<<目次へ 【決 議】自由法曹団


ハンセン病問題の早期全面解決を求める決議

 去る5月11日、熊本地方裁判所はハンセン病元患者ら127名が国を被告として訴えていた「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟において、厚生労働省のみならず国会議員の責任をも断罪した原告側全面勝訴の判決を言い渡した。

 この判決は、@「患者の隔離は、患者に対し、重大な人権の制限を強いるものであるから、少なくとも、ハンセン病予防という公衆衛生上の見地からの必要性を認め得る限度許される」とした上で、「遅くとも昭和35年以降においてはすべての入所者及びハンセン病患者について、隔離の必要性が失われた」のであるから、「厚生省としては、同年の時点において、隔離政策の抜本的な変換をする必要があったが、新法廃止まで、これを怠った」として、厚生大臣の責任を認定し、さらに、A「新法の隔離規定は遅くとも昭和35年には、その合理性を支える根拠を全く欠く状況に至っており、その違憲性が明白となっていた」として、「遅くとも昭和40年以降に新法の隔離規定を改廃をしなかった国会議員の立法上の不作為につき、国家賠償法上の違法性及び過失」があると認定している。

 この判決は、国が90年もの長きに渡り行って来たハンセン病元患者に対する深刻な人権侵害の責任を正面から認めたものであり、高く評価されるべきものである。

 しかしながら、今なおハンセン病元患者らの人間としての尊厳は奪われたままであり、全国13の療養所には4400名もの元患者が故郷に帰ることも出来ずに暮らしている。また、退所している元患者も医療や生活の保障もなく、今なおいわれなき差別偏見を恐れながらの厳しい生活を余儀なくされている。

 さらに、元患者らの平均年齢は74歳を超え、「真の権利救済」のためにはその人権回復が一刻の猶予も許されない緊急のものとなっている。

 このような状況の中、国が控訴をすることは、新たな権利侵害を招く犯罪的行為にさえなりかねない。解決の引き延ばしは許されない。

 われわれは、国がこの判決を厳しく受け止め、控訴をすることなく、元患者らに対し真摯な謝罪をなし、その尊厳回復と社会における生活を営むための保障の措置をとることを強く要望するものである。

 上記 決議する。

2001年5月21日
自由法曹団2001年研究討論集会