<<目次へ 【決 議】自由法曹団


弁護士報酬の敗訴者負担に反対する決議


 現在、司法制度改革推進本部司法アクセス検討会にて、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入をめぐる検討が行われている。同推進本部では、本年夏までに検討結果を取りまとめる予定とされている。
 弁護士報酬の敗訴者負担制度(両面的敗訴者負担制度)は、質的に訴訟抑制の機能を持つものであり、市民の裁判所へのアクセスを妨げるものである。もとより司法制度改革は、「国民がより利用しやすい司法制度の実現」(司法制度改革審議会意見書)を目的として進められてきた。弁護士報酬の敗訴者負担制度は、この司法制度改革の目的に反するものであり、断じて導入されるべきではない。
 検討会の議論の中では、公平の観点から敗訴者負担制度を導入すべきという意見がある。しかし、公平の観点から司法アクセスを犠牲にすべきではない。我が国においては司法アクセスの拡充が何よりも優先されるべき政策目標であり、それが司法制度改革審議会意見書の立場でもある。さらに、敗訴者負担制度の負担は経済的強者よりも経済的弱者に重くのしかかり、本来裁判による救済を必要としている社会的弱者からますます裁判所を遠ざけてしまうことにつながる。その導入は実質的公平に反するものであり、「公平論」はその前提において間違っているというべきである。
 また、敗訴者に負担させる金額が低額であれば、司法アクセスの障害とならないという意見もある。しかし、負担額が低額であっても、その導入が訴訟抑制目的にあることにかわりはない。所得格差がますます拡大している現在の社会構造のもとで、負担の程度は所得階層によって格段の差が出る。一定の負担を敗訴者にさせる以上、司法アクセスの抑制要因となること、特にその抑制効果は低所得者層により大きいことは明らかである。
 上記のような実情及び国民的意識を調査するために、司法アクセス検討会は、裁判を利用している関係者から広くヒアリングを行うべきである。
 規制緩和により行政の役割が縮小されていくなかで、経済が停滞し不況が長引いている。公的な機関の関与により解決を求められる紛争は増大しており、裁判所が果たすべき役割はますます重要となってきている。ここにおいて、市民の裁判所へのアクセスを拡充することは、司法制度改革において決定的に重要である。弁護士報酬の敗訴者負担制度(両面的負担制度)は、司法アクセスを阻害するものとして、決してその導入が許されてはならない。

2003年5月26日
自由法曹団常任幹事会