<<目次へ 【決 議】自由法曹団
与党三党は、一〇月三日に、参議院の拘束名簿式比例代表制を「非拘束名簿式」に改悪し、議員定数を一〇減らす法案を国会に提出した。参議院では、議長が選挙制度特別委員会の野党委員を一方的に指名して特別委員会の開会を強行し、野党の欠席のまま、実質審議四日間で、特別委員会で法案を強行可決した。与党三党は、問答無用で参議院本会議において法案を可決させ、衆議院に送付し、その成立を狙っている。
与党三党は「非拘束名簿式」比例代表制と称して、候補者個人に投票したものをその投票のすべてを候補者所属政党の得票とみなし、政党得票にもとづき議席配分する制度を導入しようとしている。これでは、有権者が候補者個人を当選させたいと思って投票した一票が、実は自分の支持しない政党の議席を増やすということになりかねない。そもそも名簿式比例代表制は、各政党にその得票率に応じて議席を配分することによって民意を反映させようとする選挙制度である。候補者個人に投票したものを政党の得票に読みかえる与党三党の法案は、民意の反映を大きくゆがめ、名簿式比例代表制の制度趣旨を没却させるものである。
憲法の民主主義的二院制における参議院の役割は、衆議院の代表機能を補完し民意を国会に反映させることであり、両議院が審議を繰り返すことにより政策上の争点を国民に示し政策についての国民の世論を吸収し、審議に民意の動向を強く反映させることにある。
ところが、現在、参議院で起こっている事態は、憲法の期待する参議院の役割に反するものである。
参議院では、「参議院選挙制度改革に関する協議会」を設置し、今年二月まで九回にわたって検討を重ね、全会派で「当面は現行の拘束名簿式比例代表制を維持することを前提として議論をすすめる」と合意した。ところが、今年六月の総選挙で比例区の得票率が二〇%台にまで低落した自民党は、全会派の合意に反して個人の人気で票を獲得できる「非拘束名簿式」を導入することを主張しはじめた。これは、来年の参議院選挙で実力以上の得票増をねらう党利党略である。このような党利党略の法案の成立を許すならば、「良識の府」としての参議院の自殺行為となる。
今求められているのは、一票の価値にほぼ五倍という大きな格差が生じている選挙区の格差是正である。私たちは法律家として、与党三党が議会制民主主義をふみにじる暴挙を繰り返していることに抗議し、民意をゆがめ名簿式比例代表制の趣旨を没却させる「非拘束名簿式」の導入に強く反対するものである。
二〇〇〇年一〇月二三日
自由法曹団二〇〇〇年富山総会