2025年4月3日、「教員の長時間勤務を解消するために、給特法等改正法案に反対し、 教員定数の増員と時間勤務手当の支給を求める(声明)」を発表しました
教員の長時間勤務を解消するために、給特法等改正法案に反対し、
教員定数の増員と時間勤務手当の支給を求める
政府は、今国会(第217国会)において、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(以下「給特法」という)をはじめ、学校教育法、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(以下「地教行法」という)等の一部を改正する法案を提出した(以下「給特法等改正法案」という)。
給特法等改正法案は、以下述べる通り、時間外勤務に対する手当を原則支払わないとする現行制度が維持され、教員の長時間労働の解消につながらない等の重大な問題がある。
1 持続不可能な教員の長時間勤務の実態
現在、教員の長時間勤務の実態は深刻である。2016年の文科省の勤務実態調査では、教員の時間外勤務の平均は小学校で月約59時間、中学校で月約81時間にのぼる。実に中学校教員の約6割が、健康障害の恐れのあるいわゆる過労死ラインを超える勤務をしている実態が明らかとなった。
この間、文科省は学校現場におけるいわゆる「働き方改革」を行ってきた。しかしながら、2022年に行われた全日本教職員組合の「教職員勤務実態調査」によると、校内の時間外勤務と持ち帰り業務の時間を合わせた時間外勤務の平均は月96時間10分であり、8割以上の教員が校内で月45時間を超える時間外勤務を行っている。学校現場は、依然として過酷な勤務実態にある。
精神疾患によって休職せざるを得ない教員も、この10年、毎年5000名程度出ていたが、2022年度は6500名、2023年度は7000名を超え、「働き方改革」にもかかわらず、連続して過去最多を更新している。
現状の「働き方改革」のみでは、長時間勤務解消の対策として不十分であることは明らかである。
2 教員の増員が必要不可欠である
教員の長時間勤務は、教員1人あたりの業務が過大になっている状況、言い換えれば、業務に対して教員が足りないという状況である。これを改善するためには、業務を減らすか、教員を増やすしか方策がないことは明らかである。
しかしながら、教員が担っている業務は多岐にわたり、子どもの課題が複雑化する中で、子どもの学ぶ権利を保障する観点からは業務削減には限界がある。この点は、この間の「働き方改革」によっても長時間勤務が解消できていないことにも現れている。
給特法等改正法案では、教育委員会や校長に業務量管理などの計画策定や方針策定を義務付けているが、これも現行の「働き方改革」の継続以上のものではなく、長時間勤務に対する対策として不十分という他ない。
教員の長時間勤務を解消し、子どもの学習権を保障するために、抜本的な教員の定数改善が不可欠である。
3 時間外勤務手当の不支給制度を温存するのは不当である
公立学校では、給特法が時間外勤務手当等を支給しないと定めたことから、教員の時間外勤務は「自主的・自発的」な勤務であり、時間外勤務ではないとされてきた。そのため、教員は何時間働こうとも時間外手当等が発生せず、いわゆる「定額働かせ放題」の状態となり、長時間勤務が蔓延する原因となってきた。もはや、時間外勤務手当を支給しない扱いは著しく不合理である。
給特法等改正法案は、時間外手当を支給しない現行制度がそのまま維持される内容となっていて、教員の長時間勤務に歯止めをかけることができない。同法案は、教職調整額を段階的に10%まで引き上げるとしているが、教員調整額の増額は、教員の就業条件の改善とはなっても、勤務時間を削減する効果はなく長時間勤務解消の対策としては不十分である。
給特法を改正し、教員の勤務時間に応じた時間外勤務手当を支給する制度とすべきである。
4 「新たな職」や「新たな級」の創設は学校現場の分断を招く
給特法等改正法案は、「新たな職(主務教諭)」を創設している。また文科省は、今後これに対応した「新たな級」(職務給)を導入しようとしている。
「新たな職」の創設で人事評価や管理をさらに強化し、その結果を職種の昇進や昇給に反映させることで、学校現場の階層化がさらに進む。これにより教員の対等な立場での共同を困難にするおそれがあり、導入すべきでない。
5 まとめ
以上、給特法等改正法案は、時間外勤務手当が支給されない現行制度を維持し、学校現場の階層化を進める主務教諭や「新たな級」の導入するものであって、教員の長時間勤務解消につながらないばかりか、学校現場の共同を困難にさかねない重大な問題がある。
自由法曹団は、教員の長時間勤務を解消するために、今国会で審議中の給特法等改正法案に反対し、教員定数の抜本的増員と教員への時間外勤務手当の支給を求める。
以上
2025年4月3日
自 由 法 曹 団
団長 岩田 研二郎