2024年10月15日、日本被団協のノーベル平和賞受賞を称え、核兵器も戦争もない世界の実現を求める声明

カテゴリ:声明,憲法・平和

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日本被団協のノーベル平和賞受賞を称え、核兵器も戦争もない世界の実現を求める声明

 

 ノルウェー・ノーベル賞委員会は、2024年10月11日、本年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表した。
 ノーベル賞委員会は、受賞理由として、「広島と長崎の原爆生存者によるこの草の根の運動は、核兵器のない世界を達成する努力、また目撃証言を通じて核兵器が二度と使われてはならないということを身をもって示してきた」と評価し、「日本被団協と他の被爆者の代表たちによる並外れた努力は、核のタブーの確立に大きく寄与してきた」と述べ、「肉体的な苦痛と痛切な記憶にかかわらず、大きな犠牲を伴う自らの体験を、平和のための希望と活動にささげることを選んだすべての生存者に栄誉を授けたい」としている。
 日本被団協は、1956年8月10日に結成されて以来、長年にわたって、被爆体験の伝承などを通じて核兵器の廃絶を草の根から日本と世界に訴え続けてきた団体であり、今回の受賞は、そうした地道な活動が評価されたものにほかならない。
 自由法曹団は、こうした日本被団協と被爆者の方々が国内外で積み重ねてきた核兵器廃絶のための草の根の活動に心から敬意を表し、今回の受賞について最大限の祝意を述べるものである。
 2017年、国連において、人類史上初めて核兵器を違法化した核兵器禁止条約が122カ国の賛成により採択され、批准国は70カ国に上り、署名済みの国は94カ国となっている。第2回締約国会議では「核リスクの増大と危険な核抑止の永続化を傍観」しないと述べ、「現在及び将来の世代のために、核兵のない世界を実現するために不断に努力する」とする政治宣言が全会一致で採択された。しかし、世界をみれば、核兵器使用の危機が高まっている現状がある。ロシアはウクライナ侵攻において核兵器を使用する可能性があることを繰り返し述べており、中東では約90発の核弾頭を保有するイスラエルの閣僚がガザでの核使用の可能性に言及し、核施設を有するイランとの対立を深めている。米中軍拡競争の拡大により軍事的緊張の高まる東アジアでは、朝鮮民主主義人民共和国が軍事大国・核保有国に向けた動きを加速すると宣言している。2023年1月、米科学誌の原子力科学者会報は「世界終末時計」の針を人類滅亡の時を示す真夜中にさらに近づけている。
 核兵器禁止条約が採決された2017年に核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)にノーベル平和賞を授与し、今回は日本被団協にノーベル平和賞を授与するとしたノーベル賞委員会の決定は、世界の現状を踏まえ、いかなる理由によっても二度と核兵器を使用してはならない、核戦争は絶対に起こしてはならない、核兵器は直ちに廃絶しなければならないという明確なメッセージを国際社会に発信したものである。
 本来であれば、唯一の戦争被爆国である日本政府こそが国際社会に先駆けて核兵器のない世界の実現に向けた努力をしなければならない。にもかかわらず、日本政府は、アメリカの核抑止に固執し、核兵器禁止条約への参加を拒否し、締約国会議へのオブザーバー参加すら否定している。石破新首相にいたっては、米シンクタンクへの寄稿文においてアメリカとの核共有や核持ち込みを公然と主張している。日本政府は、日本被団協へのノーベル平和賞の授与に込められた平和と核廃絶を希求するメッセージに真摯に向き合い、直ちに核廃絶の道へ舵を切るべきである。
 日本被団協は、「憲法が生きる日本、核兵器も戦争もない21世紀をー。私たちは、生あるうちにその『平和のとびら』を開きたいと、願っています。日本政府が戦争責任を認めて原爆被害への国家補償を行い、非核の国・不戦の国として輝くこと。アメリカが原爆投下を謝罪し、核兵器廃絶への道に進むことー。そのとびらを開くまで、私たち被爆者は、生き、語り、訴え、たたかいつづけます。」(2001年6月5日、21世紀被爆者宣言)と宣言している。
 自由法曹団は、日本被団協の宣言と活動に心からの連帯を表明し、日本の核兵器禁止条約への参加を呼びかけるとともに、核兵器も戦争もない世界の実現のために全力を尽くすことを表明する。

2024年10月15日

 自 由 法 曹 団
団 長 岩田研二郎

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