2021年5月集会in東京決議『入管法改悪を許さず、出入国管理制度の抜本的改善を求める決議』

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入管法改悪を許さず、出入国管理制度の抜本的改善を求める決議

 

1 本年5月18日、菅政権は、「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案」(以下、「本法案」という。)を今国会で成立させることを断念した。個人の尊厳と人権をないがしろにする本法案に反対する世論とたたかいの大きな成果である。

2 本法案は、難民認定申請中の者の送還を可能とする送還停止効の例外、退去を拒否する者に対する刑事罰、支援者や弁護士等を監視・密告役に仕立てる監理措置制度の創設等を内容とするものである。これは、自由法曹団が本年4月1日付けの「政府による入管法の改悪に断固反対し廃案を求める声明」で指摘したとおり、本法案の「目的」とされる入管での長期収容問題が解消される法的な保証が全くないばかりか、現行の出入国管理制度において入管が広範な裁量を極めて恣意的に運用してきた問題を無視して、外国籍者の権利保障に資する改正は全く盛り込まない一方で刑事罰を背景とした強権的な管理と非人道的な排除を強め、その支援も妨げて、さらに犯罪者扱いをより強めて偏見・差別の助長をするものである。

3 日本の出入国管理制度においては、入管によるその広範な裁量の極めて恣意的な運用により、著しく低い難民認定率、無期限収容、劣悪な処遇、数々の死亡事件等の問題が起きてきている。2010年以降だけでも10名以上の被収容者 (いずれも20代~50代)の死亡事件が発生しており、2019年6月には大村入国管理センターでナイジェリア国籍者が餓死をする事件まで起きていた。2020年8月28日には、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会が、東日本入国管理センターで長期収容されていた難民申請者2名の収容が恣意的拘禁に該当し自由権規約9条等に違反するという意見も採択している。
 しかるにこれらを一顧だにせず、菅政権は、上記内容の本法案を本年2月19日に提出したのである。

4 本法案提出後、本年3月6日には、名古屋出入国在留管理局収容場で収容されていたスリランカ国籍者(当時33歳)が適切な医療を受けられず死亡するという事件が起きた。ところが菅政権は、第三者機関ではなく入管に調査を委ねたばかりか、上記被害者の収容施設内での状況を撮影したビデオの国会における開示すら頑なに拒否する等、真相解明の妨害に終始した。
 一方、本年3月31日には、日本も理事国を務める国連人権理事会の特別報告者と恣意的拘禁作業部会がその共同書簡において、菅政権に対し本法案が国際人権法に違反する旨の懸念を表明して再検討を強く求め、さらに4月9日には国連難民高等弁務官事務所も「非常に重大な懸念」を表明するという、国連による異例の指摘があった。
 当事者など市民も本法案に反対する声を上げ、国会前での座り込み、ウェブ上や各地でのデモ等、その声は日増しに拡大した。入管が外国籍者を尊厳ある個人として扱わず人間らしい生活や命を奪ってきたことについての怒りの抗議がかけめぐった。入管による重大な人権侵害の解明もされないままその権限をさらに拡大させる本法案が強行採決されることを断じて許すことができない人々の声が、連日のように、本法案を審議する国会や菅政権に届けられた。

5 これら市民の声を受けた菅政権は、本年5月18日、本法案を今国会で成立させることを断念した。しかし菅政権は、今後の国会での入管法の改悪を諦めていない。
 そもそも、無期限収容問題などの入管における人権侵害を解決するには、収容の要件厳格化、期間上限の創設や司法審査等を導入し、また在留特別許可制度における考慮要素において子どもの最善の利益を明示する等の、入管の裁量・権限を適切に抑制・監督し人権を保障する体制を構築する、出入国管理制度の運用見直しと立法措置が必要である。
 自由法曹団は、入管法の改悪を今後も許さず、国籍の違いによらず尊厳ある個人としての取扱いが実現される出入国管理制度の運用見直しと必要な立法措置を強く求めて、闘い続ける。

 

2021年5月22日

自  由  法  曹  団
2021年5月研究討論集会

 

 

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