2024年10月21日、「石破政権が進める大軍拡・「戦争をする国づくり」に断固反対し、 憲法改悪阻止に全力で取り組む決議」
石破政権が進める大軍拡・「戦争をする国づくり」に断固反対し、
憲法改悪阻止に全力で取り組む決議
1 岸田政権は、2022年12月16日に閣議決定された「安保三文書」による「戦争をする国づくり」を進めてきた。この岸田政権を引き継いだ石破政権によって、今後、より一層の大軍拡・「戦争をする国づくり」及び改憲策動が進められようとしている。
2 こうした日本の動きは、国民のためではなく、アメリカとの戦略的協力の下で進められているものである。
本年4月10日、日米首脳共同声明において、アメリカは、日本が軍事費をGDP比2%へ増額する計画、敵基地攻撃能力を保有する決定及び自衛隊の統合作戦司令部を新設する計画を含む措置を「歓迎」するとともに、日米同盟を更に前進させるための「新たな戦略的イニシアティブ」として、同盟の指揮・統制の向上、戦力態勢の強化と高度な基地能力の構築、防衛産業及び先端技術協力の深化、領域横断作戦の強化等を発表した。
本年7月28日、日米安全保障協議委員会(日米2+2)においても、上記の新たな戦略的イニシアティブを実現する意図が再確認され、①日米の抑止力・対処力の強化(「同盟調整、指揮・統制の向上」、「同盟のスタンド・オフ防衛能力の向上」、「日本の南西諸島における同盟活動の強化」、「二国間演習、即応性及び運用の強化」、「拡大抑止の強化」、「ISR(情報収集・警戒監視・偵察活動)協力の深化」、「領域横断作戦、情報戦、人工知能(AI)に関する協力の拡大」、「同盟国やパートナーとの共通の目標の実現」)、②防衛装備・技術協力(経済安全保障の取組み、日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議〔DICAS〕等)、③同盟の戦力態勢の強化(海兵沿岸連隊〔MLR〕の発足、辺野古新基地建設、馬毛島における基地建設等)などが合意された。
3 このような動きの中、本年5月の自衛隊法の改悪では、陸海空の自衛隊を一元的に指揮する統合作戦司令部を設置するとされた。これに対応して、在日米軍は、新たに統合軍司令部を設け、陸海空軍及び海兵隊を統合指揮できるようにすることが計画されている。このような米軍との「作戦及び能力のシームレスな統合」によって、自衛隊が対中国軍事戦略を推進する米軍の事実上の指揮下に組み込まれ、米軍に従属することになる。
「第一列島線」である南西諸島を中心にミサイル配備も進められている。中国の攻撃射程内に位置する南西諸島を敵基地攻撃の拠点とするとともに、実際に戦場となることを想定した軍事要塞化が推し進められている。本年8月20日、日本政府は、辺野古新基地建設のため、大浦湾側区域の本体工事への着手も強行した。
さらに、アメリカの対中包囲網の一環として、日米での日常的な共同演習はもとより、欧州やインド太平洋各国との多国間での共同訓練が頻繁に行われており、自衛隊が同志国とも連携を強め、同盟国・同志国を総結集し軍事ブロックの拡大・強化が進められている。
4 本年5月に成立した経済情報保護・活用法(重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律)も、秘密保護法、安保三文書及び「経済安保法」と一体となって、日米同盟を中心とした共通の安全保障戦略を具体化し、民生・軍事双方に技術を用いる「デュアルユース」の研究開発促進、軍事産業の育成を図るために情報の保全・利用を行うものである。
また、日本政府は、ミサイルの開発・生産など国際的な共同開発を促進し、AUKUSとの先端技術協力を行うとしており、経済・学術研究への軍事支配も強めようとしている。さらに、「能動的サイバー防衛」の名のもとに、通信活動にも介入し、自衛隊や警察を中心にして情報の支配、攻撃的対応のできる法制度づくりも準備されている。
5 このような動きはいずれも、アメリカの国家戦略の下、日本を対中軍事包囲網の最前線と位置付ける「戦争をする国づくり」の一環であり、憲法9条に反することは明らかである。かかる軍事的な対米従属が進められる中、「台湾有事」が仮に現実に起こることがあれば、戦争法によって集団的自衛権を行使することになった日本は、「台湾有事」を契機にした米中戦争に参加せざるを得ない状況にある。各地の基地問題はさらに緊張感を増しており、命と生活を脅かされている基地周辺の市民とのさらなる連帯が求められる。抑止力一辺倒の考えから脱却し、憲法9条に基づいた対話を実践することこそが、国家間の緊張を緩和させ、戦争回避につながる。
6 もっとも、本年9月27日の自民党総裁選を経て、新たに首相に就任した石破茂氏は、総裁選の最中、論文上で、日米同盟の米英並みへの引き上げ、無制限の集団的自衛権行使を認める「国家安全保障基本法」の制定、「アジア版NATO」の創設、更には核兵器の共有を主張しており、今後、従前の岸田政権の対米従属、軍拡路線及び「戦争をする国づくり」を継承するのみならず、より一層の大軍拡・「戦争をする国づくり」に突き進む危険がある。
また、自民党憲法改正実現本部の会合で改憲に向けた「論点整理」が決まったことを踏まえ、自衛隊明記論で足並みをそろえ、国民の選挙権(憲法15条)の制約を伴う議員任期延長に加えて緊急政令の制度(緊急事態条項)の創設に向け、起草機関の設置を目論む等、憲法審査会における改憲議論を押し進めようともしている。
7 自由法曹団は、こうした石破政権による軍事的な対米従属化、軍事ブロック化の動き、そして、明文改憲に断固反対し、それらを阻止するためのたたかいに尽力するものである。
2024年10月21日
自 由 法 曹 団
2024年岐阜・下呂温泉総会