<<目次へ 【意見書】
97/2/25
意見書の要旨
はじめに───── 本意見書の目的と構成
第1、私たちの見解と問題の所在
1、「法案」の基本的特徴と私たちの基本的見解
2、基本的一致点をどこに求めるか
第2、女子保護規定廃止は致命的な誤り
1、職場の実態を無視することの誤り
2、「法案」は労働法制の不備に目をつぶっている
3、女子保護規定の撤廃とその余の労働法制改悪による「複合被害」の無視は許されない
4、女子保護規定廃止はすべての労働者を不幸にする────────女性も、男性も無権利・低賃金の労働者へ
5、結論
第3、実効性ある均等法改正──────その理由と内容
1、「法案」の改良は不十分
2、平等を求める運動のたかまりと司法と国際世論の到達点
3、実効性ある均等法にするために必要な法案の修正
第4、「規制緩和」と労働法制の全面的改悪は労働者・国民の利益に反する─
────大企業の民主的規制・人間らしくはたらくためのルールの確立を
1、財界の「21世紀戦略」と「規制緩和」の要求
2、女子保護規定の廃止は労働法制の全面的改悪の突破口
3、労働法制の「規制緩和」に光り輝く未来はない
第1、私たちの見解と問題の所在
「法案」は「均等法の一部改正」と「労基法の一部改正(女子保護規定の撤廃)」を一本化して提出されている。しかし、均等法と労基法は別個の法律であり、あまりに当然な均等法の改正をするのに、女子保護規定を撤廃しなけれはならないという、何らの法的必然性は存在しない。女子保護規定撤廃とセットにするならば、実際には差別はさらに拡大し、均等法の実質的大改悪になるのであるから、両者を切り離し、すみやかに均等法改正を単独に実現すべきである。
第2、女子保護規定廃止は致命的な誤り
女子保護規定の廃止は、女性の健康とその労働、家庭両面の生活に対し回復しがたい重大な被害を生ぜしめ、無権利なパート・派遣等の不安定雇用労働者に追いやり、新たな女性差別を拡大するものであ。さらに男性の労働・生活条件をも切り下げ、子供の権利を侵害し、家庭破壊をもたらすものであるから、「法案」から削除すべきである。
第3、実効性ある均等法改正────その理由と内容
「法案」の均等法の改正部分については一定の前進があるが、実効のある差別是正のためにはあまりに不十分である。よって、以下のとおり修正をすべきである。
1、「目的」及び「基本理念」から「職業生活と家庭生活の調和を図る」 という文言を削除すべきではない。
2、募集・採用について「機会を均等に与えなけれはならない」ではな く、「女性であることを理由に男性と差別的取扱をしてはならない」 とすべきである。
3、あらゆる女性差別をなくすために脱法的差別の禁止規定として「労 働者の処遇について著しい男女格差がある場合に、その格差について 特段の合理的理由がないときは女性であることを理由とした差別であ るとみなす」との規定を設けるべきである。
4、強制力を持つ実効ある救済機関とするために、次のとおり改正すべきである。
(1) 男女平等委員会(仮称)を設置する。
1 委員会は公益委員、労使代表の3者構成の独立委員会とする。
2 委員会は調停、斡旋、仲裁を行う。調停、斡旋は一方当事者又は女性少年室長の申立によって開始され、仲裁は双方当事者の合意がある場合に開始する。
3 委員会は、一方当事者又は女性少年室長の申立により、差別的取扱の是正命令を発することができる。 (2) 女性少年室長及び委員会は、職務を行うに当たり、事業主に対し、出頭命令、事業所への立ち入り調査権、資料提出命令等の権限の権限を有する。
5、差別是正を実効あらしめるために、以下のような制裁規定を規定すべきである。
(1) 事業主が、女性少年室長及び男女平等委員会の立入調査を妨害し、資料提出命令に従わなかった場合には、罰金を科する。
(2) 事業主が、女性少年室長の勧告に従わない場合には、労働大臣が企業名を公表する。
(3) 男女平等委員会の確定した是正命令に従わない場合には、過料に、是正命令が確定判決で支持された場合は罰金を科する。
ただし、募集・採用に関する是正命令違反については、企業名の公表に止める。
(4) 男女平等委員会の是正命令に対して事業主が行政訴訟を提起した場合には、裁判所は、「緊急命令」を発することができる。
第4、「規制緩和」」と労働法制の全面的改悪は労働者・国民の利益に反する
均等法改正と女子保護規定撤廃の労基法「改正」をセットとした法案は、「規制緩和」を口実とした労働法制の全面改悪とつながっている。しかし、派遣労働・有料職業紹介の自由化、裁量労働の拡大、短期有期雇用等の雇用・労働分野の「規制緩和」は、ますますの長時間・深夜労働の拡大、不安定雇用労働者の増大など労働者・国民の生活と権利を破壊、国の安定した経済の発展にとっても障害となるものであるから強行すべきでなく、男女共の労働時間規制をはじめとして国民が人間らしく生きるために何が必要かを真摯に再検討されなければならない。
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