<<目次へ 【決 議】自由法曹団
2000年4月にバス事業の分社化リストラ計画を発表した京王電鉄株式会社(以下「京王電鉄」という)は、本年8月に、計画を強行しようとしている。その内容は、@バス事業部の社員は全員自ら選択して、100%子会社の京王電鉄バス株式会社(以下「電鉄バス」という)に転籍するかまたは出向する。Aこれにより、バス部門労働者の労働条件は、現在の賃金より年収にして約150万円から200万円切り下げられ、退職金もなく、諸手当もおおむね廃止、休日等は法定の最低基準に引き下げる、といったものである。
京王電鉄は、上記計画実施の地ならしとして、本年1月から、京王電鉄におけるバス部門労働者の労働条件を電鉄バスと同様とする就業規則の不利益変更を一方的に実施した。
しかし、京王電鉄は、平成11年度に59億円もの純利益をあげ、その後も利益計上記録を毎年更新している黒字優良企業であり、リストラの必要性は全くない。
京王電鉄が分社化の口実としているバス部門の赤字は、グループ内子会社(京王バス株式会社)への路線移管や子会社を支援する分担金により作られたもので、バス部門本来の赤字ではない。規制緩和による過当競争との理由も、抽象的で現実的なものではない。結局、京王電鉄の狙いは、労働者の生活を犠牲にして利益追求をはかること以外の何ものでもない。このようなことが許されるならば、グループ内に赤字部門を意図的に作り、競争による生き残りの不安をあおって、分社化リストラを強行するという手法がまかり通ることになる。
この計画を容認しない京王電鉄の労働者たちは、建交労京王新労働組合を結成して京王電鉄と団体交渉を重ねてきた。ところが、京王電鉄は不誠実な応対に終始するばかりか、新労組の組合員にのみ臨時給与を支払わなかったり増務(残業)をさせないなどの不当労働行為を繰り返しながら、前述のとおり就業規則の不利益変更によって、京王電鉄における労働条件の引き下げまで強行した。
上記の不当労働行為と、黒字優良企業の賃下げという「法的に受忍させることもやむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容」(みちのく銀行事件・最高裁平成12年9月7日判決)でないことが明らかな就業規則の不利益変更が、違法であることは明白である。
自由法曹団は、利益追求を至上とし、労働者の生活を破壊することをいとわぬ京王電鉄の分社化リストラ計画に反対するとともに、京王電鉄が京王新労組に対して行っている不当労働行為や就業規則の不利益変更といった違法行為をただちに停止し、正常な労資関係を形成することを求めるものである。
上記 決議する。
2002年5月27日
自由法曹団2002年研究討論集会