米首脳共同声明では、「日米の抑止力・対処力を強化するため、南西諸島を含む地域における同盟の戦力態勢の最適化が進展していること」及び「日本が自国の国家安全保障戦略に従い、2027年度に防衛力とそれを補完する取り組みにかかる予算を国内総生産(GDP)比2%へ増額する計画、反撃能力を保有する決定及び自衛隊の指揮・統制を強化するために自衛隊の統合作戦司令部を新設する計画を含む、防衛力の抜本的強化のために日本が講じている措置」が「歓迎」されている。
緊張感を増す国際情勢下において、自衛隊と米軍との一体化を進展させることは、アメリカとともに戦争に向かう危険な選択であるとともに、平和憲法を踏み躙る暴挙である。
5.さらに岸田政権は、明文改憲もなりふり構わず推し進めている。
具体的には、議員任期延長を中心とする緊急事態条項の創設に向け、起草機関の設置を目論むなど、憲法審査会における改憲議論を一気に押し進めようとしている。議員任期延長改憲は、立法事実の不存在に加え、その内容自体が危険なものである。すなわち、国民の選挙権(憲法15条)という極めて重要な権利の制約の下、権力の居座りを許すことにつながるものであり、看過することはできない。
6.自由法曹団は、岸田政権の進める大軍拡に断固として反対するともに、あらゆる面から進められる「戦争をする国づくり」の策動に対抗し、各地の団員の力を結集し、分野横断的に闘っていくことを決意する。
2024年5月27日
自 由 法 曹 団
2024年福島・岳温泉
5月研究討論集会