<<目次へ 【決 議】自由法曹団


海上基地建設に反対し沖縄の自然を守る決議

 在日米軍基地の専用施設の七五%が集中する沖縄は、日本に残された数少ない自然の宝庫でもある。今、この自然が新基地建設によっていっそう破壊されようとしている。
 軍事力を背景に世界支配を維持・強化しようとするアメリカ政府の要求に応じ、日本政府は、一九九六年普天間基地を返還する交換条件として、最新鋭の海兵隊基地建設を約束し、翌九七年名護市辺野古沖に海上基地を建設する計画を発表した。これに対して、名護市では住民投票が行われ、圧倒的多数の市民が基地建設反対の意思を表明した。それにも関わらず、日米両政府は、沖縄での基地建設を執拗に企み、稲嶺沖縄県知事は住民の声を踏みにじり、九九年一一月普天間基地の代替施設の建設候補地を名護市辺野古沿岸域に決定したと発表し、岸本名護市長も同年一二月受入受諾を表明した。しかし、新たな基地建設は、二一世紀にわたって沖縄の米軍基地を固定化するのみならず、基地機能を一層強化するものであって、基地の縮小撤去を求める沖縄県民の意思に明らかに反するものである。
 沖縄県民は長年にわたり、米軍基地のよって様々な被害を受け続けてきたが、これまでも有害物質や赤土流出などにより、著しい環境破壊が進められてきた。
 とりわけ、名護市辺野古沖の海域は、良好なサンゴの生態系があるだけではなく、海草類からなる広大な藻場が拡がっており、国際保護動物であるジュゴンの餌場となっている。沖縄県も評価ランクTの「自然環境の厳正な保護・保全を図る区域」に指定している、この海域に巨大な海上基地が建設されると、サンゴや藻場が死滅し、日本にはこの海域にしか生息していないと思われるジュゴンの絶滅を招くことが危惧される。
 また、海上基地が建設されれば、燃料油や有害化学物質の流出事故が起こる可能性が十分に考えられる。一旦このような事故によって海洋汚染が発生すると、その影響は広く沖縄本島北部東海岸一帯に及ぶおそれが大きい。ウミガメの産卵場や世界の北限地として極めて貴重な存在であるマングローブ林が深刻な影響を受けることになる。
新基地建設による被害は、海だけではなく陸に生きる生物にも及ぶことが懸念される。新基地に離着陸する軍用機が行うであろう低空飛行訓練による騒音等は、特別天然記念物に指定されているノグチゲラを始めとするヤンバル(沖縄本島北部地域)に生息する貴重な生物の生態系に重大な影響を与えることになる。
 ところが、政府は本年七月に予定されている沖縄サミットを契機に、一挙に新基地建設を具体化しようとしている。
一度失われた自然は、二度と元には戻せない。私たちは、名護市辺野古に生きる人々の生活環境はもとより、世界的にも貴重な沖縄の自然環境を破壊する海上基地建設に断固として反対することをここに決議する。

二〇〇〇年五月二二日
自由法曹団二〇〇〇年研究討論集会