<<目次へ 【決 議】自由法曹団
一 神奈川県警の腐敗・犯罪行為の発覚に続き、新潟県の女性監禁事件や埼玉県の桶川事件での警察の腐敗・刑事捜査の対応の不適切等全国各地で警察の問題点が噴出し、多くの国民が、市民の生命・身体の安全を守るべき警察に対して大きな不安と不信を抱くに至っている。そして、警察を管理すべき国家公安委員会の無責任きわまりない対応にも国民の怒りが集中している。犯罪の検挙率も著しく低下し、国民の身体安全を守るために、警察や公安委員会の民主化・抜本的改革が求められている。
警察や公安委員会の改革について、各政党の改革案が出され、また、警察刷新会議においても、警察の改革の論議が行われている。一方現在国会に提出されている警察法改正案は警察官の非違行為について、単に報告や指示を求めるというものであり、警察の不祥事・犯罪行為の発生を防止しうるものではない。
二 警察の腐敗・犯罪行為の原因の一つには警察の極端な秘密主義がある。警察の予算、組織、教育、人事等警察の実態が国民に一切明らかにされていない。こうした実態が警察の腐敗・不正を増長させる温床となっている。警察改革にとって情報公開は必要不可欠である。そこで、情報公開の実施機関に都道府県公安委員会と各警察本部(東京都は警視庁)を加え、個別事件の捜査情報を除いて、警察や公安委員会の人事、組織、予算等全ての情報を公開の対象とすべきである。
三 警察の組織、人事、予算は極端な警備公安警察偏重になっており、これが刑事警察の弱体化を招いている。また、警備公安警察は国民を敵視し、ふんだんに公費を使い、神奈川県警による緒方宅電話盗聴事件に見られるように、違法な活動を職務としていると言わざるを得ない。この警備公安警察の偏重が警察の秘密主義の背景にある。国会でも裁判所でも「立ち入り」を拒絶する「聖域」を作り出しているのである。このような国民敵視の警備公安警察は廃止すべきである。
四 本来警察を「管理」すべき公安委員会は全くといっていいほど機能していない。警察法五条は、国家公安委員会の任務と権限について定め、警察庁を管理することとされているが、実際には、実務を処理する事務局もなく執務する部屋もなければ机さえもないという状態で、警察庁を「管理」できる体制はなく、逆に警察庁に「管理」されているというのが実態となっている。都道府県公安委員会も同様である。
公安委員会制度を前提とするのであれば、抜本的な改革が必要である。委員の選任方法の民主化、独立した事務局体制の確立、権限の拡大と明確化などが必要である。
五 今回の神奈川県警、新潟県警の事件などを通じて、警察の監察官制度が自浄作用として全く機能しないことが明らかになった。警察内部の監察・調査では自浄作用が機能しないのであるし、しかも、監察官の警察官の階級が監査を受ける側の県警本部長よりも下にあり、警察のように上下関係が厳格な組織では監察がはじめから困難なことは当然である。こうした実情からすれば外部からの監察、市民や弁護士など適切な人選による外部監査が不可欠である。
六 警察の抜本的改革のためには、ほかにもキャリア優先の人事の見直し、警察官の人権意識の向上、労働基本権の付与の検討など検討すべき事項も多いが、小手先の改革ではなく、警察の構造的問題点を直視した改革が絶対に必要である。外部監査の導入、情報の公開、国民敵視の警備公安警察の廃止を中心として警察組織の民主化・抜本的改革が早急に実現されるべきである。
そして、国民の安全の観点から是非とも刑事警察の充実、検挙率の向上が実現される必要があり、こうした警察の民主化、抜本的改革を通じて警察の再生が図られるべきである。
自由法曹団も、広範な国民のなかに警察の腐敗、犯罪行為の問題を広め、不当な圧力、妨害に屈することなく真の警察改革のために奮闘するものである。
右決議する。
二〇〇〇年五月二二日
自由法曹団二〇〇〇年研究討論集会