<<目次へ 【決 議】自由法曹団


静岡空港建設の即時中止を求める決議

 一九九八年、静岡県は滑走路予定地すら完全に取得しないまま、静岡空港建設工事に強引に着手した。空港建設予定地とその周辺は、農業を生業とする人々が多く住み、茶園・果樹園・山林等によって豊かな生態が広がる里山である。静岡県は「環境に配慮した静岡空港」を標榜しているが、県の環境アセスメントはオオタカの営巣すら「見落とす」ような杜撰なものであり、環境保護の熱意は全く感じられない。既になされた工事用道路建設、或いは本体造成工事と称するものを見ても、山を削り谷を埋め、里山の環境破壊の現状は無惨と云うほかない。
 一方、空港建設費による県財政の悪化は甚だしいものになっている。一九九九年度の静岡県の公債費は一五五一億円で、県税収に対する比率は三四・九%にも達しており、県自身の試算によっても二〇〇三年度には二二九一億円、なんと五〇%の数値が予測されている。
 さらに、用地買収にもめどが立っていないし、地権者の意思を無視しての用地買収にも多大の問題がある。静岡県が一方的に提供している情報によっても空港建設に不可欠の滑走路を中心とする本体部分予定地のうち未買収面積は六・二%ある。そして、これら未買収用地は全計画用地にわたって虫食い状態で存在する上、この本体部分六%余の土地の地権者は今後いかなることがあっても永遠に土地を手放す意思はない。
 もともと、静岡空港は仮に完成したとしてもその利便性がなく、需要も見込まれず県民には何らの利益をもたらさないものでしかない。
 現在、運輸大臣に対する空港設置許可取消訴訟が静岡地裁に提起されているが、多くの地権者、静岡県民が、里山の環境、生態を破壊し、県民の福祉に背を向けて大手ゼネコンに奉仕し、県民に膨大で無益な負担を強いることが明らかな静岡空港の建設に反対するのは当然である。私たちは地権者と、これらの地権者と共に法廷の内外で反対運動に参加して闘っている多くの静岡県民を断固支持するとともに、静岡空港建設の即時中止を求めるものである。
 右決議する。

二〇〇〇年五月二二日
自由法曹団二〇〇〇年研究討論集会