<<目次へ 【決 議】自由法曹団
1、昨年12月1日、司法制度改革推進本部が発足し、各検討会が今後の立法化に向け検討を重ねている。その中で本年3月19日、司法制度改革推進計画が閣議決定された。
推進本部の動きを見ると
@推進本部事務局体制と検討委員の人選で官僚主導が顕著であること
A国会の付帯決議に反し情報公開も不徹底なところが少なくなく、顕名により議事を公開している検討会は半分にすぎないこと
B各検討会の「主な検討事項」を見ると、事務局が検討事項について、裁判所、検察庁等の人的体制の充実強化や裁判官制度改革などにつき「必要な場合の所要の措置」あるいは「検討」課題と低い位置づけしかせず、法案化すべきと自ら考える裁判の迅速化などは優先的に検討させようとしたり、更には人質司法の改善や取調べ過程の可視化などは検討会の検討事項からはずして、省庁に「丸投げ」している項目すらあること
など大きな問題点がある。更に消費者、公害環境、市民運動や労働などの各団体から強い批判があるにもかかわらず、弁護士報酬敗訴者負担制度を導入する動きが執拗に続けられている。
2、自由法曹団は、推進本部に対し必要な申し入れを行い、同時に具体的な制度設計の検討を重ねてきた。そして、国民のための司法を実現するには少なくとも次の各点が実行されなければならないことを確認する。
@事務局が、検討事項を序列化したり、法案化への優劣をつけたり、更には検討事項からはずして省庁に「丸投げ」することをやめるとともに、すべての検討会において発言者を明示した議事録公開を行い、また司法制度改革審議会の最終意見書の枠組みにとらわれずに検討を進めること
A裁判官、検察官や関係職員を大幅に増員し、また司法予算を大きく拡大すること
Bたとえば人質司法と言われる現在の刑事司法を抜本的に改革するとともに、陪審制実現への第一歩として真に国民の参加といえる裁判員制度を導入すること
C現行の労働裁判において労働委員会命令の相次ぐ不当な取消し判決を改めるなど権利救済に実効性のある改善を進めるとともに、簡易労働訴訟、労働参審制を導入し、また労働委員会の救済命令の司法審査につき実質的証拠法則の採用や五審制を改めるなど抜本的な改善を図ること
D政府や最高裁判所による裁判官や裁判の統制を直ちにやめ、裁判官の任命にあたって各高等裁判所ごとに国民の意思が反映する指名諮問機関を置き、また裁判官の人事評価につき透明化・客観性を確保するなどして裁判官の職権の独立性を図ること
E裁判から国民を締め出す弁護士報酬の敗訴者負担制度を絶対に導入しないこと
F国民の訴訟提起を抑制する「入り口要件」に関する行政事件訴訟法の改正をはじめ、誰もが身近で利用しやすい裁判制度に改善すること
G権力をおそれることなく国民の権利を擁護するための弁護士自治を守ること
H推進本部は広く国民の声に真摯に耳を傾けて制度設計を図るとともに、司法は国民のためのものでありそのための改革であるという立場に立つこと
私たちはここに、国民のための司法を実現するため全力をあげて奮闘する決意を表明するとともに、広範な国民的運動を多くの人々とともに各地で巻き起こすことを重ねて呼びかけるものである。
上記、決議する。
2002年5月27日
自由法曹団2002年研究討論集会