<<目次へ 【決 議】自由法曹団


衆議院採決強行に抗議し、有事三法案の廃案を求める決議


 5月15日、衆議院は、有事法制関連三法案(武力攻撃事態法案、自衛隊法「改正」案、安全保障会議設置法「改正」案)の採決を強行した。採決の道を開いたのが、5月13日の与党三党と民主党の「修正合意」であることは言うまでもない。「修正合意」は、民主党自らが問題にしていた「周辺事態との区別」や「米軍の武力行使との関係」などの本質にまったく触れない「微修正」にすぎず、「修正案」をめぐる審議もまともに行われていない。自由法曹団は、「密室談合」によって採決強行に及んだ与党三党と民主党・自由党に強く抗議する。
 有事法制はアメリカの侵略戦争に加担するとともに自らも参戦していくための戦争法制であり、準備が進んでいる「国民保護法制」とは自治体や住民を組み込んで侵略戦争の「巨大な後方」を形成するためのものである。自由法曹団が繰り返し指摘してきたこの本質は、アメリカ「国家安全保障戦略」(ブッシュ・ドクトリン)と違法・非道なイラク先制攻撃戦争が事実をもって証明した。ブッシュ・ドクトリンでは、「アメリカの正義」を脅かす「テロリストや同調者」「専制君主」に対する先制攻撃が宣言され、「共通の利益、共通の価値観」に立つ日本の「兵站支援」が要求された。このブッシュ・ドクトリンの発動が国際法を踏みにじったイラク侵略戦争であり、さらなる「兵站支援」に応えるものが有事法制にほかならない。
 「イラク占領」が続く一方で、朝鮮半島での軍事緊張が高まっている。アメリカが北朝鮮への戦争に踏み切ったとき、日本は国土・国民をあげて米軍の兵站基地になるとともに、自衛隊は米軍の後方支援にあたることになる。その「支援艦隊」への「武力攻撃の切迫・予測」が発生したら、「武力攻撃事態」あるいは「予測事態」が宣言されて日本が戦争に突入していくというのが有事法制発動のシナリオである。これは、北東アジアの平和を根底から破壊する事態であり、再び日本がアジアの民衆に銃を向ける道である。
 世界の国々と民衆はイラクへの戦争を認めはしなかった。唯一の超大国の強大な軍事力がいかに猛威を振るおうとも、世界に背を向け国際法を蹂躙した戦争の違法と責任が変わるものではない。世界の大道は非戦・平和の道にある。三法案提出から1年余、各方面・各地域からまき起こった有事法制反対・非戦の声は、2つの国会で衆議院通過を許さず、「密室談合」によってしか採決を強行できないところまで追いつめた。平和憲法を持つこの国の人々の願いもまた非戦・平和にある。
 世界とこの国の趨勢に逆行し、北東アジアの平和を脅かす有事法制関連三法案を、参議院は断固として拒否しなければならない。自由法曹団と1,600名の団員弁護士は、三法案廃案のために全力を尽くすとともに、世界と日本の人々とともに非戦・平和の世界を築きあげるために奮闘する決意を表明する。
 上記決議する。

2003年5月26日
自由法曹団2003年研究討論集会