6月26日付、改憲問題対策法律家6団体連絡会と戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会は、「市民の力で廃案に追い込んだ検察庁法改正案の再提出にあたっては特例部分の完全削除を求めるとともに検察官定年延長の閣議決定撤回を求める共同アピール」を発表しました
市民の力で廃案に追い込んだ検察庁法改正案の再提出にあたっては特例部分の完全削除を求めるとともに検察官定年延長の閣議決定撤回を求める共同アピール
2020年6月26日
改憲問題対策法律家6団体連絡会
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
1 市民の批判が検察庁法改正案を廃案へと追い込んだ
検察庁法の一部改正を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案は、廃案となりました。安倍政権が重要政策の一つとして取り上げてきた検察庁法改正案を廃案へ追い込んだのは、市民による圧倒的な反対の声を受けての措置であることは明らかであって画期的な成果です。
2 検察庁法改正で権力の暴走を食い止められなくなる
検察庁法改正案の最大の問題点は、内閣ないし法務大臣が「必要」と判断した検察官に対しては、定年延長ないし役職定年延長を認める特例を設けた点にあります。このような例外規定が置かれることによって、ときの政治権力が、捜査や裁判に深くかかわる検察官、とりわけ幹部の人事に口出しをし、政権関係者の違法行為の摘発に手心を加えさせ、最終的に刑事責任を追及する道を封じ込めることができるようになるのです。
日本は戦後、政治権力から独立した存在とするために検察庁法を制定しました。権力の暴走を食い止めるために作られた検察官制度を、まさに権力が自分にとって都合の良いものに作り変えてしまおうとしたのが、今回の検察庁法改正問題なのです。
3 定年延長の閣議決定こそが問題の発端
安倍政権以前の歴代の内閣は、一般の国家公務員とは異なる検察官制度の趣旨を理解し、その独自性を尊重してきました。それゆえ、一般の国家公務員には認められる定年延長制度は検察官には適用されないという解釈を一貫して取り続け、検事総長をはじめとする人事については現場の判断に従ってきたのでした。
しかし、2020年1月31日、突如として、安倍政権は、これまでの解釈を変更し、黒川弘務東京高検検事長(当時)の定年を同年8月7日まで延長しました。この閣議決定は、検察庁法22条、同法32条の2に違反し、国家公務員法81条の3は検察官には適用されないとする一貫した立法者意思や政府解釈にも反するもので明確に違法です。
このような閣議決定を行ったのは、政権に近いとされる黒川氏を次の検事総長に据えて政権関係者の刑事責任追及を手控えさせようとしたものとされています。そして、検察庁法改正案は、この閣議決定を後付けで正当化しようという意図のもとに提出されたことは明らかです。
4 内閣の一存で解釈を変更し、国会での説明責任を果たさない安倍政権
安倍政権は、戦後守られてきた検察官の独立を蹂躙し、法の支配、権力分立を根底から覆すような政府解釈の変更や法案を提出しながら、国会での審議を軽視し、まともな答弁を行わないまま採決を強行しようとしました。このように、安倍政権は、平然と憲法を蹂躙し、民主主義の前提をなす国会での審議を軽視し、国民への説明責任を果たさないという重大な誤りを犯し続けています。
5 権力のおごりを見破り、SNS上で声をあげた市民
権力の暴走を食い止めるべき検察官を政権の意に従わせようとする安倍政権のたくらみに対し、本年3月24日、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会と改憲問題対策法律家6団体連絡が共同記者会見を行って反対の声明を発表しました。その後、日本弁護士連合会をはじめ全国52のすべての弁護士会が反対声明を出し、3000名を超える弁護士が抗議のアピールを出し、元検事総長経験者や特捜部経験のある検察OBも意見書を発表して安倍政権を批判しました。
さらに、各界の著名人がSNS上で批判の声を上げると、それに呼応して「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートが数百万に達しました。コロナ禍で苦しむ多くの市民が、安倍政権の国政私物化に対し、SNSを通じて厳しい抗議の声をあげ、それが世論のうねりとなって政治を動かしました。安倍9条改憲NO!全国市民アクションが呼びかけた「東京高検・黒川弘務氏の違法な定年延長に抗議し、辞職を求めます」とのネット署名にも35万人を超える市民の賛同が寄せられました。まさに市民の力が検察庁法改正案を廃案に追い込んだのです。
コロナ禍のもと、安倍政権の暴走に悩まされながらも、わたしたち市民は、大きな教訓を得ました。それは、SNSなどを駆使することで、市民はつながり、励ましあい、悪法の成立すら阻止することができるということです。
6 引き続き安倍政権の暴走を許さない
このように市民の圧倒的な批判と黒川氏の賭けマージャン報道により、安倍政権のたくらみは一旦は頓挫しました。
しかし、違法な閣議決定は未だに撤回されていません。政府解釈を変更し、検察官の定年延長を認めた閣議決定をそのままにしておけば、今後、第二、第三の黒川氏が生み出されないとも限りません。また、検察庁法改正問題にしても、政府は若干の手直しのみで特例部分を残したまま次期国会へ再提出する意向であるとも報じられています。
安倍政権はこれまでも、2013年に内閣法制局次長を昇格させるのが慣例であった内閣法制局長官に外務省出身の小松一郎氏を任命して、集団的自衛権について政府解釈を180度変更させて、安保法制(戦争法)の制定に繋げるなど、自己の都合に合わせた慣例・法令に違反する人事を繰り返しています。また、森友・加計問題、「桜を見る会」、持続化給付金のトンネル法人問題等々、政治と税金を私物化し続けています。
わたしたちは、憲法秩序を破壊し、法の支配を蹂躙し、権力を私物化する安倍政権に強く抗議し、引き続きその責任を追及するとともに、検察官の定年延長を認めた閣議決定の撤回と、国家公務員法の一部を改正する法律法案の再提出にあたっては、検察庁法改正案の特例部分を完全に削除することを強く求めます。
以上