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沖縄の米軍基地の固定化をはかる米軍用地特別措置法の改悪を阻止しよう

1997年3月4日
自  由  法  曹  団

一 戦後五〇余年にわたり、米軍基地のために多大な被害を受け続けてきた沖縄の基地縮小・撤去を求める運動が大きく広がっている。
 銃剣とブルドーザーにより強奪された米軍基地用地について、契約を拒否し返還を求め続けている反戦地主のたたかいは、今や国民的注目を集めている。楚辺通信所の一部用地は、すでに昨年四月から不法占拠状態となっているが、他の一二施設三〇〇〇名の契約拒否地主についても、本年五月一四日には使用期限切れとなる。
 去る二月二一日には、これらの土地の強制使用をめぐって沖縄県収用委員会の公開審理が開始された。収用委員会は、審理の冒頭、「準司法機関として、公正・中立の立場から、実質審理を行う」と表明した。右実質審理が尽くされるならば、これらの土地の使用期限が切れ、大量の不法占拠状態が生ずることは必至である。
 ところが政府は、米軍用地特別措置法に「土地の使用期限が切れても、収用委員会が審理中の土地については、裁決が出るまで継続使用することができる」という条文を設けることによって、不法占拠を「合理化」しようと企んでいる。
二 使用期限が切れた場合には、米軍用地として使用する法律上の根拠はいっさい失われるのであって、直ちに地主に返還しなければならないことは当然の道理である。第三者機関たる収用委員会の使用裁決あるいは六ヶ月間の緊急使用の許可の手続を経てはじめて、国は土地の返還義務を免れる。憲法の定める財産権保障(第二九条)や適正手続保障(第三一条)の見地からは、右手続きにしたがって使用の権原を取得することが、国に課された最低限の義務である。
 今回の動きは、国自らが決めたルールでは不法占拠状態が不可避となった段階において、米軍用地の使用のために、そのルール自体を勝手に変えてしまうというものであり、政府自身による法治国家の否定宣言に他ならない。
三 米軍用地特別措置法は、米軍が何らの法的根拠もなく武力で強奪した沖縄の軍用地を使用しつづけるために用いられてきた法律であり、また現在の土地収用法が軍事に関する事業を強制使用の対象から除外していることに照らしてみても、憲法の平和原則、財産権の保障、適正手続保障に反する法律である。
 今回の策動は、一方の当事者にすぎない国が収用委員会に対し使用裁決の申請をしただけで、地主の意見をいっさい聞かなくとも、使用の権原が与えられるとするものであり、憲法に二重三重に反することは明白である。
四 日米両政府は、「これ以上の基地の押しつけは許さない」という沖縄県民の切実な要求にこたえてこなかったばかりか、SACO(沖縄問題に対する特別行動委員会)の最終報告によって米軍基地の移設などにより、これを再編強化しようとしている。米軍用地特別措置法の改悪は、米軍基地の縮小・撤去どころか、米軍基地の固定化、強化に他ならず、沖縄県民の願いよりも米軍基地を優先するという政府の不当な姿勢をさらに露骨に示すものである。
五 米軍基地の縮小・撤去を求める沖縄県民の切実な要求に背を向け、憲法を踏みにじる米軍用地特別措置法改悪の策動を許すことはできない。私たちは、米軍用地特別措置法改悪案の国会提出を許さないために、沖縄県民及び広く国民と連帯して断固たたかうものである。