(2017年掲載分) 09/19 北朝鮮のミサイル発射・核実験に抗議し、米朝間の対話の開始と話し合いによる朝鮮半島の非核化を求める決議
カテゴリ:国際平和
北朝鮮のミサイル発射・核実験に抗議し、米朝間の対話の開始と話し合いによる 朝鮮半島の非核化を求める決議
1 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は、2017年8月29日、太平洋上に向け た中距離弾道ミサイルを発射し、9月3日には、通算6回目となる核実験を行った。 この北朝鮮の核実験に対して国連安全保障理事会は、同月11日、北朝鮮の「纎維お よび衣類製品の輸出禁止」、北朝鮮に対する「原油・精製油の輸出上限制」、「北朝鮮 労働者派遣についての受入国の安保理要承認」等の制裁条項を含む決議第2375号 を満場一致で採択した。
安保理決議を受けた米国トランプ大統領は、同月12日、「小さなステップだ。大 きな取引ではない。効果があるかどうか分からない」と述べて、北朝鮮に対する石油 全面禁輸が実現されなかったことに対し不満を示した。また、サンダース米大統領報 道官は12日の記者会見で「すべての選択肢が机上にある」として、軍事オプション も含めたさらなる制裁を示唆した。
一方、北朝鮮は安保理決議について、「極悪非道な挑発行為の産物であり、全面的 に排撃する」(外務省)、「米国が過去に体験したことのない最大の苦痛を与える」(国 連大使)等と反発、15日には再び、太平洋上に向けたミサイル発射実験を強行して いる。
今、朝鮮半島は、まさに軍事衝突、戦争の危険の淵にある。
2 朝鮮半島の軍事衝突の危機を招いているのは、北朝鮮の金正恩政権と、米国、そ して、米国に追随する安倍政権である。
2017年7月8日、国連で核兵器禁止条約が採択された。しかし、北朝鮮は、世 界全体で進む非核化の流れに逆行し、核のない平和を願う人々の声に背を向けて核開 発を継続している。北朝鮮による核開発と核の保有は、周辺国である韓国や日本にお いて核保有や核配備の動きを誘発しかねず、東アジア全体の緊張を高めるものである。
また、米国の硬直的な対応は北朝鮮の態度を硬化させ、軍事衝突の危機を高めるも のである。朝鮮半島有事を想定し2015年6月に合意された米韓両軍の新たな作戦 計画「作戦計画5015」には、金正恩委員長の殺害や体制崩壊を目標とした先制攻 撃も含まれ、同計画に基づく米国と韓国との共同軍事訓練は今年も継続、強化され、 米国は「全ての選択肢がテーブルの上」と北朝鮮を威嚇し、緊張を高めている。
安倍政権は、この米国の北朝鮮対決姿勢を無批判に受け入れ、米国に追随するばか りか、米朝両国の対決を煽り危機を増幅させ、防衛予算の増額をはじめとする軍拡と 改憲策動に利用している。
3 危険なチキンゲームの先にあるもの
このような朝鮮半島をめぐる情勢のなか、米国・北朝鮮の一方あるいは双方からの 計画的先制攻撃の可能性は絶無ではない。また、偶発的事件や、指導者の思惑の食い 違いによる軍事衝突の可能性も否定しえない状況にある。ひとたび軍事衝突が起きれ ば、北朝鮮と米韓の全面的な戦争が開始されるおそれが高く、北朝鮮、韓国の民衆に回復しがたい犠牲が発生することは明らかである。また、多くの在日米軍基地を保有 し、日米安保条約の下での軍事的一体化が進んでいる日本も無傷では済まされない。 今、北朝鮮と米国が保有する核兵器により、人類が経験したことのない核戦争へと連 なる深刻な危機が顕在化している。
4 われわれの求めるもの
北朝鮮に対して、9月3日の核実験と8月29日、9月15日のミサイル発射に対 し、唯一の被爆国の民衆として強く抗議する。そして、核戦争へと連なる深刻な危機 を避けるために、未曽有の災害を生み出す核開発をいったん凍結し、米国との協議を 再開することを強く求める。
米国は、北朝鮮への軍事力での威嚇、挑発的行動をやめ、米韓共同軍事訓練を中止 し、速やかに北朝鮮との協議を無条件に開始することを求める。
日本政府の北朝鮮のミサイル発射や核実験を口実にした便乗軍拡、Jアラートを鳴 らしての有事訓練実施などは、火事場の泥棒ともいうべき行為であり、決して許され るものではない。断固として抗議する。
自衛隊が米軍と一体となって軍事訓練を行うことは、北朝鮮に対する威嚇・挑発的 行為に加担することであり、この国を戦争の危険にさらす行為である。軍事衝突を避 け、戦争を回避するために、共同軍事訓練を行うことを即刻中止するよう求める。
安倍政権は北朝鮮の脅威を必要以上に喧伝して国民の不安を煽っているが、これに 乗じた改憲策動は決して許されるものではない。断固として抗議するとともに、安倍 政権による憲法改悪を阻止する決意を表明する。
2017年9月16日
自由法曹団・常任幹事会
●北朝鮮のミサイル発射・核実験に抗議し、米朝間の対話の開始と話し合いによる朝鮮半島の非核化を求める決議(PDF123KB)