<<目次へ 【決 議】自由法曹団


アメリカのイラク武力攻撃および
日本政府のこれに対する支援、加担に断固反対する決議


 米国ブッシュ政権は、テロ支援や大量破壊兵器保有を口実に対イラク「先制攻撃」の準備を進めている。ブッシュ大統領は、国連総会において、「安保理決議は履行され、平和と安全保障のための公正な要求が満たされなければならない。さもなければ、行動は不可避であり、正統性を失った政権は権力を失う。」と演説した。国防総省の「国防報告」やホワイトハウスの「国家安全保障戦略」では、「米国防衛のためときには先制攻撃が必要」「あらゆる手段を行使する」として、核兵器による先制攻撃も構想されている。これらをうけて、米議会は、イラクに対する軍事力行使権限をブッシュ大統領に与える決議を可決した。
 ブッシュ政権の先制攻撃戦略は、米国が圧倒的な軍事力をもって世界を制圧する国際秩序を形成するために、米国に対抗するような軍事大国の台頭や軍事力の保持を許さないことを目的としている。そのためには「核兵器」の先制使用さえあり得るとする人類史上極めて危険な戦略である。

 しかし、これまでイラクと9・11テロを結びつける証拠やイラクが核兵器を保有している証拠はなんら示されていないし、ひとたび、米国がイラク攻撃を敢行すれば、罪のないおびただしい数の人命が犠牲になることは必至であり、さらにその戦争が中東地域はもとより全世界にはかりしれない被害をもたらすことになる。
 国連憲章は、第2条4項で加盟国の武力行使を原則として禁止し、第33条で加盟国に紛争の平和的解決を義務づけている。例外的に許容する武力行使は、自衛権行使(51条)と安全保障理事会の決定による軍事的措置(42条)の場合に限られている。米国政府は「先制攻撃」を米国防衛のためと説明しているけれども、それが自衛権の行使とは無縁のもので、他国の国家主権をも無視する果てしない暴力の連鎖をもたらすことは明らかである。

 イラク攻撃については、米国の同盟国であるドイツ、フランスなど欧州諸国からも強い批判の声があがっている。アジア、アフリカ諸国、イラク周辺の各国も反対している。そして、イラク自身も国連の査察を無条件で受け入れる態度を表明し、国連は査察の準備を進めている。米国のイラク攻撃を阻止し、国連憲章にもとづく戦争のない平和な世界を作り上げていくことは全世界の諸国民に共通な願いである。
 ところが、日本政府は、米国のイラク攻撃に反対しないどころか、現在インド洋、ペルシャ湾方面においてアフガニスタンへの軍事攻撃に加担している自衛隊を、イラク攻撃にもなし崩し的に参加させようとしている。政府は、米国のイラク攻撃を視野にいれて、新たなテロ対策特措法の検討にも入っているという。
 このような日本政府の対応が、国際紛争解決の手段として一切の戦争を放棄した日本国憲法(前文、9条)に反することはいうまでもない。日本国憲法は、政府に対し、国際紛争の平和的解決に力を尽くすことを要求しているものであって、他国の武力攻撃に手を貸すことは到底認められない。いま、日本政府に求められていることは、平和を求める世界の諸国民と共同して、米国のイラク攻撃に反対しこれを阻止することである。

 自由法曹団は、米国のイラクに対する武力攻撃、及びこれに対する日本政府の支援・加担に断固反対し、米国のイラク武力攻撃を阻止するため、平和を求める全世界の人々と力を合わせて全力をあげてたたかう。

 上記決議する。

2002年10月28日
自由法曹団2002年総会