<<目次へ 【決 議】自由法曹団
司法制度改革は立法準備過程である第2段階に入っている。
自由法曹団は、かねてから司法改革の課題を、財界、政府、自民党が主に「規制緩和の最後の要」として構築しようとする司法改革と、国民のための国民の手による司法改革を目指す「二つの流れ」の“せめぎ合い”ととらえ、後者を強め、21世紀にふさわしい司法改革を実現するために全力をあげてきた。こうした立場に立って、団は司法制度改革審議会最終意見につき、私たちは@これを定着、前進させる促進課題、A改悪提言を阻止する反対運動課題、Bあいまいな内容、手付かずの内容を改善・改革させていく空白課題を明らかにして運動を進めていくことを確認した。
しかしこの間の司法制度改革推進本部・検討会等は、裁判官制度改革において最高裁判所による官僚統制を改善しようとする動きや労働検討会において労働裁判の実態調査を重視する動きなど国民の要求を反映させようとする経過が見られるものの、官僚主導の偏った事務局・検討委員構成、新仲裁制度を労働契約・消費者契約等の社会的経済的対等性が認められない国内取引まで適用しようとする「中間とりまとめ」、弁護士報酬敗訴者負担制度を導入しようとする執拗な動き、身体拘束の是正や取調過程の可視化という課題の捜査関係機関への「丸投げ」、裁判官制度改革骨抜きの危険等に見られるとおり、むしろ「逆流」を強めている。
新仲裁法制を社会的経済的対等性が認められない国内取引まで適用することや敗訴者負担制度の導入などは「国民の裁判を受ける権利」を後退させろものであって、断じて認めることはできない。
裁判員制度・刑事の分野では、身体拘束の是正や取調過程の可視化など「人質司法」を抜本的に改善することこそ不可欠であり、これとともに、裁判員制度における裁判員の人数比は、裁判官1名に対し9倍程度の比率とされなければならない。
労働裁判においては、労働者側の選択制による参審制を実現するとともに簡易迅速な固有手続きを導入し、また労働委員会命令の実効性を確保するため、実質的証拠法則を採用したうえ何としても「五審制」を改めなければならない。
他方裁判官制度の改革も急務であり、司法制度改革審議会の最終意見からさえ後退を図る最高裁判所の動きは警戒されなければならず、人事・人事評価制度及び裁判官指名過程に関与する諮問機関等の在り方等については、最高裁判所による統制を排除して裁判官の独立を確立するとともに国民の意思を反映する具体的制度を作り上げることが必要である。
そしてこれらの司法民主化の前提として、裁判官及び裁判所職員等が大幅に増員され、また司法予算が飛躍的に増額されなければならず、これらを欠いては司法民主化は画餅に終わりかねない。
この間「逆流」に抗して、国民のための国民による司法民主化を求める運動は、様々な形態をもって各地で取り組まれており、これらは政府、財界、自民党の当初予測を越えたものとなりつつある。今や実践的課題は、前記視点に立って、国民の切実な要求である司法民主化を掲げて共同の運動への取り組みを一層強化していくことにある。
私たちは国民のための司法実現のため、引き続き各界・各層の人々とともに広範な国民的運動を各地で更に強めていくとともに、法科大学院における法曹養成事業、弁護士任官、弁護士過疎対策、そして真に国民に依拠しての弁護士自治の強化等を主体的に推進していくものである。
2002年10月28日
自由法曹団2002年総会