2025年4月15日、「サイバー先制攻撃法案(能動的サイバー防御法案)の衆議院本会議での可決に抗議し、参議院での廃案を求める声明」を発表しました

カテゴリ:声明,戦争法制

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サイバー先制攻撃法案(能動的サイバー防御法案)の衆議院本会議での可決に抗議し、
参議院での廃案を求める声明

 

1 本年2月7日に国会提出されたサイバー先制攻撃法案(能動的サイバー防御法案)は、本年4月8日に、衆議院本会議で可決された。
同法案は、以下のとおり、政府による国民の通信情報の監視を認め、サイバー先制攻撃を認めるものであり、戦争国家につながる危険な法案である。

2 法案は、①海外から国内設備を通って海外に送られる通信、②海外から国内への通信、③国内から海外への通信、の各通信情報を政府が把握・分析しようとするものである。①の場合には送受信者の同意なしに、また事業者が政府との協定により政府に提供する場合には取引先や利用者の同意なしに、政府が通信情報を取得できることになる。
 政府はIPアドレスやメールアドレスなどの機械的情報により選別して、不正行為に関係のない通信情報は削除するとしているが、政府が一度取得した情報について、流出・流用の危険は否定できない。
 法案は、憲法21条で保障された通信の秘密やプライバシーを侵害して、国民を監視下に置くものといわざるを得ない。

3 また、法案では、サイバー攻撃のおそれがある場合などに、警察や自衛隊が「無害化措置」を講じることを認めている。無害化措置により、国外にあるサーバーのプログラムを削除・停止させることになり、相手国の主権を侵害することとなる。のみならず、それ自体がサイバー攻撃に当たり、サイバー上の先制攻撃を認めものである。サイバー上であっても、先制攻撃により相手国のインフラ機能などに障害が生じるおそれがあり、憲法9条が禁止する「武力行使」に当たる可能性もある。さらには、サイバー上の攻撃と反撃が過熱して相手国との戦争に至る危険を伴うものである。
 「サイバー先制攻撃」を認めるこの法案は、憲法9条に違反しているおそれがあり、許されない。

4 衆議院での審議においては、法案について、通信の秘密を不当に制限しないと明記するととともに、政府が取得した通信情報の件数などを独立機関が国会に報告することを義務づける等の修正がなされた。
 しかしながら、通信の秘密を不当に制限しないことは自明の理であるところ、これを明記したところで、本法案の根本的な問題点は解消されない。また、独立機関が国会に報告するからといって、そもそもの問題が排除されるわけでもない。

5 私たち自由法曹団は、3月12日に「能動的サイバー防御法案に対する意見書~国民監視と先制攻撃の危険な問題点を解明する」を発表したが、衆議院での法案審議では、同意見書で指摘した法案の重大な問題点がいっそう明確になった。
 私たちは、サイバー先制攻撃法案(能動的サイバー防御法案)が衆議院本会議で可決されたことに対して厳重に抗議するとともに、参議院での審議においては、法案の問題点をさらに明らかにし、これを廃案にすることを強く求める。

 

2025年4月15日

自  由  法  曹  団
団長 岩 田  研 二 郎

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